あのベイビーフェイスが、2007年のカバー集『Playlist』以来8年ぶり、オリジナル・スタジオ・アルバムとしては2005年の『Grown & Sexy』以来、なんと10年ぶりとなるニューアルバム、『Return Of The Tender Lover』を12月4日にリリースした。昨年はトニーブラクストンの黄金タッグによるデュエット作をリリースしてまた表舞台に登場していたし、プロデューサーとしては、最近でもアリアナ・グランデの『Baby I』など、幾つかのヒットを飛ばしているが、ソロ作品としてはこんなに長いブランクがあったということも改めて驚かされる。
さてこのニューアルバムにひと言で言うとしたら、"Welcome Back! Babyface!"である。僕が大好きだった全盛期のベイビーフェイスがギッシリと詰め込まれながらも、円熟して帰ってきたような快心の出来映えである。ファンとしては、長いブランクも待った甲斐があったと思わせる、そんな素晴らしい傑作に仕上がっているのだ。
このニューアルバム、まずはジャケ写が秀逸だ。景色の良い高層ビルのガラスを横にしたスーツ姿のベイビーフェイスが立っているが、何とも洗練された都会的なデザインだ。ジャケ写から既に品と質の良さを期待させる。
次に秀逸なのがアルバムのタイトル。『Return Of The Tender Lover』とは、彼の1989年にリリースした名盤、『Tender Lover』へのオマージュ。この『Tender Lover』は僕も前にブログで取り上げたが、僕の最も好きなベイビーフェイスのアルバムであり、好きなアルバム全体の中でもトップ10に入る作品である。この"Return"という言葉が付いていることで、本人の意気込みと本気度が表現されており、Tender Loverファンにとっても、タイトルから来るアルバムへの期待感も一気に高まる。しかし、こうやって新旧『Tender Lover』アルバムのジャケ写を比べてみると、如何に新作が洗練されたデザインかがわかるから面白い。
アルバムには下記9曲が収録されているが、この"9曲"という曲数も、良きレコード時代の名残り的で僕は凄く嬉しかった。これが16曲とか収録されているようなアルバムでは逆にガッカリしたに違いない。しかし、アルバム全曲を聴いてみて、改めてこの9曲の本気度を知ることになる。どの曲もシングルカットしてもおかしくない高い完成度で、捨て曲が無いことから、厳選された9曲であることが伺える。『Tender Lover』に収録されていたアップテンモネ『It's No Crime』や『My Kinda Girl』ほどのノリノリな曲は無いが、むしろミディアムテンモフ曲や、バラードとしては、『Tender Lover』の頃よりも完成度が増しているとさえ思え、キャリアを重ねてきたベイビーフェイスの深みを堪能出来る。
1) We've Got Love
2) Fight for Love
3) Exceptional
4) Walking on Air (feat. El DeBarge)
5) I Want You (feat. After 7)
6) Love and Devotion
7) Standing Ovation
8) Something Bout You
9) Our Love
どの曲も素晴らしいが、僕が特に好きなのはシングルカットされている『We've Got Love』。サビのボーカルワークがベイビーフェイスらしくて素晴らしいし、何よりもャWティブな明るさが魅力的な曲だ。また、4曲目のEl DeBargeもフィーチャーされた比較的アップテンモネ『Walking On Air』も明るく楽しげな曲調がとても心地良い。そしてもう一曲特に気に入っているのがAfter 7をフィーチャーした『I Want You』。これはミディアムテンモフバラードだが、サビ部分がどことなくマイケルジャクソンを思わせるが、これはAfter 7のボーカルワークに寄る部分が大きいかもしれない。かなりアダルトで上質な曲となっている。
アルバム全体の大きな特徴としては、兎に角明るいャWティブな空気感に包まれていること。ベイビーフェイス本人も"Feels Good!"がコンセプトだと語っているが、まさにその通り気持ちの良いアルバムだ。暗い曲が全く無いし、一曲一曲のクオリティが実に高いし、やはりベイビーフェイスのファルセットを使った声の心地良さは格別である。
先日ブログで取り上げた1958年生まれの天才アーティスト三人衆、マイケルジャクソン、マドンナ、そしてプリンス。実はベイビーフェイスもなんと1958年生まれの同期。ぜひ豪華な同期会をやって、マイケルを偲びながら盛り上がって欲しいものだ。
久々にベイビーフェイスの健在ぶりが確認出来て、しかも傑作アルバムとして届けられたことに何とも感無量!最高のクリスマスプレゼントとなった。『Tender Lover』ともまた聴き比べてみるのも楽しいかもしれない。