ノアの小窓から

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戦場のピアニスト

2020年06月09日 | 歴史
2014年10月11日 の記事より


 いつもなら眠りに落ちている時間に、深夜映画を観てしまった。

     「戦場のピアニスト」

 2002年劇場公開された頃に観ています。
 題材もストーリーも、とても重苦しい戦争映画なのに、
 心の奥に、どこかリリックな影を刻印するような感動があった。
 と、記憶しているのだけれど、細かな筋書きはほとんで忘れていた。

 第二次世界大戦で、ヨーロッパ戦線ということになれば
 まず、ナチスの偏執狂的な悪を外すことはできないでしょう。とりわけ、
 ユダヤ人撲滅作戦としか言いようがないユダヤ人に対する迫害は、
 目をおおうばかりのものだったのです。そして、
 この映画も、ピアニストであって、社会的には非力と見えるような
 一人のユダヤ人青年が、ナチスのユダヤ人狩り、ゲットー、ガス室へと続く果てのない弾圧の中で、かろうじて逃れ、隠れ、生きる話です。

              ◎  ◎  ◎


 これは、実在したユダヤ系ポーランド人・ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの体験記を脚色して、映画化したものだそうです。
 といっても、ピアニストとしての活動はほとんど出てきません。
 逃げ回る彼が夜、まどろむとき、手の指がピアノのキーをたたくかのように、動くだけです。

 空襲で破壊された廃墟で隠れ住む彼も、最後には、ナチの将校に見つかり、あわや・・・という瀬戸際で、
 ピアニストであったために窮地を逃れるのです。

 彼を見つけたナチの将校は、彼がピアニストであるかどうか
 確かめるために、廃墟にあったピアノを弾かせるのです。

 その素晴らしい演奏に、将校はくぎ付けになり、彼を生かし、食糧まで届けてくれるようになるのです

            ◎  ◎  ◎

 身分証明書(アイデンティフィケイション)という言葉が何度か出てきます。

 もとより、逃亡中のシュピルマンに、そのような証明書はありません。
 けれども、ピアノを弾くことで彼は自分のアイデンティティを証ししたのです。
 これは、身分証明というものが何であるかを、言い表していると思いました。

 私たちは、身分証明書――政府や会社やどこかの権威ある団体が
 客観的に自分の存在を保障してくれるものを渇望するのですが、
 権威のあるだれかが発行する「紙切れ」ではない自分。
 自分は、「これだ」と言えるものなど、私にはあるのかしらと考えさせられる
 クライマックスでありました。


 それにしても、旧約聖書の記録の中で(旧約聖書・列王記。歴代誌)、
 すでに、捕囚として民族離散の憂き目にあい、
 その後、ペルシャ、ギリシア、ローマなど、大国の植民地でありながらも
 なんとか、ユダヤを国家として存続させていたユダヤ人。

 紀元七四年のユダヤ戦争で、ローマ帝国に完全に敗北し、エルサレム神殿も破壊され、以降、
 第二次大戦終了後の現イスラエル共和国の成立まで、国家がなかった国民なのです。

 国(領土と政府)を失い、国民が散り散りになって一九〇〇年間もアイデンティティを保つとは、本当にすごいとしか言いようがありません。



       


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