猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

HIGH FLASH 引火点

2022-02-07 22:08:43 | 日記
2018年の台湾映画「HIGH FLASH 引火点」。

台湾・高雄の小さな漁村で、環境汚染の原因となっている工場の操業停止を
求めて大規模な抗議行動が起こる。警察も出動し、多くのマスコミが詰めか
ける中、一艘の小舟が炎を上げながら港へ向かってくる。舟には抗議のため
焼身自殺を遂げた男が乗っており、男は一躍英雄として祭り上げられる。法
医学者の周建生(ジョウ・ジェンション/ウー・カンレン)がこの男の解剖を
することになったが、彼の体には多くの疑問点があった。周と事件を担当す
る検事の金梅照(ジン・ミンジャオ/ヤオ・イーティー)は、これが単なる焼
身自殺ではないと確信し調べていくうち、驚くべき真相が露呈していく。

環境破壊や政治と企業の癒着といった問題をテーマにした社会派ミステリー。
環境汚染に対する抗議のため焼身自殺をし、村の英雄となった男の検死をす
ることになった法医学者の周医師。彼は男の腎臓が発光しているのを見て不
審に思う。男の死体には他にも疑問点がいくつも見つかり、ただの焼身自殺
ではないと確信する。事件を担当する金検事は、前々からその環境汚染の源
である企業について秘密裏に調査していた。周医師と金検事は事件について
調べていくが、実は彼らは昔恋人同士で、周は別れたことをずっと引きずっ
ていた。
とてもおもしろかった。物語は淡々と進んでいくが、ミステリー小説を読ん
でいるかのように見応えがある。死んだ男の腎臓が光っていたことから疑問
を持つ周。彼が金に言った「人間は1度しか死なない」という言葉が印象的
だ。村の英雄となった男の死にはどんな秘密が隠されているのか、それが少
しずつわかってくる過程がおもしろい。環境汚染や政治と企業の癒着という、
どこの国でも起こり得る普遍的な問題を扱っているのが興味深い。男が死ん
で妻子は悲しむが、妻の様子がおかしいことに周は気づく。妻は何かを知っ
ている。
丁寧にスリリングに描かれているが、周と金が昔恋人だったという設定はい
らなかったのではないかと思った。周役のウー・カンレンはかっこいいし
(台湾のトップスターとのこと)、金役のヤオ・イーティーも美人だが、この
2人の恋愛要素はない方が良かった気がした。金がかつてしたことが発覚し、
周が打ちのめされるシーンがあまりに気の毒だったからだ。あれは周がかわ
いそうすぎる。
物語の後半で金はとても危険な目に遭うが、ちょっと突っ走りすぎたのだと
思う。事件に干渉しすぎたのは周も同じで、金に「越権行為よ」と言われる
のは医者として無理もないのだが、金もやりすぎだ。彼女は何でも自分1人
で決めて、人の意見を聞き入れないタイプである。かわいそうではあるが起
こるべくして起こったというか。私は全体を通して金が好きになれなかった。
地味だがテンポ良く進む物語で、ラストシーンも良かったし、私は好きなタ
イプの映画だった。




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2 コメント

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環境汚染-じっくり考えたい事ですね (ウラジーミル・アスポン)
2022-02-08 09:33:48
昇進自殺した男を解剖すると腎臓が光っていたそうですね。

環境汚染の工場を停止させる為の抗議の焼身自殺ですよね。
抗議しようという男の身自体、たぶん環境汚染で
身体をむしばまれている可能性が高いですね。
環境汚染などの公害で死んだ場合、死体が変な光を発するのは、過去に事例があります。

前、YouTubeで紹介されてましたが、1920年頃、時計の文字盤に
夜光塗料(放射線のあるラジウム塗料)を塗る工場で働いた女性が死亡しました。
生前も光り死後墓を暴くと骨も光っていたそうです。

死んだ男の腎臓が光ったのも工場で危険な薬品が河川や海に流れたせいかもしれませんね。

抗議の為とはいえ…焼身自殺なんて思い切った怖いマネが出来たのも、
どうせ健康を脅かされ死ぬ運命なので、漁村の仲間の為にも
焼身自殺したのかもしれないと思いました。
ただ死ぬのを待つより英雄になりたかったとかでしょうか……。

環境汚染している企業が政治家に献金でもしているなら……
なかなか儲けの為もあって、工場の操業停止は厳しいですね……。


事件を担当する金検事と周医師はかつて恋人だったんですね。
あまりにも工場による環境汚染だけだと、話に色気がないから
付け足しっぽいエピソードな印象なんでしょうかね…。

今、経済発展していく中で、環境汚染や公害の問題はつきませんね……。
抗議して戦っている被害者がいて、それで初めて環境にも配慮して汚水を
垂れ流ししないように今ではだいぶなっています。

今、これから発展しようとする国は、既に先進国が過去にやった過ちを情報で知っているはずなので、
気の毒な被害者を生み出す前に最初から注意して工場を稼働させる事を期待したいものです。

人の過ちから学ばないで利益追求だけで、又、被害が起こっているのだろうと思いました。
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Unknown (杏子)
2022-02-09 13:08:22
>ウラジーミル・アスポンさん
コメントありがとうございます。なかなかおもしろいミステリーでした。
ラジウム塗料を塗る仕事をしていた女性で、亡くなった後お墓のお骨まで
光っていたなんて、そんなことがあったのですね。
それだけ放射線に冒されていたということですね。怖いです。
放射線や化学物質などはまだまだ未知の部分がありますね。

周医師と金検事が昔恋人だったというエピソードは、おっしゃるように
映画が社会派ミステリーで華がないので、そういう設定を持ってきたという感じがします。
金検事は美人ですが気が強すぎて…好きになれませんでした(^^;)

経済発展と環境問題は切り離せない問題で、ずっと続くものですね。
去年観た「MINAMATA」という映画のように、犠牲者が出て初めて間違いに気づいたり、
犠牲者の上に発展が成り立ったりしているのですよね。
皮肉なものです。普遍的な問題ですね。
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