
また、どこかのブックレビューで、この本のあらすじにはこう記されていた。
「24歳で母を喪い、我が家は、父と娘の私だけになった。それから20年が経ったけど、いまだに家族は増えていない。気づくと私は40代半ば、父は80歳になろうとしている。いま猛烈に後悔していることがある。母の人生を、母の口から聞くことがなかったことを。母の母以外の顔を知らないまま別れてしまったことを。父については、もう同じ思いをしたくない。もっと、父のことを知りたい。もう一度、父と娘をやり直したい。それには、これがラストチャンスかもしれない――。」
この本は戦時中に生まれ、戦後結核で入院、学歴もないまま社会に飛び出たジェーン・スーの破天荒な父との様々な思い出のエピソードを通して父親との関係性が語られて行く。また、父親の母との出会い、娘(自分)の誕生、他の女性の影、全財産の喪失、母の死などが赤裸々に語られる家族の物語、回顧録でもある。シリアスな中にもジェーン・スーらしいユーモアな言い回しも随所にあり、昭和という時代、そして東京という場所での家族の肖像が娘の目を通して描かれているのがなかなか面白い。

確か王様のブランチでこの本が紹介された時、”果たして自分の父親のことをどのくらい知っているだろうか?”と言う問いかけに対してジェーン・スーが出した解でもあるとのことで、僕はその時はたと考えてしまった。確かに一番身近で長年衣食住を共にしてきて、何よりも自分に一番近い血縁関係にある自分の両親のことを、果たしてどのくらい知っているのだろうか?と。下手をすれば両親の生まれた年や誕生日すらろくに覚えていないのだ。両親それぞれの結婚前の話などは、親戚や祖父母から聞く以外は、皆目見当がつかない世界だ。こんなに身近な身内のことが、実は一番良く知らないのでないかと思ったら、なんだかこの本が無性に読みたくなってしまった。
僕の父親も82歳。何度も手術し、透析を受ける身体になってしまったこともあり、自分の父親のことを考える機会が間違い無く多くなった。まだ父が元気なうちに自分の両親、特に父親のことをもっと知っておくべきだと思ってしまった。そんなことを改めて考えさせられる本であった。