猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

葛城事件

2017-03-03 19:13:16 | 日記
2016年の日本映画「葛城事件」。
親が始めた金物屋を継いだ葛城清(三浦友和)は、妻・伸子(南果歩)と共に2人の
息子を育て、念願のマイホームを建てて理想の家庭を築き上げたはずだった。
しかし、清の強い思いは知らず知らずのうちに家族を抑圧し、支配するように
なっていた。長男の保(新井浩文)は従順だが対人関係に悩み、会社をリストラ
されたことを言い出せない。そして、アルバイトが長続きしないことを清に責
められた次男の稔(若葉竜也)は、ある日突然、8人を殺傷する無差別殺人事件を
起こす。死刑判決を受けた稔は、死刑制度反対を訴える女性・星野順子(田中麗
奈)と獄中結婚することになる。

実際に起きた事件をモチーフにした、ある家族の崩壊の物語。すごく見応えが
あった。息子2人を社会人になるまで育て上げ(次男はニートに近いが)、マイホ
ームも建てた父親は、一家の長として立派にやっていると思っていた。しかし
妻、長男、次男はそれぞれその父親に重圧を感じるようになっていることに気
づいていなかった。次男が殺人事件を起こすこと以外、こういう家庭は割とあ
るのではないだろうか。家庭が崩壊しつつあるのが全くわからない父親。自分
のしてきたこと、生き方は正しかったと思い込んでいる。家族の1人1人が病ん
でいっても、まだ気づかない。あるいは無意識のうちに気づかないようにして
いる。
俳優たちの演技は皆とてもいいが、特に父親役の三浦友和は圧巻である。この
人こんなにうまかったっけ、と思うほど。母親の存在は家庭内の男尊女卑を表
しているのだと思うけれど、この母親も決していい母親とは言い難い。長男は
結婚して幼い子供がいるが、失業したことを妻に言い出せず、毎日スーツ姿で
家を出る。この長男の姿は何とも悲しい。新井浩文は映画にたくさん出ている
人だが、あまり表情がない割にとても存在感のある人だと思う。
死刑囚と獄中結婚する人というのが私は理解できない。死刑反対の思想を持つ
のは自由だが、「死刑囚を愛する」ということが事件の遺族の人たちの気持ち
を逆なでする行為だと何故わからないのだろうか。暗い、あまりにも暗い映画
だった。暗い映画は好きだが、暗すぎる。登場人物皆が不幸になり、全く救い
がない。おもしろかったが、観て疲れる感じだった。






コメント (4)
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