定年後の伊豆高原 バラと酒と音楽と

伊豆高原に終の棲家を建築し永住。カミサン、愛猫ジローとの伊豆での老後は如何に。薔薇・酒・音楽・日々の徒然。

薔薇を始めた理由

2007年03月13日 | バラ日記
伊豆高原に転居するまでは薔薇を栽培しようなどとは思ってもいなかった。別荘時代だって伊豆高原で薔薇をやろうなどとは露ほど思わなかった。伊豆が好きだったのも、海・温泉・暖かい気候、の三点であり、とりわけ海があったからだ。何故海かというと釣が出来るという事に他ならない。そう、私の本来の趣味は釣りである。子供のときからずっと釣り、それも海の船釣り専門だった。
春は相模湾か東京湾のキス、夏は布良か洲崎のイサキ、秋は内房のアジ・鯛、冬は勝浦の鬼カサゴか大原のヒラメと相場が決まっていた。
しかし伊豆の船釣りはあまり経験していなかった。松戸から遠方ゆえ足が遠かったのである。
別荘時代の七年間、伊豆に来る度に「ここに永住したらさぞかし釣り三昧の毎日となるだろうなぁ」と思っていた。伊豆高原の新しい住まいが完成し、引越しの当日でさえ、ゴルフ道具は全て処分してしまったが釣道具だけは大事に運んだものだ。
それがどうだろう…伊豆高原に居を移してから三年、一度も竿さえ出した事が無いのである。チャンスが無かった訳ではない。何故か全く釣をしようという意欲が湧いてこなかったのである。自分でも不思議でしょうがない。
で、どうして釣が薔薇になってしまったのか。


(写真は去年のオフェリアHT)
伊豆高原を終の棲家としようと決め、家の設計、旧宅の売却と目まぐるしい時間が過ぎていったある日、家内が倒れた。夜中に胸が苦しい、息が出来ないと苦しみだし、直ぐに救急車を呼んだ。搬送先は旧宅から車で5分の千葉西総合病院。呼吸困難は続き気道切開もやむなしと医師から言われたが、強制酸素吸入と点滴により危機を脱した。高血圧に起因する肺炎と心不全という事であった。そして一ヶ月の入院後に退院するが、その三ヵ月後に再入院となった。炎症反応が異常に高かく検査入院となったのだが、あらゆる検査をしても原因が判らずじまいであった。後に越谷の順天堂大学病院でリウマチと診断された。そして、高血圧と糖尿に加え多発性筋炎(リウマチの一種)というやっかいな病気を抱える家内は、あれだけスポーツウーマンであった活発な女性が別人のように痩せ衰え、歩く事もままならなくなってきたのである。
その事があって以来、伊豆高原に転居するのを急いだ。転居を急いだ理由は、ストレスが無く空気が良く水がおいしい伊豆でリハビリをしたかった事。(周囲がマンションだらけの旧宅周辺では散歩も満足に出来ない環境であった)毎日温泉に入れるのでリウマチ療養に都合が良い事。順天堂静岡病院があったこと。リウマチでは実績があり専門医がいる伊東市民病院があること、の三点であった。
そして、家内の通院とリハビリ中心の伊豆での生活がスタートした。そしてリタイア後の生きがいを探していたとき、一冊の本と巡り合った。「薔薇の園を夢見てーPart1」(梶みゆき著・ビズ・ベネッセコーポレーション)である。オールドローズと無農薬栽培をテーマとした薔薇のお話である。執筆者の梶みゆき氏、高山玲子氏の文章と庭園紹介、そしてオールドローズの写真集はいっぺんに私を虜にしてしまった。直ぐに「薔薇の園を夢見てーPart2」を購入。この二冊は未だにベッド脇においてある。
旧宅でも薔薇はあったが、それほど関心はなかった。が、しかし、この二冊の書籍で薔薇への思いで瞬く間に私の頭の中が一杯になってしまったのである。「そうだ!薔薇栽培ならいつも家内と一緒に楽しめるだろう。家内を独りにする事も無いだろう。おまけに部屋を薔薇の香りで一杯にする事も出来るし、通りがかりの人も楽しめるじゃないか。第一、釣よりも安上がりだ。」
こうと決めたら即行動が得意技。既に家の着工は進んでいたが、早速造園設計をして地元の造園業者に施工をお願いする事になった。

転居一年後、家内は再び重病に襲われる事となった。伊東市民病院からドクターヘリに乗せられて順天堂静岡病院へ。大動脈解離という大病で生死を彷徨う12時間の大手術となった。名医にめぐり合い一ヵ月後に無事退院。そして又、リハビリの毎日が始まった。
移住から三年、ますます薔薇にのめりこんでいる私だが、薔薇栽培を始めてつくづく良かったと思う。これなら毎日、家内と一緒に楽しめる。薔薇は手が掛かるし思いの他重労働だ。勿論、家内の体力では薔薇栽培はとても無理だ。だから作業は全て私一人。炎天下の真夏でも、手がかじかむ真冬でも、庭に出て作業をしなければならない。しかし春になり芽が動き出し、蕾がつき、薔薇の香りでいっぱいになったとき、あぁ、薔薇をやって良かったと思えるようになってきた。これならずっと続けられそうだ。
これが私の「薔薇を始めた理由」である。
最後までお付き合いいただいてありがとうございます。