僕はタモリがかなり好きである。芸能人の中では一番好きと言ってもいいかもしれない。
若い頃はかなり尖った存在であったが、今はいい意味で灰汁が完全に抜けて、とてもいい感じになっている。年齢と共にその博識で多彩、程良い笑いのセンスと、程良い緩さ、独特なコメントや間合いなどで決して出しゃばり過ぎない仕切りなどで冠番組を進行していく。この天才的な加減はなかなか真似出来るものではなく、タモリを超える存在は芸能界で他にいないのではないだろうか。
『笑っていいとも！』では全てのお笑い芸人や芸能人からも慕われる存在で、その人柄の良さもタモリの大きな魅力であった。長年『笑っていいとも！』を見てきた世代としては、番組が終了した時は青春時代がまた一つ終わったようでとても悲しかったが、その後も同じく長寿番組の『タモリ倶楽部』や、『笑っていいとも！』が終わったから実現した新たな番組、『ブラタモリ』などは毎回欠かさず録画しながら見ているし、『ミュージックステーション』もたまにチェックしたり、特番で放送する『タモリステーション』や『世にも不思議な物語』などもいつもついついチェックしてしまう。僕はやっぱりタモリが好きなんだなあ、とつくづく思ってしまう。
今思えばタモリは、どこか父に似ている。似ているというのは、顔が似ているという意味ではなく、なんとなく空気感や雰囲気が似ていたような気がするのだ。その落ち着いた雰囲気と、相反するお茶目さなどから似た雰囲気を感じていたし、良く本を読み、勉強熱心で博識なところもどこか共通する点があったように思う。その為、タモリを見ると父をいつも連想してしまう。タモリのことが好きなのは、どこかで父の姿を見ていたのかもしれない。
タモリの冠番組は、かなりマニアックなテーマを毎回取り上げたサブカル番組『タモリ倶楽部』もあれば、万人にウケするNHKに相応しい『ブラタモリ』もある。一見方向性が180度異なる２つの番組だが、実はタモリが興味のあること、そして彼の知識や興味をフルに活かせるマニアックな掘り下げ方をしている番組としてはある種同じ方向性なのであり、他の番組には真似出来ない深みのある内容がウリになっているのである。
僕は昔から歴史と地理が一番好きな学校の教科であった。その意味で『ブラタモリ』は、日本各地の地形などを取り上げ、時には日本列島の誕生にも起因する地層や地殻などに着目しながら、なぜその地域の地形を掘り下げている“地理”の番組でもあり、その地理を活かして如何に人々が繁栄していったかという“歴史”の番組でもあり、まさに地理と歴史を実に面白く解説してくれる。日本各地を訪れるので、旅番組としての側面もあるが、単に美味しいものを食べたり、観光地を周るのとは一線を画したマニアックな旅番組でもあるが、時に観光の参考になる情報も満載だ。そして毎回その深い知識から番組内で投げかけられる質問などにも的確に答えられてしまうタモリの博識さ、頭の良さを痛感させられ、益々尊敬の念を抱いてしまう。ガツガツ進行しないその緩さもまた絶妙でいいし、興味のある話になるとがぜん活き活きとして盛り上がってしまうところなども可愛いのだ。
『ブラタモリ』は、タモリのアシスタントに就任するNHKの歴代アナウンサーの出世コースとも言われ、桑子アナや、近江アナ、林田アナなど、『ブラタモリ』から人気に火が付くことも多かった。
『タモリ倶楽部』は実にくだらないテーマを多く取り上げており、サブカルにも程があると思うことも多いが(笑)、逆にここまで振り切ったマニアックな番組も他にないこともあり、長年ファンに愛されていると思う。勉強になる内容もたまにあるが、あまりのくだらなさに爆笑してしまうことの方がよっぽど多い(笑)。でもそれが一番面白いのだ。タモリもそれを実に活き活きと楽しみながら、“素”の状態で臨んでいるような気がするので、タモリの人柄が垣間見れて面白いのだ。
タモリも既に77歳。BIG 3のビートたけし(75歳)とはほぼ同世代、明石家さんま(67歳)の10歳上だ。かなり高齢者の域に入り始めているが、これからも元気に『ブラタモリ』や『タモリ倶楽部』などの番組を、まだまだ頑張って続けて欲しいものである。そして父の分も長生きして貰いたいと勝手に思いながら毎回見ている。
