定年後の伊豆高原 バラと酒と音楽と

伊豆高原に終の棲家を建築し永住。カミサン、愛猫ジローとの伊豆での老後は如何に。薔薇・酒・音楽・日々の徒然。

下賀茂・青野川と今井荘の思い出

2008年03月23日 | 定年後の徒然日記
下田の街を通り過ぎ、しばらく行くと下賀茂に入る。めざすは青野川。河津の河津桜は有名だが、青野川の河津桜の風情も捨てがたい。河津桜はもちろん葉桜となったが、人の少ないこの時期(17日の月曜日の事だが)に行って正解だった。伊豆高原の自宅から平日は車で約1時間の距離だ。家内の体の調子が良くて、しかも天気の良い風のない日でなければ下賀茂までは行けない距離だ。



懐かしい田舎の匂いがする。カモが泳ぐ青野川沿いの土手の道。約1キロくらいの土手道に少し葉桜となった河津桜と満開の菜の花が美しい。のんびりのんびり車椅子を押す。いいなぁ、この風景。



中ほどの所に町営の足湯がある。誰もいないから足湯に入ろうか。家内も乗り気だ。湯けむりをあげる温泉に手を入れると、あ、熱い!50℃くらいあるだろうか。足し水が出来るが温くなるまで時間がかかりそう。横を見ると「手湯」の看板が。足湯は面倒だから手湯でも入ろうか。手を入れる。やっぱり熱い。熱いけど気持ちいい。家内も恐る恐る手を差し入れる。「熱いわ…でも、気持ちいい」 温泉は自宅で毎日入っているのだから珍しくはないが、下賀茂の湯は格別だ。




足湯手湯のすぐ裏に温室が。マーガレットの温室だ。南伊豆町はマーガレットで知られているが、この温室も町で管理しているようだ。こんな大きなマーガレット見たことない。


またしばらく行くと、青野川の対岸に旅館が。覚えているかい?下賀茂の伊古奈だよ。ほら、露天風呂付のお部屋に泊まったじゃないか。死んだオフクロとも行ったよね。覚えてる?
少し時間が経ってから「うん…覚えてる」と言ってくれた。もう十年以上も前のことだが。


土手を散歩していると男子高校生の二人連れとすれちがう。「こんにちは」 二人の高校生が私たち夫婦に挨拶する。あわてて、こんにちは、と返事をする。高校生から、こんにちは と挨拶されるのは極めて珍しい。しばらくすると、今度は一人の女子高校生が。「こんにちは」 やはり挨拶してくるではないか。こんにちは。とても清々しい気持ちになった。家内も微笑んでいる。「感心な学生さんね…」 この町(南伊豆町)では挨拶運動でもしているのだろうか。そういえば西伊豆の松崎でも挨拶運動が盛んだと聞いた事がある。今時の高校生は…というイメージは下賀茂にはない。素直で真面目でおだやかな高校生の顔があった。下賀茂が好きになった。

下賀茂の帰途、白浜の手前の外浦海岸に車を停める。マリンブルーに白砂が美しい。白浜は人とアザラシ(サーファーの事をこう呼んでいる)が多くて騒々しいが、外浦海岸はどこまでも静かで美しい。伊豆高原近くには無い美しさである。


今井浜を通過する。覚えてる?(また覚えてる?の問いかけだ)今井浜の今井荘。ほら、新婚旅行の二日目、泊まったのが今井浜東急ホテルだよ。道路を渡った向かいに今井荘があったよね。昔は木造の旅館だった。今井荘のテラスでお茶した時の君の写真、今でもあるよ…。僕が好きな写真の一枚だ。
しばらく経って「うん…覚えてる」
じゃあ、新婚旅行一日目に泊まったところを覚えてる?
「…」
箱根芦ノ湖の山のホテルだよ。
「…」
もう四十年も前の事だもんね。

思い出が断片的になっていくのが悲しい。
疲れて眠ってしまった家内を乗せて家路を急ぐ。
南伊豆町下賀茂の青野川 行って良かった。