順天堂入院を五日後に控えた今日、我が家にとっては青天の霹靂な事態がおこった。
それは、いつも家内の介護ケアなどでお世話になっているケアマネのTさんからの電話が始まりだった。
「実は、奥様がショートステイする予定の「いとうの杜」からショートステイはお受けできない、との断りの電話があったんです」
えっ?入所を断られたってどういう事ですか?
「奥様が時々おこす早朝の血圧急上昇は狭心症の様だから、施設としてもリスクがあるので引き受けられないと言うんです」
だって、つい先ほども、いとうの杜の担当者から電話があって、家内の入所日の段取りを確認されたばかりですよ。
「その電話の後で、引き受け拒否の指示を上司から受けたそうなんです」
何を言ってるんですか、ショートステイを申し込んだのは去年の八月ですよ。で、順天堂での手術日が決まってから、正式にショートステイをTさん経由で申し込んだのが11月。十二月二十二日には施設の担当者が自宅までやってきて、家内と面接されているんです。その際に、家内の病歴から服用している薬の一覧、日常生活のパターン、食事の事、入浴の事、介護の程度、勿論、月に一回程度おこる早朝の高血圧についても文書にして提出して詳しく説明もしてるんですよ。
提示された書類にもサインをして、勧められた眺望の良い個室(高額だけど)を契約したんです。もう順天堂入院の準備も終えているし、今更入院をキャンセルする事も出来ないし、この段階で別の施設を探すなんて出来る訳ないじゃないですか。
「…」
私が入院している二十日間、介護4の家内は一体どうすればいいんですか。
その後、いとうの杜から詫びの電話がはいった。ふざけんじゃないよ、電話一本の詫びで済む話じゃないだろ!怒り心頭で電話を切った。
以上が青天の霹靂の顛末だ。
頭が混乱した。いったいどうしたらいいんだ。心配をかけたくは無かったが仕事中の娘に電話を入れてしまう。
その後、ケアマネさんや娘とも相談して、朝食前後の二時間、昼食前後の二時間、夕食前後の二時間、計三回の介護ヘルプをお願いし、娘は毎日、仕事の帰りに自宅に立ち寄り、一日おき位に泊まってもらう方向で対処することになった。だが、ヘルパーさんが居ない時間の不安、娘が泊まれない夜の不安、不安はつきない。もしもの時の緊急連絡用通信装置の手配はケアマネさんに頼んだが、どうにも不安が治まらない。
「ご・め・ん・ね、 ご・め・ん・ね、 し・ん・ぱ・い・か・け・て…」
事の経緯を全て聞いていた家内が不安そうな顔でそう言った。
君が謝ることはないよ、大丈夫、心配ないよ、任せとけって。
家内の心情を思うと、こっちまで情けなくなってくるよ。
「いとうの杜」は医療法人啓仁会の運営する介護老人保健施設だ。
パンフレットやホームページ http://www.wam-town.jp/ito/ ではこう書かれている。
「いとうの杜」の理念
1.利用者の皆様の尊厳を守ります。
ご利用者の方々の今までの生活や歴史、尊厳や主張を大切にし、適切な接遇や対応を持って、スタッフ、ご利用者、共に笑顔が絶えない過ごしやすい毎日が送れるよう、努めていきます。
2.安全・安心を守ります。
地域の医療機関や各施設等との連携、ご家族との連携を密に図り、常に安全に配慮していきます。また、常に専門知識の向上に努め、短期入所生活介護や訪問介護等の居宅サービスにも力を入れ、退所してからも安心して生活できる環境づくりを目指していきます。
3.ひとりひとりに合わせた対応を守ります。
ユニットケア、認知症専門フロア、一般フロア、短期入所専門フロア等、各フロア毎、特徴及び専門性を持たせた上、専門スタッフを育て、利用者の方々ひとりひとりに合わせたケアやサービスを常に考えていきます。
医療法人啓仁会について
医療法人啓仁会は、誰もが健やかに老い、安心して暮らせる街、誰もが生きがいをもって、共に生きることのできる「ロイヤル・ワム・タウン」の実現をめざして、これまで進歩、発展し続けてきました。本格的な高齢化時代を迎えた21世紀、時代が、わたしたちに求めているものは何か、わたしたちはそれにどう応えていくか…。人々の思いを軸として、医療と保健と福祉、それぞれの分野を総合的にとらえ、これからも安心と生きがい、そして日々感動のある未来社会づくりを推し進めていきます。
WAM(ワム)=Welfare And Medical(福祉と医療)
かけがえのない命を守る「医療」、なによりも大切な健康づくりをお手伝いする「保健」、そして安らかな老後を支える「福祉」。高齢者の方々がこの地域で、健康に、安心して、そして生きがいをもって暮らせるよう「ロイヤル・ワム・タウン」では、自治体や関係機関とも連携して、この3つの分野のより密接なネットワークづくりを進めています。
よりよい看護・介護の実践から、医療や看護、介護に関するさまざまなご相談への対応、お一人お一人の希望や状況を組み入れたケアプランの作成まで、求められるサービスを総合的に、適切に提供し…、
聞いて呆れるではないか。月一回程度の早朝高血圧発作、その対処はニトロール1錠を舌下に含ませるだけ。10分後には通常血圧に戻るパターンの対処が「リスクがあるから引き受けられない」とは。「福祉と医療」が経営理念とは笑わせる。しかも数ヶ月前からショートステイの申し込みを行って面接も済ませ、入所五日前の今日に至ってリスクがあるからとは何事だ。しかも電話一本の詫びで事を済まそうという無責任さ。
聞けば、この施設、昨年11月にノロウィルスによる食中毒事件を起こした施設だそうだ。こういう無責任体質の施設だから食中毒もおこるのだろう。ショートステイを申し込むと、安い大部屋はいっぱいという理由で高額な個室とするよう誘導されるとの評判も聞いた。確かにそういう気配ではあった。一時が万事だ。
僕は「いとうの杜」とはこういう施設だという事をこのブログで公表します。
私たち家族が受けた精神的苦痛を、他の家族が受けないように公表します。「いとうの杜」という名前も堂々と載せます。それが営業妨害というなら受けて立ちます。
この怒りは簡単には納まらないし、順天に入院中、ずっと不安を抱えなくてはならない僕の抗議です。