猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

白いリボン

2019-03-26 21:26:43 | 日記
2009年のオーストリア・ドイツ・フランス・イタリア合作映画「白いリボン」。

1913年、ドイツの小さな村。男爵(ウルリッヒ・トゥクル)と牧師(ブルクハルト・
クラウスナー)が権力者として支配するこの村で起きた最初の事件は、ドクター(
ライナー・ボック)の落馬事故であった。屋敷への道に細い針金が渡されていて、
馬が転倒したのだ。重傷を負ったドクターは村の外の病院で療養することになる。
隣家の助産婦(スザンネ・ロータ)が彼の子供たちの世話をすることになる。その
後第2、第3の事件が起き、男爵は礼拝の席で「犯人を見つけ出せ。でなければ村
の平和はない」と言った。これによって、村には言いようのない不安が立ち込め
るようになる。

ミヒャエル・ハネケ監督、第62回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。全編
モノクロームの人間ドラマ。小さな村で次々と起きる事件によって、村人たちが
不安と疑心暗鬼になっていく様子を描き出す、とてもおもしろい映画だった。
ドクターが針金によって落馬させられ重傷を負ったり、小作人の妻が転落死した
り、男爵の子供が行方不明になった挙げ句に暴行されて発見されたり、助産婦の
知的障害のある息子が失明するかもしれない程のケガを負わされたりと、村には
次々と犯人のわからない事件が起きる。小作人の妻の転落死以外は、教師(クリス
チャン・フリーデル)は子供たちの関与を疑う。
一見のどかな小さい村だが、そこには悪意、憎しみ、嫉妬、猜疑心などが渦巻い
ている。大人だけでなく子供たちの中にも。白いリボンは子供の無垢、素直さ、
純粋さの象徴だが、あんなに支配的な村で育つ子供たちからは無垢さは失われる
だろう。そしていくつもの事件の犯人は見つからないままなのである(小作人の妻
の転落死は事故と思われる)。犯人捜しをする映画ではないのはわかっているが、
何とももやもやが残る。全て推測に過ぎない、とても不条理な物語なのだ。
悪意のかたまりのような村で、救いとなるのは教師の恋愛話と、牧師の末子の鳥
のエピソードである。牧師の幼い子供は優しい子だ。モノクロの映像が時代をよ
く表現していて、とても見応えのある映画だった。私の好みの作品である。



良かったらこちらもどうぞ。ミヒャエル・ハネケ監督作品です。
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