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猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ル・アーヴルの靴みがき

2012-06-05 02:56:32 | 日記
フィンランド・フランス・ドイツ合作映画「ル・アーヴルの靴みがき」を観にいった。
ベトナム人の弟子と、ル・アーヴルの街角で靴みがきをして生計を立てているマルセル
(アンドレ・ウィルム)。その暮らしぶりは実に慎ましいものである。でも、彼には
愛する妻・アルレッティ(カティ・オウティネン)と愛犬との暮らしが幸せなのである。
そんな、「特に何もない日常」を送っていたマルセルに、ちょっとした事件が起きる。
ガボンからの不法入国者たちが警察に捕まるのだが、1人の少年が脱走し、偶然にも
マルセルと出会う。彼は少年を母親のいるロンドンに送ってやりたいと思い、資金集めに
奔走する。同じ頃、妻が体の不調を訴えて救急搬送され、そのまま入院することになる。
マルセルは妻のいない家に、少年をかくまう。マルセルと少年の絆は強くなっていくが、
妻はもう長くないと診断されてしまう。妻はそのことを夫には言わないで、と医者に頼む。

アキ・カウリスマキ監督作品。カウリスマキはずっと、社会の片隅で慎ましく生きる
人たちを描き続けている。今回はフランスが舞台であったものの、雰囲気はいつもの
フィンランド映画。この人の映画を観る度に、フィンランドの人ってこんなに貧しいの?
と思ってしまう。貧しいというのは違うかもしれない。とにかく質素なのだ。食べ物も、
生活ぶりも。ダイヤル式の電話や、レコード。本当にまだそんなものを使っているの
だろうか。それともカウリスマキの趣味で小道具に使っているのか。どっちなのかわか
らない。「街のあかり」でも、主人公の男性が自宅に女性を招待するのに、用意した
のはパンとお酒だけだった。
でも、この雰囲気が私はものすごく好きなのだ。裕福でない人々を、カウリスマキは
暖かい目で見て、描き出している。
この人の映画は、見る人によっては退屈だろうと思う。とにかくセリフが少なく、
登場人物たちの表情も薄い。これが大きな特徴なのだ。私は元々フランス映画とか、
静かな映画が好きなので、私には合っているのだが、テンポのいいアメリカ映画が
好きな人は、退屈で寝てしまうんじゃないだろうかと思う。

私が初めて観たカウリスマキ作品は「マッチ工場の少女」で、大きな衝撃を受けた。
感動というのではない。救いようのない物語だったから。なんと言えばいいのだろう、
「こんな映画作る人いるんだ!」という衝撃、だろうか。
映画の冒頭で、主人公の少女がベルトコンベアで運ばれてくるマッチの点検をしている。
無言で、無表情で。私はそのシーンにいっぺんで惹き込まれた。後にNHKのBSで放送
されたので録画して、何回観たことか。それ以来カウリスマキにはまった。残念なこと
にまだ全部の作品は観ていないのだが、絶対いつかDVDを揃えようと思っている。