net news 「低所得層」とは、どのくらいの収入の人たちのことなのか (THE PAGE 2016/04/25)~私を含め、年金生活者は、低所得者層に該当する。
ここ数年、ニュースなどで低所得者あるいは低所得層というキーワードに触れる機会が多くなっています。日本経済は長期的な低迷が続いており、相対的な豊かさが低下してきていますから、こうしたキーワードが目に付くのも無理はありません。しかし、低所得者とはイメージ的には分かりやすくても、実際、どの程度の収入の人のことを指すのかはっきりしていません。ここでは低所得者について少し詳しく解説したいと思います。
低所得層の定義とは?
所得水準を考える際に注意する必要があるのは、個人の年収と世帯年収の違いです。同じ年収300万円でも、夫婦が仕事を持ちそれぞれが300万円を稼いでいる場合には、世帯年収は600万円となり、平均値は超えることになります。年収500万円で専業主婦の世帯よりも所得は多くなりますから、一概にどちらが豊かとは断定できません。
低所得層の世帯収入はどのくらい?
厚生労働省など、福祉行政を担当する官庁では、世帯収入が生活保護水準に近いところを低所得者として位置付けることが多いようです。住民税が課税されない所得水準を基準にすることもありますし、相対的貧困率を計算する際の貧困線(可処分所得の中央値の半分)を基準にすることもあります。ちなみに、住民税が課税されない所得水準は、東京で夫婦と子ども一人の場合は200万円程度、相対的貧困率を基準にする場合には122万円となります。
ただ、この水準では、子どもがいる世帯の場合、現実に生活するのが困難になってきますから、生活保護などの支援が必要となります。実際に生活が困窮している層と、先ほどの年収300万円以下の層を同じ所得階層として位置付けてよいのかは解釈が分かれるところでしょう。厚生労働省も、調査によっては200万円以下を低所得者とするなどケースバイケースの対応をしているようです。
公的支援を受けられる水準は?
もっとも、税金という面から見た場合、所得水準の解釈は少し変わってきます。日本の所得税は累進課税制度となっており、所得の低い人からはほとんど税金を取らず、所得の高い人からたくさん徴収する仕組みになっています(所得税として徴収される税金のうち半分は、納税者の4%にすぎない1000万円以上の高額所得者からのものです)。累進税率の上昇ペースは、600万~700万円、1000万~1500万円を境にして大きく変化します。つまり税制の面では、600万円以下は所得が少ない人、600万~1000万円を中間層、1000万円以上を高額所得者と見なしていると解釈することが可能です。
総合的に考えると、世帯年収が300万円以下の場合には、低所得者と考えてよいかもしれません。しかし、公的な支援を受けることができる水準ということになると、200万円以下が基準と考えれば分かりやすいでしょう。(The Capital Tribune Japan)