西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

楠公

2010-05-05 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
69-「楠公」その2


正行を帰した正成は湊川の決戦に挑む。

『去る程に 淡路の瀬戸や鳴門の沖
 霞の晴れ間を見渡せば 数万の兵船漕ぎ連ね
 帆影に見ゆる山もなし
 陸は播磨路 須磨の浦 鵯越の方よりも
 二つ引両 四つ目結い 輪違の旗翩翻と
 磯山風に吹き靡かし 雲霞の如く寄せ掛けたる
 敵を前に正成は 湊川にぞ陣を取る』

● さて、朝霞が晴れ、淡路海峡や鳴門の沖を見渡せば
数万の兵船が沖に連なり、その帆影でまわりの物は何も見えぬ。
陸は播磨路、須磨の浦、鵯越の方からも
二つ引両・四つ目結い・輪違の紋を染め抜いた旗を風に吹き靡かした敵軍が、
まるで雲、霞の如く攻めて来る。
敵を前に正成は、湊川西岸に陣を取る。


尊氏軍は総勢5万、義貞・正成軍はその半分といわれている。
そのうち正成軍は一族郎党、たった7百程なのだから結果は見えている。
しかも義貞軍は体制立て直しとて、早々に敗走してしまったのだから、
何をかいわんやだ。


『正成兄弟物ともせず
 あるいは引っ組み あるいは蹴散らし
 一歩も引かず戦いしは 実に忠臣の鑑とぞ
 美名を末世に残しけり』

もはやこれまでと覚悟をきめた正成.正季兄弟は刺し違えて果てた。
勝敗の有利な方への寝返りや、引き抜きが日常茶飯事の時代に、
ここまでの忠臣はめったにあるものではない。
だから美名が末世に残ったのだが…

 〓 〓 〓

tea breaku・海中百景
photo by 和尚
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