猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

WILL

2024-03-18 22:07:36 | 日記
2024年の日本映画「WILL」を観に行った。

俳優の東出昌大は都会を離れ、猟銃を手に山へと向かう生活を
始める。ガスや水道もない場所で、自らの手で仕留めた鹿や猪
を食べ、地元の人々と交流しながら日々を過ごす。そのような
生活の中で彼が何を考え、感じ、山や生命と向き合っているの
かを映し出す。

俳優・東出昌大の雪山での狩猟生活を、エリザベス宮地監督が
およそ1年にわたり追ったドキュメンタリー。東出昌大のドキ
ュメンタリー映画なんてファンの女性しか観に来ないだろうと
思ったが、若い男性、中年の男性、初老の男性と、男性も割と
観に来ていた。あの人たちはファンなのだろうか。東出昌大は
北関東の山でもう2年くらい狩猟生活をしているようだ。撮影
には監督の他にプロデューサーや登山家の服部文祥などが同行
する。写真家の石川竜一の写真も所々に映し出される。
何故俳優である東出昌大が狩猟をしているのか、そしてその経
験は彼に何をもたらしたのか。私はドキュメンタリーというの
はあまり好きではないのだが、意外にとてもおもしろかった。
セリフではない東出昌大の言葉も聞けて良かった。当たり前だ
が彼は狩猟免許と猟銃所持許可も持っている。自分で仕留めた
鹿などを捌くシーンはそうでもないのだが、鹿を撃つシーンは
私にはきつかった。東出昌大が言っていたが、「鹿は死んだ時
目を閉じない」のだそうだ。死んだ後こちらを見ているようで
痛ましい。
「かわいそうだな、ごめんね、という思いで動物を撃つ。かわ
いそうだと思うなら殺すなよって話なんですけどね」という言
葉が印象的だった。途中で保育園児だか幼稚園児だかわからな
いが、複数人を先生が引率してくる。「今日は鹿を食べさせて
もらいます」「みんながいつも食べている牛さんや豚さんもこ
うして命を落としているんですよ」と先生が言う。鹿を食べた
くないと言う子もいたが、食べた子は「めっちゃおいしい!」
と言っていた。私は鹿肉を食べたことはないが、そんなにおい
しいのだろうか。子供たちの心にはどういう思いが残っただろ
うか。
東出昌大の山小屋にはいろんな人が訪れる。俳優仲間や近所の
人。そして皆で鍋を囲む。この人は人から好かれる人なんだろ
うなあ、と思った。良くも悪くも純粋でバカ正直。地元の猟友
会は少し排他的で、信頼できる奴しか仲間に入れないと言って
いたが、猟友会にもすんなり迎えられた。子供たちも懐いてい
た。本人が子供好きなのだろう。「動物を殺して命をいただく
」ということの残酷さや重要さを、間近で見た気がした。
けれども普段山で生活して仕事の時だけ東京に行くというのは
大変ではないのだろうか。舞台となると稽古の期間もあるだろ
うし。当分この生活を続けるつもりのようだが。MOROHAと
いう2人組のバンドが度々登場する。UKという人がアコーステ
ィックギターを担当し、アフロという人が歌を担当している。
歌といっても詩をがなり立てているのか歌を歌っているのかわ
からないような歌い方だ。彼らのステージが映画の中で何度も
登場したが、その「魂の叫び」のような演奏と歌は東出昌大の
野性的な魅力と共に強烈に印象に残った。



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コメント (2)
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