猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ただ悪より救いたまえ

2022-01-11 22:00:14 | 日記
2020年の韓国映画「ただ悪より救いたまえ」を観に行った。

凄腕の暗殺者インナム(ファン・ジョンミン)は引退前の最後の仕事として、
日本のヤクザ・コレエダ(豊原功補)を殺害する。コレエダの弟である冷酷
な殺し屋レイ(イ・ジョンジェ)は復讐のためインナムを追い、関わった者
たちを次々と手にかけていく。一方、インナムの元恋人は彼と別れた後に
ひそかに娘を産み、タイで暮らしていたが、娘ユミン(パク・ソイ)が誘拐
され元恋人も殺されてしまう。初めて娘の存在を知ったインナムは、彼女
を救うためタイへ急行。そしてレイもまた、インナムを追ってタイへとや
って来る。2人の戦いは、タイの犯罪組織や警察も巻き込んだ壮大な抗争
へと発展していく。

凄腕の暗殺者と冷酷で狂暴な殺し屋との戦いを、東京、仁川(インチョン)、
バンコクを舞台に描くバイオレンス・サスペンス・アクション。物語は東
京から始まり、暗殺者のインナムが日本のヤクザ・コレエダを殺す。コレ
エダの葬式に弟のレイが白いロングコート姿で訪れるシーンが印象的。レ
イと兄は絶縁状態だったようだが、それでも兄の復讐を誓う。レイは裏社
会の人間からも恐れられる狂暴で残忍なサディストだった。
一方バンコクではインナムの昔の恋人が娘と暮らしており、彼女がインナ
ムの行方を捜しているとインナムは知人から聞くが、「昔の話だ、死んだ
と言ってくれ」と言う。ところが数日後彼女が殺され、遺体の引受人とし
てインナムは韓国へ戻る。更に彼女にインナムとの間にできた9歳の娘ユ
ミンがおり、ユミンは臓器売買の組織に誘拐されたことを知る。インナム
はユミンを助けるためにバンコクへ行き、レイもインナムを追う。
映画は韓国語、タイ語、日本語、英語が飛び交い、ファン・ジョンミンの
日本語も聞ける。外国映画で日本語を聞くと何となく嬉しい。インナムは
仕事の時は冷静沈着で拷問もするが、普段は優しい男だ。子供たちにも優
しい。自分に娘がいたことを初めて知ったインナムは、娘を救おうとバン
コクの街を駆け回る。途中で知り合ったニューハーフの男をガイド兼通訳
として雇い、行動を共にする。ニューハーフの男は自分の命まで危険に晒
されることになりながらも、ユミンのために必死にインナムに同行すると
いうお人好しさである。
アクションシーンがすごい迫力である。ホテルの階段やエレベーターの中
で銃撃戦が始まり、街中では激しいカーチェイスが行われ、見応え充分。
インナムとレイ、2人の殺し屋同士の対決にニューハーフの男とユミンは
巻き込まれていく。ファン・ジョンミンはかっこいいし、レイ役のイ・ジ
ョンジェの極悪非道ぶりもいい。息詰まる対決で画面から目が離せない。
インナムはユミンと一緒に人生をやり直せるのか。それにしてもタイって
かなり治安が悪いのだなあ。臓器売買のために子供を誘拐するなんて。檻
のような所に閉じ込められた子供たちの姿にはゾッとした。韓国のバイオ
レンス・サスペンス映画は本当におもしろい。




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題名のない子守唄

2022-01-07 22:13:44 | 日記
2006年のイタリア映画「題名のない子守唄」。

ウクライナから北イタリアのトリエステにやって来たイレーナ(クセニア・
ラパポルト)は、ある目的のために貴金属商のアダケル夫妻に近づいていく。
彼女はアダケル家の家政婦になることに成功し、家事を完璧にこなす彼女は
夫人に気に入られ、1人娘のテア(クララ・ドッセーナ)からもなつかれるよ
うになる。その裏でイレーナは、隠れて室内を物色するなど不可解な行動を
取り始める。

ジュゼッペ・トルナトーレ監督によるミステリーであり人間ドラマでもある。
とても重たい映画だった。ウクライナからイタリアにやって来たイレーナは、
偶然を装いアダケル家の家政婦になることに成功するが、その固執ぶりがす
ごい。アダケル家の家政婦と親しくなり、彼女を階段から突き落として意識
不明にし、新しい家政婦になる。何が何でもアダケル家に近づこうというそ
の行動力は異常である。前家政婦は廃人のようになり、施設に入れられる。
イレーナはアダケル夫人に信頼され、幼い娘・テアとも仲良くなる。
冒頭で、下着姿で仮面を着けた数人の女性たちが登場し、その中から1人が
選ばれるのだが、何に選ばれたのかはわからない。その女性はイレーナだっ
た。イレーナの昔の出来事がフラッシュバックのように所々に挟まれ、次第
に彼女が何者だったのかがわかってくる。イレーナは人身売買の組織で売春
をさせられていたのだ。それもかなり長い間。そしてイレーナが何故アダケ
ル家に近づいたのかも少しずつわかってくる。それはあまりにも悲しい事情
だった。
アダケル家の娘・テアは防衛本能に障害があり、転ぶ時などにとっさに手が
出ないのでケガをしやすい。幼稚園でも男児たちからいじめられている。そ
ういう障害って本当にあるのだろうか。イレーナはテアを縛って倒し、自分
で起き上がる訓練をさせる。虐待のようにも見える訓練だが、テアは泣きな
がらもイレーナに従うようになる。もちろん訓練のことは両親には言わない
約束をさせている。そして時は経ち、イレーナの前にある男が現れる。
イレーナの昔のことはとてもかわいそうである。けれども彼女が何故そうい
う組織に入っているのか(あるいは売られたのか)わからないし、彼女にも落
ち度がありそうな感じなので、全面的に同情する気にはなれない。SMシー
ンなど物語に必要だったのか、と思う。イレーナの不幸を強調するためなの
だろうが、不快に感じた。イレーナは女性として人間としてとてもみじめで
屈辱的な暮らしをしてきたのだが、本人にもその世界に堕ちていった責任は
あると思う。この映画、評価が高いのだが私はあまり感動できなかった。結
局イレーナのせいでアダケル夫妻は気の毒なことになっているし。ラストシ
ーンで救いがあったのは良かったと思うが、あまり好きになれない映画だっ
た。




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浅草キッド

2022-01-03 22:05:49 | 日記
2021年の日本映画「浅草キッド」。

昭和40年代の浅草。大学を中退し、ストリップ劇場「フランス座」のエレベー
ターボーイをしていたタケシ(柳楽優弥)は、芸人・深見千三郎(大泉洋)のコント
に惚れ込んで弟子入りを志願。ぶっきらぼうだが独自の世界を持つ深見から芸ご
との真髄を叩き込まれていく。歌手を目指す踊り子・千春(門脇麦)や深見の妻・
麻里(鈴木保奈美)に見守られながら成長していくタケシだったが、テレビの普及
と共にフランス座の客足は減り、経営は悪化していく。そんなある日タケシはフ
ランス座の元先輩キヨシ(土屋伸之)に一緒に漫才をやらないかと誘われる。

ビートたけしの自伝を基に劇団ひとりが監督・脚本を手掛けたNetflixオリジナル
映画。たけしの下積み時代から漫才で成功するまでが描かれている。ストリップ
劇場・フランス座でショーの合間にコントをやっている深見千三郎は、多くの人
気芸人を育てながらも自身はテレビにほとんど出演しなかったことから「幻の浅
草芸人」と呼ばれていた(萩本欽一も弟子の1人である)。エレベーターボーイの
タケシは深見のコントに惚れ込んで弟子入りし、コントやタップダンスなどを習
う。
とてもおもしろかった。テレビで人気の芸人の人たちも、下積み時代はあんなに
苦労していたんだなあ、と思う。本当にお笑いが好きじゃないとやれないな。柳
楽優弥と大泉洋のダブル主演だが、この2人の演技がすごい。特に柳楽優弥はビ
ートたけしに顔も体型も全く似ていないので、最初「柳楽くんがたけし役?」と
思ったのだが、たけしの歩き方や特徴ある表情や独特の首の動きなど、完全にコ
ピーしていて、たけしに見えてくるからすごい。圧巻の演技である。柳楽優弥を
たけし役に起用した劇団ひとりの目の付け所も秀逸だと思う。ここまでやれると
思っていたのだろうか。
私はツービートなどの漫才ブームの世代で、「俺たちひょうきん族」などを観て
いたが(若い人は知らないだろうなー)、ツービートの登場は鮮烈だった。それま
での漫才とはまるで違う、「テレビでこんなこと言っちゃっていいの」と思うよ
うな下品で毒舌の漫才だったのだが、とにかく斬新でおもしろかった。あれはビ
ートたけしとビートきよしのキャラクターによるものだったんだろうな、と思う。
彼らの個性だから放送ギリギリのような漫才がウケたのだろう。当時は個性の強
いコンビがテレビ界を席巻していた。
たけしの師匠である深見千三郎は私も顔を知らないのだが、テレビ出演を嫌って
劇場の芸人にこだわった人だったようだ。だから大泉洋の演技が本人に似ている
かどうかはわからないが、その存在感はすごかった。深見は「何だバカ野郎」と
か「この野郎」が口癖で、ついでみたいに語尾に付ける。たけしがよく「バカ野
郎」と言うのは師匠の影響なんだなと思った。そして人気芸人を何人も育てた師
匠なのに、貧しいアパート暮らしをしているのは驚いた。これもテレビを嫌って
劇場に固執したせいなのだろう。深見はフランス座の経営に参画していたが、ツ
ービートの人気ぶりとは対照的に次第に追い込まれていく。
いいシーンがいくつもあった。たけしが深見に「フランス座をやめて漫才をやり
ます」と言うシーンは特に印象的だった。深見に猛反対され、同僚に「世話にな
った師匠にそんな言い方はないだろう」と言われ、それでも深見の元を去ってい
ったたけし。後に成功したたけしが深見に会いに行くシーンもとてもいい。ビー
トきよし役のナイツ土屋さんもそのまんまみたいで良かった。この映画どうして
Netflixで作ったのだろう。普通に劇場公開されている映画だったら、柳楽優弥は
日本アカデミー賞の主演男優賞ものである。ラストのタップダンスのシーンもと
ても感動的だった。




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