あまりにもたくさん買い過ぎて、新幹線で持ち帰れなくなり、おじいちゃんに箱に入れて宅急便で送って貰ったりしていたのがとても懐かしい、おじいちゃんとの思い出の一つだ(おじいちゃんには本当に色々と迷惑をかけたのに、いつも可愛がって貰ったものである!)。
前置きが長くなったが、そんな頃たまたま本屋で見つけた漫画の一つに、『鋼鉄人間シグマ』と言う漫画があった。

まさに鉄腕アトムと鉄人28号の間をとったような少年ロボットが活躍する漫画であったが、その絵柄が横山光輝そのままだったので、僕はてっきり横山光輝作品かと思い、手にとってみた。原作は横山光輝となっていたので、明らかに関係していることはわかったが、作画はなんと塚本光治と言う、別の漫画家名義になっていた。

それにしても画風が横山光輝そっくりで、横山光輝作品と言われたら疑わなかっただろうレベルだった。

その後調べたら、塚本光治は元々虫プロダクションのアシスタントとし手塚治虫に従事していたらしく、またのちに横山光輝の光プロで横山光輝のアシスタントもやっていた漫画家であることがわかった。しかも、塚本光治はペンネームで、本名は宮脇義勝と言うことも判明した。なるほど、どうりで横山光輝に作風が似ているわけだ。しかも、手塚治虫の下でも学んでいるので、僕の大好きな二大巨匠の下でしっかりテクニックを継承している貴重な漫画家である。


さてこの『鋼鉄人間シグマ』だが、少年サンデー1964年14号~1965年3・4合併号まで連載され、単行本としては三冊発売されている。宮腰義勝は、『鋼鉄人間シグマ』のヒットにより、翌年アニメとなった『宇宙少年ソラン』の漫画版をリリースし、この作品は宮腰義勝の代表作となった。

『鋼鉄人間シグマ』は、小学生当時に何故か一巻と二巻しか購入出来ず、自分の中では”未完”のままとなっていたが、最近偶然にも古本屋で幻の第三巻を発見し、興奮して思わず購入した。これでついに全3巻が揃ったのだ。

しかし、全三巻のこの漫画を集めるのに、実に40年もかかってしまったが(笑)、第三巻だけまた巡り会うとは何かの縁を感じてしまう。また改めて全3巻を一気に読み返してみたが、やっぱり面白い。横山光輝原作だけあって、物語に勢いとシームレスな流れがあり、作画も横山光輝スタイルを見事に継承しているのはさすがだ。

この『鋼鉄人間シグマ』は特別に有名な作品では無いので、漫画界でもすっかり忘れ去られているかもしれないが、だからこそ、より一層の希少価値感がある。『漫画市』と言うマニアックな定期出版本のシリーズがあるが、2015年に出版された第23号に『鋼鉄人間シグマ』が特集されているのを知り、この号を神保町で探し出し購入した。当時の表紙絵などを多く収録しており、かなりマニアックな内容だ。そもそも今『鋼鉄人間シグマ』を掘り下げてチェックしている人は、日本中探してもまずいないだろう(笑)。

宮腰義勝が、『鋼鉄人間シグマ』の次に手鰍ッてヒットした作品に、『宇宙少年ソラン』がある。これはアニメ化もされたので知っている人も多いのではないだろうか。『宇宙少年ソラン』は読んだことが無く、今回『鋼鉄人間シグマ』をまた読んだのをきっかけに読んでみたくなり、ネットで購入。幾つかの出版社から出版されているが、全2巻からなる、1999年発売の朝日ソノラマ版を購入した。

初めて読んだ感想として、かなり”手塚治虫&横山光輝ってる(笑)”ということだ。鋼鉄人間シグマのタッチを継承しながらも、本作ではより自分のカラーを出そうとしているのも見て取れるが、作画タッチはどうしてもすぐに変えられるものでは無く、二人の巨匠を受け継いでいることがはっきり見て取れるのがまた面白い。しかし、あえて厳しい言い方をすれば、絵はうまいが、二人の巨匠を超える”個性”が最後まで打ち出せなかったとも言える。
やがて宮腰義勝は漫画の第一線から消えてしまい、宇宙少年ソラン以降は代表作と言える作品が出なかったようだ。とても残念ではあるが、それでも鋼鉄人間シグマ、宇宙少年ソランで一瞬の光を漫画界で放ち、それを漫画ファンとして体感出来たのは幸せなことである。