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猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

地獄に堕ちて

2022-03-11 22:04:24 | 日記
1986年のフランス映画「地獄に堕ちて」。

20歳の若妻ローラ(ソフィー・マルソー)を連れ、バカンスで夏のハイチ島へ
やってきた40代の作家アラン(クロード・ブラッスール)は、自分に無関心な
妻の態度に焦り立ち始めていた。アランは仕事はスランプ状態でアルコール依
存症でもあったが、妻を愛していた。ローラはそんな夫の気持ちを知りながら
もホテルの若い男と浮気を重ねる。ある蒸し暑い夜、泥酔したアランは、彼の
財布を盗もうとした若者と争い、誤って殺してしまう。ローラは気力のないア
ランに代わり、血の付いた衣類を焼却する。ところがその後アランの元に目撃
者からの脅迫が始まる。

真夏のリゾート地を舞台にしたサスペンス。中年作家のアランと年の離れた妻
ローラは最近うまくいっておらず、夫婦の危機を打開するためハイチのリゾー
トホテルにやって来る。ローラはいつもアランと別行動で、夫のことに関心が
ない。ホテルの客の若い男と誘われるままに遊んでいるが、ローラを愛してい
るアランは何も言えず、飲んだくれている。ある夜バーから帰る途中、アラン
は金を無心してきた男ともみ合いになり、ガラスのビンで男の頭を殴って死な
せてしまう。ホテルの部屋に帰ってきてぐったりしているアランに代わり、ロ
ーラは血の付いた彼の衣類を焼却する。
中年男性が若い女性と結婚するとこんなふうになりがちかもしれない。年を取
った夫のことが退屈なのだろう。話も合わなさそうだ。でも夫も気づいている
のに他の男と平然と浮気するローラの気持ちもよくわからない。やがてアラン
は事件を目撃したという男とその恋人から脅迫を受けるようになる。アランは
言ってみれば正当防衛だ。しかしこの頃から、アランを助けるためにローラは
躍起になり、彼への愛情を示し始めるから不思議だ。本当はアランを愛してい
るのだろう。
脅迫者カップルは金を要求してくるが、フランスからハイチに来ている彼らに
そんな持ち合わせはない。アランはとうとう警察へ行き、自分が犯人だと言う
が相手にされない。犯人はもう捕まっているというのだ。当然誤認逮捕である。
自首もできなかったアランは困り果て、ローラは必死に金策に走る。中盤から
はアランに対するローラの愛情が全開になる。
映画は全体的にとても暗く、私は割と好きである。リゾートホテルも美しくて
興味を惹かれるし。でも物語は大したことはない。これはもうソフィー・マル
ソーを見る映画。当時20歳かそこらのソフィーはとても美しく、スタイルも
いい。ヌードシーンも多いのでついスタイルに目が行ってしまう。今も美しい
しかつ可愛いしプロポーションも抜群なのだが。アラン役のクロード・ブラッ
スールはソフィーのデビュー作「ラ・ブーム」で父親役をしていた人である。
以前親子役を演じた相手と今度は夫婦役って、俳優の感覚はすごいなと思った。
女性(ソフィー)のヌードは修正なしなのに、男性のヌードは修正が入るんだな
あなどと、どうでもいいことを考えてしまった。ラストも幻みたいで良かった。



ナイル殺人事件

2022-03-07 22:49:41 | 日記
2022年のアメリカ・イギリス合作映画「ナイル殺人事件」を観に行った。

莫大な遺産を相続した富豪の美女リネット・リッジウェイ(ガル・ガドット)は、
親友のジャクリーン(エマ・マッキー)から婚約者サイモン(アーミー・ハマー)
を奪い取っていた。ハネムーンでエジプトへ向かうリネットとサイモンだった
が、彼らを待っていたのは嫉妬と怒りに燃えるジャクリーンだった。ジャクリ
ーンは彼らの行く先々につきまとってくる。私立探偵のエルキュール・ポアロ
(ケネス・ブラナー)はリネットから相談を受けるものの、「まだ何も事件は起
こっていない」と彼女をなだめるしかなかった。ところがある夜、リネットが
客室で射殺されているのが発見される。しかしジャクリーンには完璧なアリバ
イがあった。そして客船には、リネットを殺害する動機を持った者が何人も乗
船していた。

2017年の「オリエント急行殺人事件」に続いて、ケネス・ブラナーが監督・
主演を務めたアガサ・クリスティ原作小説の映画化。この映画は2020年に公
開予定だったらしいが、コロナ禍などの事情により延期になってしまったらし
い。そういえば前作から間が空いているなと思った。ナイル川を行く豪華客船
で殺人事件が起きる。ハネムーン中の富豪の妻が殺されたのだが、彼女に1番
恨みを抱いていた女性には確固たるアリバイがあった。アガサ・クリスティお
得意の「密室殺人」「誰もが犯人の可能性」というシチュエーションで、とて
おもしろかった。
まずエジプトのピラミッドやスフィンクスやアブ・シンベル神殿といった名所
の光景の壮大さに目を奪われる。こういう映像美は映画ならでは。豪華客船に
はハネムーン中のリネットとサイモンが乗船しており、皆が彼らを祝福してい
たが、リネットの友人で彼女から婚約者のサイモンを奪われたジャクリーンは
恨みに燃えていた。ジャクリーンは彼らにつきまとい、サイモンは「いい加減
にしてくれ。僕たちの関係は大したものじゃなかっただろう」と詰め寄ってい
た。リネットも私立探偵のエルキュール・ポアロに相談するが、脅迫を受けて
いる訳ではないからどうにもできないと言う。
リネットが殺されて1番怪しいのはジャクリーンなのだが、船には他にもリネ
ットを憎む者や嫉妬する者が多数おり、リネットも生前ポアロに「富豪だと
誰もが信じられなくなる」と言っていた。そして第2、第3の事件が起きてし
まう。ポアロは事件を防げなかったことに心を痛めつつ、推理を巡らせる。今
までテレビドラマや映画でいろんな人がポアロを演じているが、ケネス・ブラ
ナーのポアロは渋くていい。そして人間的で優しいポアロになっている。原作
のポアロはもっと傲慢で自信家でワガママなのだが、これはこれで魅力的だと
思う。
前作の「オリエント急行殺人事件」に比べると謎解きのおもしろさはちょっと
落ちるかもしれないが(犯人の予想がついてしまう)、映像の美しさ、悲劇的で
ドラマチックなラストは良かったと思う。更なる続編も期待したい。




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PITY ある不幸な男

2022-03-03 05:10:39 | 日記
2018年のギリシャ・ポーランド合作映画「PITY ある不幸な男」。

10代の息子と小綺麗な家に住み、礼儀正しく身だしなみも良い弁護士の中年
男性(ヤニス・ドラコプロス)。何不自由ない暮らしを送っているように見える
が、彼の妻は不慮の事故で昏睡状態に陥っている。彼の1日は妻を思ってベッ
ドの隅でむせび泣き、取り乱すことから始まる。彼の境遇を知って、毎朝手作
りのオレンジケーキを差し入れる同じマンションの住人、割引きをするクリー
ニング屋の店主、気持ちに寄り添う秘書など、同情心から親切になる周囲の人
々。この出来事がもたらした悲しみは、いつしか彼の心の支えとなり、次第に
依存していく。ところがある日、妻が奇跡的に目を覚まし、悲しみに暮れる日
々に変化が訪れる。

ちょっと変わったサイコ・サスペンス。裕福な弁護士の男は息子(小学生か中
学生くらい)と暮らしているが、彼の妻は事故で昏睡状態が続いており、医者
からも見放されていた。彼は毎日妻を見舞い、意識のない妻にキスをする。彼
と息子を気の毒に思い、同じマンションの上階の女性はいつも手作りのケーキ
を差し入れる。クリーニング屋の店主は割引きをしてくれる。秘書は「この十
字架を奥様に」と渡してくれた。周囲の人々は一様に「奥さんの容態は?」と
尋ね、男は「望みはあまりない」と答える。皆「きっと良くなるわ」とか「気
をしっかり持って」などと言ってくれる。男はそういった日常にある心地よさ
を感じるようになっていた。そんなある日、妻が奇跡的に回復し、退院してく
る。
奇妙な物語だった。前半の男と息子は本当にかわいそうである。男は家事に手
が回らないため家政婦を雇うことを提案するが、息子は「ママの料理じゃなき
ゃ嫌だ」と言う。妻のことが大好きな飼い犬も元気がない。男が毎朝妻を思っ
て泣いていることも息子は知っていた。この父子は本当にママを愛しているの
だ。やがて妻は回復し、家に戻ってくる。家族が元通りになり、妻の作る料理
を食べる。父子が待ち望んでいた日常だ。息子は全編を通して表情が薄いが、
喜んでいるのだと思う。愛犬も嬉しそうだ。だが男はそんな日々に不満や不安
を抱き、精神のバランスを崩していく。
妻が元気になったので上階の女性はケーキの差し入れをしなくなるのだが、男
は「妻が戻ってからケーキの差し入れがないですね」と声をかけ、女性は気味
悪く感じる。同情からしていたことなので当たり前なのだが。「今焼いている
のなら焼けるまで待ちますよ」とまで言う。そんな催促するようなことを普通
言うだろうか。男はクリーニング屋の店主に妻が戻ってきたことを言わない。
相変わらず「望みは薄い」と言う。息子はピアノを習っており、先生から才能
があると期待される。かわいそうな男だった男は、普通の男になってしまった
のだ。
登場人物の名前が出てこないのに物語が成り立っているのがすごいと思った。
唯一男が友達の名前を呼ぶシーンがあるが、他はなかったと思う。男の異常さ
は次第に増していく。あまりにも異常なので笑えるところもあり、男が自作の
歌を息子に歌って聞かせるシーンなどは怖すぎて笑えるのだ。ブラック・コメ
ディの要素もあるのかなと思ったが、やっぱりコメディではなくてサスペンス
だ。無表情な男の存在感が圧倒的で、とても不気味である。ネットのレビュー
に「この手の映画が好きな人には変態が多い」と書いている人がいて、笑って
しまった。とてもおもしろかった私は変態なのかもしれない。ラストで、海で
死んだかと思われた愛犬が生きていて良かった、と思った。ずっと気になって
いた。


投稿した記事を誤って削除してしまったので、書き直しました。リアクション
をくださった皆様、申し訳ありません



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