ホウオウゴケの一種。滝の水気を浴びて、じゅうぶんに潤っている。6月の赤目四十八滝にて。
お待たせしました!久々のコケレポート!
(ていうか、自分が一番このレポートをまとめたくてウズウズしていた)
今回出版させていただいた「コケはともだち」の執筆を終え、
〝自分、執筆おつかれさま旅行!〟として、
6月中旬、コケをめぐる旅、その名も「コケトリップ」へ行ってきた。
今回のルートは三重から和歌山に入り、
最後に実家のある神戸へ。
たった3日の旅だったが、
コケと出会い、コケに癒され、
とても充実した旅であった。
まずは、以前一度訪れて、必ずや再訪したい!と
恋焦がれていた赤目四十八滝(三重県)へ。
ここはその昔、不動明王が赤い目の牛に乗って
現れたという伝説のある場所で、
見ごたえのある大きな滝が何本も流れる渓谷である。
▲四十八滝との名の通り、美しい滝がそこかしこに。川にはサンショウウオも住むといわれている。
ちなみに「四十八」とは「たくさん」の意味だそうで、実際は48以上の滝があるそう。
渓谷は遊歩道が通っている約4キロの道のりのうち、
最初の200m強より奥は、明治の中ごろまで未開の地であった。
いまも人の手があまり加えられていないせいか、
巨木が多いのはもちろん、地面や岩場は一面コケだらけ。
まさにコケの森といっても過言ではないくらいである。
平日だったせいか人けも少なく、
滝を落ちる水の音以外は何も聞こえない。
しかしじっくりと耳をすませばコケたちの静かな息づかいが
聞こえてきそうな、どこか神秘的な雰囲気が辺りには漂う。
じっとしばらくその場にたたずんでいると、
ルーペを使わずとも、まるで自分がコケの森に迷い込んだような気になり、
ややもするとその緑に飲み込まれてしまうんじゃないかと
ひるんでしまいそうになるほど、静かな迫力で満ちている。
▲コケだらけの石碑。
▲川沿いの遊歩道。岩壁はまさにコケの壁!
▲コケの森にはつきもの、コケからにょきっと伸び出てきたキノコ。
さらにここはコケの量もさることながら種類が非常に豊富。
ここのコケを調べれば、かなり充実したコケ図鑑が
あっという間に完成するのではないかと思えるほどである。
歩きながら前回訪れたときに出会ったコケが
お変わりなく元気なのを確認しつつ、
新たな面々との嬉しい出会いも次から次へ。
なかでもとりわけテンションが上がったのが、これ。
▲「オオカサゴケ」(おそらく)。茎のてっぺんに葉が集まってつき、傘状に見える。
見た目が大変美しく、そしてコケとしてははかなり大型で、
手元の図鑑を読むと「直立茎の長さ6~8cm」とある。
コケと知らなければ、草と勘違いする人も多いだろう。
ちなみに今回訪れて新たに気づいたこと。
この渓谷は入り口を一歩踏み入ったときから、
なんともいえない、爽やかな香りで包まれている。
本当に何とも上手い形容詞が見つからないのだが、
ハーブのようなスーッと清涼感のある香りというか・・・。
一般的にコケはおおむね味も香りも良くないといわれているが、
ここで感じた香り、私はきらいじゃない。
ただ、これはたぶんこれはコケだけの香りではなく、
コケをよりどころに生えるシダ、キノコ、大木たち、そして清らかな水、
それぞれの香りが合わさってできた、独特の芳香なのかもしれない。
●おまけ
▲(左上から)近鉄電車。サンショウウオがモチーフの水場。
倒木に生えたキノコ!? 川辺の岩の上で一休み中のカゲロウ。