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マイルス・デイヴィスの帝王学が堪能できる名盤、『Cookin’』

先日、マイルス・デイヴィスのアルバムの中でも人気が高い、1957年リリースの『Cookin’』というアルバムを180g新譜レコード盤で購入したので紹介したい。まずマイルスのアルバムの中でもジャケットのイラストがかなり秀逸で、トランペットの指の動きのアップを描いたシンプルなイラストはアート作品としても全体の構図やバランスが素晴らしく、思わずジャケ買いしたくなるようなアルバムである。

前回、マイルス・デイヴィスの『Steamin’』というアルバムを取り上げた際に触れたが、『マラソンセッション』と呼ばれる有名な4枚のマイルス・デイヴィスアルバム群が存在する。それは『Cookin’』、『Relaxin’』、『Workin’』、『Steamin’』という、”Ing 4部作”とも呼ばれているアルバムのことを指すものだ。この4枚は2回に分けて行われたマイルス・デイヴィスのセッションを録音したアルバムたち。

マイルス・デイヴィスクインテットの演奏メンバーは、マイルス・デイヴィス(トランペット)、ジョン・コルトレーン(テナーサックス)、レッド・ガーランド(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラムス)という、何とも素晴らしい編成だ。

1956年の5月に1回目のセッションが行われ、同年の10月に2回目のセッションが行われた。そして僅か5か月の違いながら、2回目のセッションの方が出来映えがいいとされており、特にこの時期成長が目覚ましかったジョン・コルトレーンの演奏が素晴らしく上達したと言われる。そしてこの4枚のアルバムの内、一番最初にリリースされたのがこの『Cookin’』。下記5曲が収録されているが、この5曲は全て2回目のセッションとなる10月26日に録音されたもの。それゆえ、全て2回目のセッションからということもあり、4枚の中では一番の傑作と言われているのだ。

  • My Funny Valentine
  • Blues By Five
  • Airegin
  • Tune Up
  • When Lights Are Low

正直、僕のような素人だと、1回目と2回目セッションにおけるジョン・コルトレーンの演奏の違いなどはっきりとはわからない。しかし、確かに『Cookin’』というアルバム自体は、全く無駄や隙の無い、見事なアルバムであるように聴こえる。『My Funny Valentine』はマイルスの曲の中でも有名であり、何ともスウィートなジャズの定番である。『Blues By Five』はその名の通り、とてもファンキーなブルースナンバー。そして僕がアルバムの中で一番好きなのが、『Airegin』である。スピード感のある熱いジャズが繰り広げられ、パッションのある見事なマイルスのトランペットに、とてもクールなポール・チェンバースのベースが統率感のあるリズムを刻んでいくのが何とも心地いい。そしてこの心地良さは、『Tune Up』に続いていく。最後は『When Lights Are Low』ではまたスローでオシャレなナンバーでアルバムは締めくくられるが、この曲もジャズの教科書のような何とも心地良いサウンドである。

トランペットとピアノ、そしてベースやサックス、ドラムスとの相性や間合い、ソロの度合いも素晴らしく、決してやり過ぎてもなく、また物足りない感じでもない。何とも絶妙な演奏なのだ。甘い『My Funny Valentine』でスタートするアルバムだが、実は総じて熱く情熱に満ちたトランペットが何ともカッコいいアルバムなのである。これぞマイルスと呼びたくなるような見事なハード・バップの傑作である。

『Cookin’』がマラソン・セッションの中で一番の傑作だというのも理解出来たような気がするし、マイルスの全アルバムの中でもこの『Cookin’』をお気に入りの1枚に挙げる人が多いのも理解出来たような気がした。

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