西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

漁師

2010-04-05 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
40ー「漁師」(1832・天保3年・市村座)


”~づくし”の好きなご先祖さまは、こんなものまでづくしてみせる。
”黒いものづくし”。

『お前は沖の鯨どの
 潮風に揉まれて お色が真っ黒だ
 まだも黒いを言おうなら
 夜明けの烏に三番叟
 忍びに 助六 定九郎
 極上上の評判記
 鰯の目の玉 角大師
 碁石のつれ合い 旅うなぎ
 壷屋の煮豆が黒いとて
 こちゃ食べやせぬ 食べやせぬ』

●黒いものはなーんだ。
 沖の鯨に、烏、三番叟の面、忍者に助六の衣装、忠臣蔵五段目の定九郎の黒紋付、
 評判記の極上上は、墨の文字がでかくて真っ黒だ。
 節分に、鰯の目玉に柊の葉っを差したものを門口に吊るすのは、なーぜだ。
 魔除けの護符、黒鬼の角大師(つのだいし)と同じ効果があるからさ。
 黒碁石の連れ合いは、やっぱり黒。田舎のうなぎはやたらと黒い。
 壷屋の煮豆は真っ黒だが、わしゃ食べぬ。

三番叟は、式三番といって、翁・千歳・三番叟の順に舞われる、儀式の舞をいう。
狂言方が演じ、黒色尉という黒い面をつけている。
それと、三番叟は”烏飛び”という、烏のような横飛びをするのが特徴なので、烏が掛詞となっている。
助六は言わずと知れた、黒の小袖に、塗り鼻緒の江戸の男伊達。
 
定九郎は、忠臣蔵の五段目で、勘平の拳銃に当たって死ぬだけの端役。
中村仲蔵はこの場に工夫を凝らし、山賊姿の定九郎を、黒紋付に尻っぱしりという、
零落した武士のイメージに変えたところ、大当たりで、極上上の評判記に載った。
これは太い筆で書かれていているので、真っ黒に見える。

鰯に柊の葉を差した、おまじないの縁起物は門口に吊るされて、魔除けとされた。
角大師は角のある、やせ細った真っ黒な鬼のような姿をしたモノが摺られた護符。

旅うなぎは、江戸まえにの反対で、地方から下ったうなぎのこと。
ごわごわと黒いのが当たり前で、壷屋の煮豆の黒いのも当たり前。

 〓 〓 〓


tea breaku・ 海中百景
photo by 和尚

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 喜撰 | トップ | 花の友 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji」カテゴリの最新記事