かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

根津-上野を苔散歩

2010-10-30 10:30:28 | 東京コケスポット



あっという間に気温がぐんぐん下がり、
東京では昨年より1週間早く木枯らし1号が吹いたとか。

おちおちしていると秋のコケレポートを書き損ねそうなので、
駆け足気味に9月・10月のコケレポートを。



9月末、コケ友さんと共に4人で根津-上野の苔散歩へ。
社寺仏閣が多いこのエリアでやはり期待できるのはホンモンジゴケ。

というわけで、根津神社から上野・東照宮、忍池の弁天堂を巡る。



まずは根津神社。神社や寺は街なかのように手を加えられることが少ないので、
境内はコケスポットの宝庫。見つけてはちょっとつまみ、ルーペで観察する私たち。


  
▲大木には何種類ものコケがついている。時間を忘れてへばりついていられる。



  
▲水路や、門の屋根の下などもコケポスポット。



  
▲人の通りの少ない敷地のはしっこなんかは、もうゼニゴケ、ジャゴケでいっぱい。
 横に這い全体が丸い形になって、パッチワークのよう。




▲アップで見てみると、先端が歌うアヒルちゃんみたい!? ゼニゴケの一種と思われる。



そして、ついにきましたホンモンジゴケ。



▲触り心地は中の下。まだ若造と思われる。



このコケを見つけるポイントは、「下も見たら、上も見よう」ということ。

ホンモンジゴケはなぜだか銅を好むコケで、
銅ぶきの屋根から流れる雨水などをたよりに生える。

なので、寺や神社の建物の脇にホンモンジゴケかな?と思うコケを見つけたら、
その上を見て銅製のものがあれば、そうである可能性は高い。

名前の由来もこのコケが最初に見つかったのが東京・池上本聞寺だからなのだそう。



途中、コケ友Nさんオススメの秘密の花園ならぬ、ホンモンジゴケの園へ。
ふかふかのマット状になっていて、手で押すと、えも言われぬ気持ちよさ。





▲濃い緑色が美しい。触り心地は上の上!ここまでふかふかになるには、
 長い年月がかかったんだろうなぁと思うと、感動もひとしお!



ついで、東照宮でもホンモンジゴケを発見。


  

▲銅製の灯籠のあしもとに、ミント色の地衣類と共に生えるホンモンジゴケ。





お昼は根津の讃岐うどん屋「根の津」へ。おいしい釜揚げうどんをいただいて一休み。

田中美穂植物店コーヒーショップふたたび。

2010-10-28 12:17:01 | コケをめぐる旅



10月中旬に神戸へ取材があったので、その帰りに京都へ立ち寄り、
ずっと気になっていた田中美穂植物店コーヒーショップへ。


7月に都内で期間限定ショップがオープンした際に、
自分用と友人へのプレゼント用にいくつかシダを購入したのだが、
その後、数ヵ月間育てているうちにいくつかの壁にぶつかり、
ずっと田中美穂さんにそのことをお尋ねしたい思っていたのだった。


シダはコケの次くらいに気になる植物ながら、
育てることについては経験がないため右も左もわからぬ私。

しばらくしたらマメヅタの葉がすべて落ちてしまったことと、
ビロードシダの葉の成長が一つの鉢の中でムラがあること、
もしかしたらどちらも大した疑問ではないのかもしれないけど、
どう対処してよいかわからない。


さらにプレゼントした友人からも、

「シダが元気すぎて、鉢から飛び出そう。植え替えた方がいいのか」

との質問があり(私からしてみたらうらやましい悩みだ…)、
ちょうど神戸行きのタイミングも重なって、
「これはもう京都へ行って直接質問したい!」という衝動に駆られたのだ。


http://blog.goo.ne.jp/bird0707/e/adc09bdd3953adb163a52358e679336c
▲2010.7.23のブログ『田中美穂植物店コーヒーショップ』



当日、とくに前もって連絡もせずお店に伺うと、
田中さんはお店の前でちょうどカゴに入った
コケにホースで水をまいている最中だった。

田中さんはお忙しいにもかかわらず、
コケに水をやる手を止めて、
長々とした私の質問に丁寧に答えてくださった。

そのうえ、店内が私の興味を引くステキなものにあふれていたため、
陳列されている品々について質問をし、
さらに調子に乗ってコケトークとシダトークを少々。






田中さんは気さくなお人柄で「ほら、このシダの裏、こんなに胞子があるんですよ!」
と珍しいシダ類を見せてくださったり、最近お店に招き入れられたという
スナゴケを見せてくださったり、初対面にもかかわらず、
リラックスムードで楽しいお話を聞かせてくださった。



▲葉先が丸くて猫の肉球みたいな猫足シノブ。



ちなみに岡山には同姓同名で、古本屋・蟲文庫を営む田中美穂さんがいらっしゃる。
この方はコケにお詳しく、著書『苔とあるく』は私のバイブルでもある。

昨年、ご縁があってお店に伺ったときにもやはり初対面にもかかわらず
大変親切にしてくださり、お世話になったことを思い出す。


岡山に「コケの田中美穂さん」、京都に「シダの田中美穂さん」あり。

シダの田中美穂さんは、コケの田中美穂さんのことをご存じだったが、
まだお会いしたことはないとのこと。

「お二人が出会ったら、きっと盛り上がりそうだなぁ」なんて
勝手なことを帰りの新幹線の中で思いながら、帰京したのだった。



▲お店のロゴマークにもなっているゼニゴケの看板。お店の入り口にて。


●田中美穂植物店コーヒーショップ
http://d.hatena.ne.jp/kafekosen/


こびとへの夢と愛情がつまった『こびと大百科』

2010-10-23 23:42:55 | コケの本棚
毎日少しずつ時間をかけて味わう文学本も好きだが、
短時間でさらさらっと読める本も大好きだ。

最近、コケ写真の整理が追いつかず、
なかなかブログの更新ができていないので、
ここらで秋の夜更かし、読書案内でも。

今夜紹介するのは、ページをくるのが楽しい〝さらさら本〟。




▲『こびと大百科』(なばたとしたか著、長崎出版)



こんな経験はありませんか?

・犬がなんでもないのに吠える

・部屋の埃がやたらとたまる

・目覚まし時計が鳴らない

・洗濯物が落ちている



日常の中によくある
何気ないけどちょっと不思議なこと。
じつはすべてこびとの仕業だった!

人間界で見られるこびとの生態を解明した衝撃のこびと図鑑。


「こびと」というと私の中では人間の姿を小型化した
いわゆるジブリの『アリエッティ』のイメージだったのだが、
この本に出てくるこびとはすべて全身タイツのようなものを着ていて
なかなかにキモイ。そしてフリーダム。


もちろんすべて作者の想像上のお話なのであるが、
「野原や畑のこびと」「水辺のこびと」「人の近くに住むこびと」など、
フィールド別のこびと解説がおもしろく、読んでいくうちに、
本当にこびとがいそうな気になってしまう。

また題名の上には「びっくり観察フィールドガイド」とあり、
具体的な小人観察のススメも説いているので実用的。


人間たちが気づいていないだけで、
一生懸命、毎日を生き抜くこびとたち。
そのあたりがコケと通じてほほえましい。


同じシリーズで絵本やDVDも出ている。

コケや小さな生き物に興味がある方、
ユーモアを解する方、子どもなどにおすすめ。


ちなみに夫は「なんでそんなアヤシイ本を読んでいるんだ」と首をひねっていたが、
私はすでに家の中にイエコビトがひそんでいないか、ときどき気にしたりしている。

コケの写真コンテスト

2010-10-21 07:06:38 | コケをめぐる旅
少し前の話になるのだけど。

8月に日本蘚苔類学会主催の
「日本蘚苔類学会第39回山口大会」において、
コケの写真コンテストが開かれた。



   ※日本蘚苔類学会  
   研究者じゃなくても、コケ愛好家なら誰でも入会OK!という懐の深い会。
   毎年1回大会が日本のどこかで開かれていて、コケについての研究発表、
   情報交換、野外観察会などを行い親睦を深めている。今年は山口で開催。



一応、会員である私は大会自体には参加できなかったのだが、
撮りためてきたコケ写真の中からお気に入りを応募。


後日、学会のホームページに応募作品が掲載されていたので、
担当者さんに許可を得てここにリンクを貼っておく。

http://bryosoc.org/index/component/content/article/11/31-contest.html


不思議でおもしろい写真ばかりなので、ぜひぜひ見てみてほしい。



とりわけ部門①の「お地蔵様」は、
コケのことを知らない人でも
思わずクスリと笑ってしまうんじゃないだろうか。


明らかにコケ髪が生えてるお地蔵さま。
よくぞ見つけたな~。

金賞受賞もうなずけるし、
このユーモアを解する学会側もすばらしい。

今が旬、秋のギンゴケ

2010-10-11 13:40:54 | 近所のコケ

▲長野県のとある道端にて。



「秋が旬」といえばヒカリモノの秋刀魚!
でもヒカリモノで今が旬といえば、
こちらも負けてはいない。

コケ界の燻し銀「ギンゴケ」である。


ギンゴケはその名の通り銀緑色っぽく、
乾燥するとより銀色っぽさを増す。

そしてこの銀さん、
毎年春と秋に胞子体をつけるので、
今がまさに見ごろなのだ!






このブログでも何度も書いているが、
胞子体は胞子の袋「(さく)」がついた植物体の一部。
コケの種類によって胞子体が伸びてくる時季はちがう。

まだコケの生態が明らかでなかったその昔、
人々はこの胞子体をコケの花だと思っていたという。

いまも俳句で「苔の花」は季語となっている。



▲若いは今はまだ葉緑体を含み緑色だが、熟すと黄金色~茶色に色づく。


先月末に長野県の上田市へ行く機会があり、
アスファルトの道端で出会った銀さんのコケの花。
朝露にぬれて本当に輝かんばかりの美しさである。


ギンゴケは都会の道端でも、
もっとも出会う確立が高いコケの一つ。


ぜひ多くの人に、この銀さんの晴れ姿を見てもらいたい。




▲うかうかしていたら、気づかないかも!? この小さな地上の宝石を見落とさぬよう、
 お散歩の際は、ぜひ気を引きしめて歩いてみてください!



コケの肖像画

2010-10-04 10:06:15 | 文系女子のコケ目線

▲ベルンの古本屋さんのショーウィンドー。動植物を描いた古い細密画が並ぶ。



またまたのご無沙汰である。

涼しくなってコケも元気になってきたので
こちらも待ってました!とばかりに
出歩いているうちにもう10月。

「1年ってホンマ早い!」と
毎年思い始める時期でもある。



最近、コケにまつわる文化的なことをいろいろと調べているのだが、
コケってやっぱりあらゆる意味で地味な存在のようで、
サクラやバラ、キノコなど多くの植物が絵やオブジェ、
キャラクターなどのアート的なモチーフとなっているのに比べて
コケは取り上げられている例がとっても少ない。

せいぜいカメラの被写体くらいじゃないだろうか。



それでも時代をさかのぼっていくと、
大航海時代以降、世界中を旅したヨーロッパ人たちは、
行った先々で見た異国の動植物を精密なスケッチで
母国に紹介するようになる。

これが18、19世紀になると
ボタニカル・アート(植物の細密画)へ発展し、
その中にはどうやらコケもあった模様。

というのも、スイスの首都ベルンの古本屋さんで手に入れた
次のコケの絵は、店主によると1860年代くらいの作品であるという
(もちろん、オリジナルじゃなくてコピーですが)。


これはコケ好きとしては、
コケが主役として描かれている点において、
いわば貴重な「コケの肖像画」。

値段も15スイスフランとそれほど高くなかったので、迷わず購入。
折り曲がらないように荷物のパッキングに苦労しながら、
今回、持ち帰ったというわけである。



▲こちらが「コケの肖像画」。複数のコケがピックアップされている。



絵のタイトルは「Laub und Lebermoole」とある。

調べてみると「Laub」はドイツ語で「葉」、
でも「Lebermoole」は意味がわからず・・・。


しかし、描かれているのはまぎれもなくコケだろう。

残念ながら種類の表記はないけれど、土の上・石・倒木・水辺と、
コケが種類によって生える場所が違うことをよく表した絵だと思う。



▲一部を拡大。上のは葉の形との出方からすると
 チョウチンゴケの一種に見える。下はゼニゴケかな?





▲石の上に生えているという点ではちょっと「?」だが、
 葉の色形、ゴルフクラブのように首の折れたの形からすると、
 ウマスギゴケとお見受けする。下にはカタツムリ。この遊び心が心ニクイ。




おまけ。





もう1枚持って帰ってきたこちらは地衣類の絵。

この絵は裏面にドイツ語で種類の表記があり、
サルオガセだとか、ヒロツメゴケモドキだとかの名前が書かれてあった。




今回でようやくスイスレポートも終わり。

書く間がちょくちょくあいてしまったせいか、
自分で言うのもなんだが、長かった!


次回からまた日本のコケと
それにまつわるステキな出会いについて
アツく語ります!