かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

子どものコケ目(め)、大人のコケ目(め)

2020-07-06 16:05:47 | 関西コケスポット




新型コロナウイルスとの付き合いがまだまだ長引きそうな今日この頃。
雨も多く、暑さも増してきましたが、皆さまお元気ですか?

―――――

6月27日、京都で今年初めてのコケ観察会の講師を務めさせていただいた。
いつもなら3月〜5月に依頼を受けてあちこちでコケ観察会・コケ講座させてもらうが、今年はこれが初仕事。

今回は15人までの少人数制、ソーシャルディスタンスを保つため、屋内でのレクチャーはなし。
野外での解説・観察中も皆さんにはマスクをつけていただき、お互いに距離を取りながら行うことに。

さらにフィールドで紹介するのは大きな群落に育っている種類に絞り、
群落には数か所ずつ種名を書いた立て札を立てておいて、
めいめいにコケをつまんで離れて観察するスタイルにした。

開催までには主催の京都科学読み物研究会のメンバーの皆さんと
何度も相談を重ねながら、いまできる限りの工夫を行ったつもりだ。


当日の参加者は、幼稚園の年中さんから70代(くらいとお見受け)までとじつに幅広い年代の老若男女。
ほとんどの皆さんがコケをじっくり観察するという行為が初めてのようだったが、熱心な方ばかりでびっくり。

とくに幼稚園児、小学生の男の子たちは、コケに心釘付け!というふうで、
数メートル進むごとに「これ何ゴケですか?」という質問はもちろんのこと、

「日本だけにいるコケってなんですか?」

「(原糸体を見て)これもコケでしょ?めちゃくちゃ小さいコケだよねぇ?」

「『コケ』って名前がつかないコケもいるの?」

「世界一大きなコケってどれくらい大きいの?」

などなど、私の背中に次々と質問をぶつけてくる。

そして振り返って彼らの顔を見ると、その眼のキラキラに今度は私の心が釘付けに。


また、そんな子供たちから刺激を受けてか、大人からも、

「新種のコケってこれからも見つかりますか?」

「(新芽を見て)これは若いジャゴケですよね?」

「(ジャゴケ雌株の生殖器官を見て)この膨らみは何でしょう?」

「食べられるコケはありますか?」

「ウマスギゴケが茶色く倒れているのは枯れているからですか?」

など、これまたたくさん質問を頂いた。
よしよし、大人のコケ目もなかなかいい感じじゃないか(笑)。





「そうですね~、それは……」と努めて平静に答えつつも、
内心はかなりエキサイティングしていた私。

誰かと一緒にコケを見ること、話をすることってやっぱり面白い。
サビついていた脳細胞が久々に活性化したような思いがした京都での一日だった。
この日の観察会をきっかけに、参加者の皆さんのコケ目がこれからも持続するといいな。

京都科学読み物研究会の皆さん、参加者の皆さん、そして快くコケ観察のために場を提供してくださった法然院さん、
法然院森のセンターさん、あの日は本当にありがとうございました。


ちなみに・・・
当日の質問のなかで、一つだけ答えられなかったものがあった。
これも小学生の男の子からの質問。
日本で帰化した欧州原産のコケ(ミカヅキゼニゴケ)の話をした際のことだ。

「じゃあ、外国にも、日本から渡ってきて帰化したコケってあるんですか?」

え? 

本当だ、そんなコケってあるんですかね??

いやー、この変化球にはこちらもすっかりお手上げ。
そして言われてみればとても気になる。

たしかに種子植物には、観賞用として日本から欧米にわたったという
クズやスイカズラが帰化に成功している(成功し過ぎて現地では厄介者扱いされているらしいが)。

たとえば苔庭・盆栽には欠かせないコケたちの中に、
園芸文化とともに欧米に居ついたものはいないだろうか。

想像は広がるばかりだ。

海外で帰化した日本のコケ、もしご存じの方がいらしたらぜひご教示くださいませ。


▲こちらはヨーロッパからきて日本で帰化に成功したミカヅキゼニゴケ


●おまけ




▲当日は観察対象としなかったが、法然院の境内の土上にはウキゴケの仲間も!
 許可を頂き少し採取できたので、また顕微鏡で調べたい





「POPなきのこ展&咲かない植物 こけ展」レポ

2020-02-06 11:42:00 | 関西コケスポット




TwitterやInstagramで日々の短信がすんでしまうのは、ブログを持つ者にとって果たして良いのか悪いのか。1月もなかなかブログの更新ができない。
今年の目標の一つとして掲げた「1か月に2回はブログ更新」は早くも守れずじまい。いやはや~~。

振り返れば、1月はお正月、仕事で撮影、親戚の結婚式が2件、咲くやこの花館での「咲かない植物 こけ展」の設営とその1週間後にコケトークイベント登壇、
さらにコケの勉強のため岡山で開かれた苔類講習会に参加、家族の誕生日、そして原稿の締め切りが4件ほど、
おまけにテレビっ子恒例の1月スタートの〝ドラマのチェック〟が加わり、なかなか小忙しい1か月なのであった。

そんな中から、もちろんこのブログに書き残しておきたいのは、きのこ展&こけ展のこと。

とはいえ、設営の日もトークイベント当日も何かと持ち込む荷物が多くて、カメラを持っていくことを失念。
新しい一眼レフは画質はもちろん多機能でありがたい反面、前の機種より少し重くなったせいか持ち出すのがやや億劫になっている。
そんなわけでスマホで展示風景をちゃちゃちゃっと撮ったものしかなく、ブレていたり、構図が悪かったりで恐縮なのだがレポートしていきたいと思う。





大阪市鶴見区にある植物園「咲くやこの花」は、平成2年に開催されたEXPO’90「国際花と緑の博覧会」(花博)の会場跡地である花博記念公園鶴見緑地内にある。
総ガラス張りの建物は花博のメインパビリオンとして建てられ、花博の翌年である91年から大阪市営の植物園となったという。
来場者にとくに人気があるのは温室で、温室内では熱帯性の植物が一年中見られるほか、季節の花も含めて常時300種類以上の花を楽しめる。

そんな植物園において、少し毛色違いなキノコとコケ。
両者ともかつては花が咲かないことから、顕花植物(花が咲く植物)の対語として、
〝隠花植物(花も咲かせられない下等な植物)〟とくくられたものたちであり、
ましてやキノコに至っては現在の分類学上では植物でもない(キノコは菌類に属します)。

この場所で果たして、キノコとコケに集客があるのか?!
じつは開催前から私はひそかに心配していたのである。



▲エントランスにはキノコのポスターとオブジェが。フォトスポットになっていた


1/5-1/26日というおよそ3週間の会期の中で、コケトークイベントが行われたのは1月13日(月祝)のこと。
ドキドキしながら中に入ってみると、園内を一目見て、こちらの心配は杞憂だったことがすぐにわかった。
キノコブースは多くの人でにぎわい、トークイベント用に用意された観覧席もかなり埋まっている。
「え、こんなに人が来るんだ?!」と思った瞬間、いままでの余計な心配が一気に緊張感へと変わる。






▲トークイベント直前。こちらのキノコ風景の垂れ幕がバックにあしらわれた舞台で、オカモス関西メンバー6人でコケの話をさせていただきました


しかし、私はこのイベントの司会役だったので、いざ始まってみれば一人でしゃべる講演会などに比べるとさほどの緊張はせず。登壇者が多いってありがたい。
コケについて画像を見ながらあれやこれやと話したが、最後は近年問題になっているコケの乱獲について触れ、5人それぞれのご意見が聴けたのがとてもよかった。

こうしてイベントは無事盛会に終わり、肩の荷もおりたところで、
今度は一来場者として会場を歩き回ることにする。

まずはキノコブースへ。

所狭しと並べられた研究者やアマチュアたちの大量のキノコ標本に始まり、巨大なキノコ模型あり、キノコ写真パネルあり、
さらには貴重なキノコの化石や弥生時代のキノコ型土製品、かぶればキノコになれるキノコ帽、キノコ小物、キノコ食、キノコグッズがつくれるワークショップ、
キノコモチーフが施された昔の着物や和の小物などのアンティークグッズ等々の多彩な展示に、改めてキノコ文化の幅広さに驚愕。そしてそれらを楽しむ老若男女の数にも!

この日ではなかったが、会期の終盤にはきのこモチーフやきのこ柄、きのこをイメージしたファッションなどで参加する「きのこのファッションショー」なるイベントが開催されたそうだし、
こうして見ると、きのこファンの層の厚さ、楽しみ方の厚さは、おそらく他の植物愛好家と比べても群を抜いているのではないだろうか。

いろんな意味で〝激アツ〟なキノコブースなのだった。


  

 



じつは去年あたりから冬虫夏草にも興味が出てきたもので、数々の展示物の中でも冬虫夏草の標本や模型にはとくに目が行ってしまう。
なかでも菌類学者で冬虫夏草の大家であられた清水大典さんの標本細密画がものすごく心惹かれた。

会場にはキノコグッズやキノコに関する書籍を普段はネット販売している佐野書さんが出展されていて、
清水さんの標本画がバラで売られていたので、何枚か購入した。







さてさて、キノコブースも堪能したので、お次はコケブースへ。
キノコ好きたちの激アツな胞子活動ぶりには圧倒されてしまうが、
コケ好きたちの胞子活動もなかなか趣向が凝らされていたと思う。
 
   ※胞子活動:キノコやコケなど胞子で増えるものを愛する人々が、周囲にそれらの魅力を発信する活動のこと。




▲コケブースの入り口。きのこリウム作家・樋口和智さんによる、コケとキノコのコラボ「きのこリウム」の作品が並ぶ



  

 


こうして見ると、キノコはグッズや標本が多いけど、生体を見せられるのはきのこリウムくらいである。
一方で、コケは標本はショボい(といったらコケに悪いが、たいがい小さくて茶色いので見栄えがしない)が、
テラリウムをはじめ、生体を見せられるのが展示の大きな魅力と言える。
 

そんななか、オカモス関西のボスMさんと私が自宅のコケグッズコレクションを持ち寄って作った展示がこちら。


 





▲Mさんがグッズの内容を一覧にしたマップを作ってくれていた。すばらしい!


内容的には、コケにまつわる洋書、海外の博物画や切手、リース、カレンダー、さらに日本で手に入るコケグッズ、Mさん直筆の貴重なコケノート等々。
設営スペースが思いのほか広くて、飾る時にはどうなるかと思われたが、これはこれでなかなかまとまったように思う。
Mさん、さらに設営・撤収を手伝ってくださったSさん、その節は大変お世話になりました。


そしてコケブースのなかで、長蛇の列ができるほど人気だったのがコレ。



▲手前が写真を撮る人、奥が撮られる人


何かと言うとじつはこれ、「きのこリウム」を手前に置いて、遠近法を利用して、
きのこリウムの森の中に入ったように写真が撮れるフォトスポットなのです。
面白写真が撮れるイタリアの観光名所〝ピサの斜塔〟のきのこリウムバージョンというわけ。



▲お恥ずかしながら、これには私もテンションが上がってしまい、一枚記念に撮ってもらいました



そんなこんなで1月26日に無事に終了した「POPなきのこ展」&「咲かない植物 こけ展」。

今回は私は参加が叶わなかったが、会期中には名だたるキノコ研究者、粘菌研究者、愛好家の方々による講習会やトークイベントがあったり、
コケテラリウムやきのこリウムのワークショップがあったり、そして先述した一般のキノコ好きたちによるファッションショーがあったりと、本当に内容盛りだくさんだった。
3週間の中でこんなにイベントが企画される植物園って他にないのでは?!
これらすべてを企画し、運営された、咲くやこの花館のOさん、Hさんをはじめとするスタッフの皆様の力量にはただただ感服。すばらしい企画展をありがとうございました。

なお、POPなきのこ展は今年で2回目、こけ展は初回だったのだが、会期中の来場者が約2万人に上り、
いまのところ2019年度の企画展でいちばんの入場者数だったとのこと。
昨年はキノコ単体の展示で来場者が1万3500人強だったらしいので、
入場者数の1/3くらいはコケも集客力になったかもしれない。

いや、もともとキノコに興味がある人はコケに、コケに興味がある人はキノコにもと、
互いに興味があることがほとんどなので(ただどちらにも詳しくなるには〝時間が足りない〟と皆口をそろえて言うという・・・)、
両者がそろえば集客も相乗効果、もしもこれから回を重ねて開催され、この企画展のことが広く周知されていけば、もっともっと多くの人が訪れそうな気がする。
とにかくキノコとコケがタッグを組んだら最強だなということがよくわかったのでした。





テラリウムの進化系!?「KOBE キノコ・コケ・テラリウム展」を見学(その2)

2018-02-05 17:53:01 | 関西コケスポット

まずはお知らせです。

今週2月7日(水)21時30分~から放送の
稲垣吾郎さんがパーソナリティを務める
ラジオ番組『編集長 稲垣吾郎』(文化放送)に出演させていただきます。

そう、あの稲垣吾郎さんです。

たびたびこのブログでも言っていますが、幼少の頃からテレビっ子でドラマやバラエティが大好きなワタクシ、
まさか自分の人生で稲垣吾郎さんとおしゃべりできる機会が巡ってくるなんて思いもかけないことで、依頼をいただいた時はたまげました。

コケの魅力や、おすすめコケスポットのほか、稲垣さんのコケにまつわる思い出話なども出てきますので、ぜひお聴き逃しなく!

 ※地域によって放送日時が違うようです。また都道府県によって放送されていないエリアもありますので、
  詳しくは同番組のHPをご確認くださいませ。radikoでも聴けます。



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では、前回の記事の続き、「KOBE キノコ・コケ・テラリウム展」のもう一つの主役「きのこリウム」のレポートをば。


今回のテラリウム展が展示会デビューだったという「きのこリウム」作家の樋口和智さんは、
もともとはアクアリウムが趣味で、キノコが主役の「きのこリウム」は3年ほど前から始められたのだという。











これらのテラリウム、もちろん野外に生えているキノコを植え込んでいるわけではない。
巷で販売されている食用キノコ栽培キットの菌床や、菌を植え付けた原木をガラス容器の中に植え込み、
温度・湿度を徹底管理し、最終的にキノコを生やして完成させている。

樋口さんがキノコをテラリウムで育てて鑑賞しようと思いついた当時、
同じようなことをしている人が他におらず、ここまでの道のりはほとんど独学。
失敗と挑戦を繰り返しながら、現在のようなスタイルに行きついた。






▲樋口さんが育てられたエノキ。コケはシッポゴケの仲間かな?!


「きのこリウム」の面白さは難しさと紙一重だ。

野外でキノコを観察したことがある人はご存じかと思うが、キノコというのは往々にして神出鬼没。
発生時期がわかりにくく、しかも寿命も短くて、数日ほどで枯れてしまうものも多い(キノコの種類にもよりますが)。

今回、会期の2日間に合わせて、キノコがちょうど傘が開いた状態のものを展示できるよう樋口さんは1年近く前から準備を始めたそうで、
ご自宅には選抜メンバーに選ばれなかった補欠組のテラリウムが展示数と同じくらいあり、
さらにキノコが1つも出てこないような万が一の事態に備えて、4Kモニターで映像を流す準備もされたのだそうだ。



▲万一のために備えて作ったという、これまでの作品をまとめたスライドショー



▲一つの水槽にキノコ、コケ、シダが競演。小さな隠花帝国がここに! 


キノコを上手に生やすための設備、それにかけてきた膨大な時間、聞けば聞くほど
樋口さん、かなりのご苦労をされてきたご様子。思わず、それは大変でしたねぇと労ったが

「キノコはなかなか思うようにいかないです。でも、だからこそ育て甲斐があるし、
 小さなキノコが出てきて大きくなっていく姿を見る時はものすごく嬉しいし、興奮します。
 きっと鑑賞している人よりも、僕の方が楽しんでいますよ」

と笑顔で返してくださったのが印象的だった。






▲ナメコ。スーパーのナメコに慣れ親しんでいる者としては驚きのビッグサイズ






▲こちらはヌメリスギタケ。個人的にはこれまで売られている所を見たことがないが、食用として栽培・市販されているキノコの一種だそうだ


見ているだけで、なんだろうこの心にじわじわとくる感じ。
よくもまぁこれだけ見事なキノコを育てられたものだという感心もあるのだが、それだけではない。

常緑のコケと違い、キノコというのは姿を現したと思ったらぐんぐん成長し、
柄が伸び、傘が開いて、胞子を撒ききったら、今度は途端に朽ちてしまう。
そういうはかない代物であるということを、私たちはなんとなくだが知っている。

現に同展示を主催された花と緑のまち推進センター・センター長のHさんによると、
会期1日目にはまだ傘をすぼめていたキノコが、2日目に見てみるとぐっと大きく傘が開いており、
作品そのものの雰囲気が全然違って驚いたとのこと。

万物は常に流動的で、生じたら滅する。

短いサイクルでキノコの発生から消滅までを作品として見せてくれる「きのこリウム」は私たちが普段は意識していない、
でもすべての生きものが共通して抱えているこの〝宿命〟をふと思い出させてくれるから、心にグッとくるのかもしれない。

見ているだけでそう感じるのだから、きっとゼロから育てている樋口さんの感動はひとしおだろう。






さて、最後にもう一つ。

今回、会期中に午前・午後2回にわたって特別企画としてコケテラリウムの講習会が行われた。
両日ともに事前予約でいっぱい、キャンセル待ちが出るほどの人気ぶりだったそうだ。

2日目に私が展示室を訪れた時に講師を担当されていたのは大阪にある「コケリウム」の岡村さんだった。



▲写真右上、センター長Hさんに紹介されているのが岡村さん


岡村さんはオカモス関西支部のメンバーでもあり、毎月開催されるコケサロンでもよく顔を合わせるメンバーのお一人だ。

  ※コケサロン:大阪にて月1で平日夜にコケに取りつかれたマジメな関西人が情報交換や同定のために集まる会のこと


私の知り合いのコケテラリウム作家さんは研究熱心な人が多いが岡村さんも同じくで、
先月のコケサロンでは、テラリウム作りでよく廃棄しがちな「仮根」を捨てずにきちんと育てれば、
またテラリウムに使えるレベルの植物体に再生するという実験結果をタマゴケを例にお話しくださった。
「だから仮根は捨てちゃダメです!」とのこと。
 
   ※仮根:コケが生育基物にしがみつくための根のようなもの。
       他の植物のように栄養を吸い上げる機能はほとんどないといわれている。

コケのテラリウムは、年々人気が高まっているのを園芸派じゃない私でさえもこういったイベントを訪れるたびに感じているが、
じつは原材料を調達する目的で一部の心無い業者らによる「乱獲」が横行していることもたびたび見聞きする。
そのたびにこれまで胸がきゅっと締め付けられるような思いをしてきたが、岡村さんのような販売者の存在には本当に心が救われる。

すべての自然が無限にあるわけではなく有限であり、もちろんコケもしかり。

そんなことをいまさら私が言わなくとも園芸でコケを扱っているプロの方はとうに感じておられるだろうが、
「コケは道端や庭のどこにでも生えている」というイメージもあるからか、意外と購買者側はそこまで想像していなかったりする。

有限だからこそ、一つ一つのテラリウムと長く付き合えるように、
生命のはかなさや尊さをより深く感じられるように、
ロスを減らし循環させて増やしていくことにも注力して・・・
最後にちょっとまじめな話になってしまったが、
今回のテラリウム展ではそのような新たな光が見えたような気がしたのだった。


テラリウムの進化系!?「KOBE キノコ・コケ・テラリウム展」を見学(その1)

2018-02-03 16:55:15 | 関西コケスポット

2018年が明けて、早いものでもう明日から立春。
今年はすっかり〝ブログ始め〟が遅れてしまった。

約10日間のドイツ旅行を終え、久々の長旅に疲れたのか年末年始はウイルス性胃腸炎で悶絶。
お節料理もあまり味わえず、なんだかなぁと思っていたところに、NHK大河ドラマ『西郷どん』がスタートしたのでとりあえず見る。

このドラマ、近年の大河ドラマには珍しく方言が多用され、台詞の中にやたらと「~もす」(~ます・~です)という薩摩弁が出てくる。
そのたびに脳内で「モス(moss)」と自動変換している自分がおり、ウイルス性胃腸炎は治っても
悲しいかな、こちらの病気はますます悪化しているなぁと自分に苦笑いの年初めなのであった。

でも前評判はいろいろ言われていたこのドラマ、いざ蓋を開けてみると
脚本も役者たちの演技も面白くて見応えがある。おすすめです。


さて、今年のコケ始めは撮影のため主に街中のコケを見て回ったりしたのだが(またおいおい告知します)、
屋内活動としては、先週の日曜日にちょっと変わったテラリウム展を見学しに行ってきた。



▲「KOBE キノコ・コケ・テラリウム展」1月27・28日開催@花と緑のまち推進センター(神戸市)


会場は神戸市・元町駅から徒歩15~20分ほど北上した所にある「花と緑のまち推進センター」(三宮駅近くからバスも出ている)。
日曜日のお昼過ぎに行ったのだが、こじんまりとした展示室に入った途端、目に飛び込んできたのはこの人の数!

今回、約50個のテラリウムが展示されていたそうだが、所狭しと並ぶテラリウム以上に、
見に来ている人の方が多いのではないかというくらいにぎわっていた。



▲展示室の壁に面してテラリウムが展示され、センターのテーブルには、両日にわたって行われたテラリウム作り講習会の道具一式の準備が。
 このあと午後の部の講座を受けにきた受講者たちでさらに展示室はぎゅうぎゅうになっていた


今回のテラリウム展は、「きのこリウム」(樋口和智さん)と「Mosslight-LED」(内野敦明さん)による、キノコとコケが主役のテラリウムの展示であった。

コケを使ったテラリウムはここ数年でどんどん人気が増しているのは、大方のコケ好きがご存じと思うが、
その中でも内野さんの「Mosslight-LED」のテラリウムは、ガラスポットの上にLED照明が装着されているのが大きな特徴である。

照明関係のお仕事を長く続けてこられ、オカモス関西のコケ観察会では常に照度計を持ち歩かれてコケ周りの光を計測している内野さん。
「実際に計測してみると、コケは人間がイメージしている以上に、生育には強い光を必要としているんですよ」という。
それで、コケに望ましい光をあてて生育できるLED照明付き容器にいきついたのだそうだ。



▲たしかに、実際に下から容器をのぞいてみると、長くは見つめていられないほどまぶしい


しかもLED照明は前面に熱が出ないので、ガラス瓶の中でコケが蒸れたり、焼けたりという心配もほとんどないという。

普段は〝コケは育てるよりフィールド観察派〟の私も、じつは自宅にコケのテラリウムが何体かある。
育て始めて数年経つが、「家の中のどこに置けばコケの生育ために正しいのか」が正直なところいまだわからない。
おそらくこれは徒長しているんだろうなぁ・・・と思いつつ、コケがなんとか緑色を保っているのをよいことに、
積極的な改革は行わず、一日を通して陽射しの変化が少ない北側の部屋で経過観察し、今日に至っているというありさまだ。

一方、それに引きかえ内野さんのテラリウムのコケはなんとイキイキしていること!
色も大きさも野外で見る同種のコケと遜色ないくらい、どの子もとても健康的。
眺めていると、思わずため息がもれる美しさだ。











元気にコケが長生きするため、容器内に一緒に入れた岩や古木も数年でコケが覆い尽くし、
気付けばがらっと景観が変わっていたりするのもまた楽しいのだそう。

他の陸上植物と違って根を持たず、土がなくても光と水があれば育つことができるというコケ。

現行のテラリウムの多くは、容器で水(湿度)の部分はカバーできているが、
光については、ただ光を透過するガラス製容器であるということだけでは、
コケはまだ心からは満たされていないのかもしれない。

 注)いや、じつは私のようなズボラな性格の人がマイナーで、ほとんどのテラリウム愛好家の皆さんは、
  もっとコケのために光の調節に日々心を配られているのかもしれませんが…。


いつも自分の身近で緑を見ていたい、暮らしに緑をとり込みたいと考えるのは、世の常。

そういった点では、LED照明付きのテラリウムは、住環境を選ばす、さらには持ち主の性格も選ばず(?)、
持続的に健康なコケと暮らせる新しい方法の一つなのかもしれない。





ちなみに唯一気になる電気代だが、LED照明の場合、1日8時間(コケの生育に必要な目安時間)の点灯で1年で540円ほどだそうだ。


長文になってしまったので続きは次回に。
次は、もう一つのメイン展示だった「キノコリウム」についてです。


 

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<私信> 昨年12/19にブログへメッセージをくださった、とき様へ
メッセージをくださり、ありがとうございます。嬉しかったです。
コケがお好きとのこと、お若いうちからコケと出会えることができたなんて、とても羨ましいです。
拙著も読んでくださりありがとうございます。またどちらかでお会いできる日を楽しみにしていますね。

※とき様のメールアドレスが見当たらなかったので、こちらに返信させていただきました。ご容赦を!m(__)m


【お知らせ】4/23(日) コケのお話会&ミニ観察会 「もっと知りたい コケの魅力」@陽春園植物場(兵庫県宝塚市)

2017-04-13 10:44:20 | 関西コケスポット


いよいよ本の出版が今週に迫り(アマゾンではどうやら今日からの模様)、日ごとに緊張感が増してきている今日この頃。
自分のことはいまだによくわからないが、どうも私は元来、何か動いていないと気持ちが落ち着かない性分なのらしい。
日々増してくる緊張感と比例するがごとく「あと著者ができる仕事といえば、宣伝活動のみ!それに邁進すべし!」という意気込みも静かにじわじわと。

監修者の秋山弘之さん(兵庫県立人と自然の博物館)をはじめ、
たくさんのコケ仲間、コケの有識者の方々のご協力があってこそできあがった今回のコケ図鑑。
コケに興味がある人にはきっとお役に立つ本だとかたく信じているので、
これからは、広くこの本の存在を知っていただけるよう、行けるところならどこへでも、本を持参して回り、
宣伝活動に勤しみたいと思います。どうぞよろしくお願いします。


そしてありがたいことに早速、そのような機会に恵まれたので、今日はそのお知らせをば。
今度は関西でコケのお話会&ミニ観察会をさせていただけることになりました。

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コケのお話会&ミニ観察会 「もっと知りたい コケの魅力」 (仮題)

●日時:4月23日(日)午後2時~3時(午後1時より整理券配布) 
●場所:陽春園植物場(兵庫県宝塚市) 
    ※阪急電鉄宝塚線「山本」駅下車、西へ徒歩約7分。※お車でのお越しもOK。駐車場完備
●講師:藤井久子
●定員:20~30人(コケを見るにはという一応の人数です。会場は大きいので、それ以上でも受け付け可) 
●参加費:無料
●持ち物:不要(ルーペや霧吹きがある方は持参)
●申し込み:不要(当日直接、陽春園へお越しください)



▲陽春園の外観。歩いて、または車でこられた際、この看板が目印です



▲陽春園の入口


園芸店でこのような会をさせてもらうのは初めてで、おそらくメインで集まるであろう園芸好きの方々にどのような話をすればと
お話をいただいた時はちょっと戸惑ったのだが、店主の野里さんいわく、園芸面から見たコケの話ではなく、
道端や山道で出会うコケの見方・楽しみ方を話してほしいとのことだったので、そのような話を初心者向けにさせていただこうと思っています。

でも座学だけだと個人的に面白くないので、野里さんにお願いしてせっかくの機会だし園芸店で見られるコケを見て回りたいと。
なので、座学の後に少しフィールドワークの時間も設けてもらいました(参加は希望者のみ)。
簡易ルーペを持っていくので、普段は人目が気になってなかなかできない園芸店の鉢植えに生えているコケを、
大手を振ってじっくりと皆さんと見て回れたらと思っています。

ちなみに先月末、下見に伺ったところ、このような春爛漫のコケたちがあちこちに。













最後のゼニゴケはとくに春とは関係ない風貌だが、むしられてもむしられても生えてくることで、
園芸関係者には「庭にはびこる邪魔者」としておなじみのコケ。
しかしここでも店員さんの目の届かぬ場所を見つけて、ちゃっかり陣取っていてさすがだなと。


そんなわけで、ご興味のある方はぜひお越しくださいませ。
当日を楽しみに、お待ちしております。


ちなみに。陽春園さんがある兵庫県宝塚市山本地区は、古くから植木の一大産地として知られ、
界隈は植物を生産している圃場や園芸・造園関係のお店がとても多いエリア。

そして陽春園さんはその中でも大きな敷地を有する園芸店で、店の中を見て回るだけでもとても楽しい。
幅広い植物や園芸グッズを取り扱っていて、さらにはゆったりくつろげるカフェまであり、
「こんなお店が近所にあれば…」と思わずうっとりしてしまいました。

そんなお店の様子も、最後にちょっとご紹介。



▲とにかく広い。屋外にも屋内にも、大きいものから小さいものまで種々の植物が並ぶ



▲カフェ。飲み物のみならずワッフルなどのメニューも充実



▲盆栽各種。コケ好きとしては見逃せないコーナーである



▲いま人気の苔テラリウムコーナーも



▲コケやシダの鉢、パック売りなど



▲この時季ならではの胞子体つきタマゴケも


コケについても「こんなに置いてるんだ!」と驚くほど取り揃えられておられるので、
ぜひお話会と一緒に、お気に入りのコケや鉢植えを見つけにお越しいただけたらと思う。


あ、あと私についてはもちろん「特徴がよくわかるコケ図鑑」も持って行きます!


 


苔こけコケ展2016@京都、盛況に終わりました。

2016-11-18 12:25:02 | 関西コケスポット

岡山コケの会関西支部(通称:オカモス関西)と京都府立植物園が主催の
コケの一大企画展、今年も3日間、大盛況に終わりました。

書きたいトピックは山のようにあれど、最近なかなか落ち着いてブログを書く時間がなくて。
でもなにかしら書かないと自分の精神衛生上にも悪いので(笑)、
「ブログを書くのは長くて1時間まで!」と決めて、ちょこちょことでもアップしていきたいと思う。

なのでほとんど写真ばかりですが、コケが好きな方々が集まった会場のにぎわい、少しでも伝われば何よりです。



▲いきなりなんですが、これらは京都コケ展オリジナルの苔判子。毎年新作が作られ、今回開催4回目にして初めてコケの名前が明かされた!



▲苔判子は無料のポストカードに自由に押しまくって持ち帰れるので、このブースは常に人気だった



▲会場は大賑わい



▲今年もオカモス関西のTさんが手塩にかけて育てた本物のコケたちがずらり。葉っぱの上で育つカビゴケもあります


















▲テラリウム、苔盆栽は老若男女問わず人気。とくにテラリウムの展示はここ4年でぐんと増えました


  
▲テラリウムそばの壁面には写真パネルでコケを紹介。今回はコケの生態に迫った貴重な写真が多かったです。
 ちなみに右の写真の右下に写っているのはオカモス関西・写真パネル班のHさん作「コケの顔出しパネル」。
 そう、景勝地や地方の駅でよくあるあのパネルのコケ版です(笑)。タマちゃん(タマゴケ)などと一緒に写れるとあり女性や子どもに人気でした



▲会場の右奥には顕微鏡コーナー。オカモス関西のスタッフがそばについて、顕微鏡の使い方や顕微鏡下のコケについてレクチャー中



▲そして会場の左奥には本物のコケを使った苔庭と裏千家のお茶席が設けられ、この一角は急に古都・京都らしいはんなりとした雰囲気に。
 でもよく見てほしい。壁面にあるのは苔庭の垣根なんかではない、蘚類・苔類のコケたちを超アップに写した壁紙なのである!



▲海外からの観光客とおぼしきお方も、興味深げに会場の写真を撮られてました。来年は英語の案内も付けた方がよいかも?!


  
▲最後は、こちらも毎年人気のコケ書籍・コケグッズブース。今年はここでしか手に入らないであろうコケの手ぬぐいもお目見え。
 販売ブース担当の女性は、それをカチューシャ風につけるというイマドキ女子らしいアレンジ。とっても似合ってました



▲もちろん私もご多分にもれず新作コケグッズを購入。自分のお財布事情を鑑みず瞬発的に「買います!」と言ってしまったため、
 気づけば財布の残りが帰りの電車賃ギリギリで肝を冷やした。
 左から時計回りにコケイロのコケ観察記録用ノート、オカモス関西×大阪自然史センターのコケ手ぬぐい、
 オカモス関西・Kさんのビーズで作ったサヤゴケのピンブローチ、Cafe de Foretのルーペ形ブローチ



▲ルーペ形ブローチのルーペの中はゼニゴケ、サヤゴケのピンブローチはかわいいだけでなく胞子体の特徴がよく表されていてビックリ


なお、写真にはアップしていないが3日間毎日、野外コケ観察会やテラリウム作り、
コケにまつわる講演会など、本会場の外でもいろんなイベントが盛りだくさんだった。

私は13日の、「苔三昧ーモコモコ・うるうる・寺めぐり」 (岩波書店)の著者で福井県立大学でコケの授業をされている大石善隆さんの講演を拝聴。
「京都の苔庭が10倍楽しくなる」というテーマのお話し、内容はもちろん大石さんのおしゃべりが予想外にアツく、大変面白かったです。

最後に。イベントを主催したオカモス関西のメンバーと、お手伝いをしてくださったオカモス本部(岡山)のコケを愛してやまない皆様、今年も本当におつかれさまでした!


【お知らせ】 コケ好きのためのコケカレンダー「苔暦2017」、もうできてます!

  

前回の記事で触れたコケカレンダー、完成しております。
取り急ぎのスマホ画像ですが、表紙はこんな感じです。
詳細は次回に!(近々アップします!)


【コケ情報】11月11日(金)~13日(日) 「苔・こけ・コケ展2016」開催 /「苔暦2017」を鋭意制作中です!

2016-10-24 13:11:05 | 関西コケスポット

またも気づけば月の下旬。ハロウィンの影に隠れている「師走感」も、31日が過ぎればパッと舞台の幕が開くみたいに
突如その存在感を表すのだろうなぁと思うと、もう考えただけで今から恐ろしくてたまらない…。

「本当に無事に年を越せるのか、自分よ…」と机にたまった書類の山を見ながら自問自答しては、
「いやそんなこと考える暇があったらまずは手を動かせよ」と我に返る、そんな繰り返しの今日この頃である。


さて、いろいろブログに書きたいこと、書きかけていることはあるものの、
ひとまず今日は取り急ぎお知らせしたいことを2つ。


【コケ情報】 11/11(金)~13(日)「苔・こけ・コケ展2016」開催!
 

   


全国各地からコケ好きが集まるコケのビッグイベントが今年も京都府立植物園で行われます。
毎年お越しの方も、初めての方もぜひ、コケの美しさやコケの不思議を体感しにお越しくださいませ。

会場内の苔庭で野点、「苔三昧‐モコモコ・うるうる・寺めぐり」(岩波書店)の著者であるコケ研究者・大石善隆さんによる講演会、苔テラリウム作り、
野外観察会・顕微鏡観察会開催、多彩なコケ写真・種類豊富な本物のコケの展示、コケグッズ販売(コケTシャツもあります!)など今回も盛りだくさんの内容です。
さらに今年は例年とちょっと会場のレイアウトを変えて、よりコケをじっくり見られるように工夫しています。
岡山コケの会関西支部を中心としたスタッフ一同が皆さまをお待ちしております!


   



【お知らせ】 コケ好きのためのコケカレンダー「苔暦」を2017年版も販売予定です!

「今年は作ろうか。作っても大丈夫だろうか」と正直、一種の懸けのような気持ちで毎年作り始めるこのカレンダー
しかしここ最近、「来年の苔暦も出ますか?」という奇特なお問い合わせを何件かいただき、ちょっとホッ。ただいま鋭意制作中ですよ!

11/11~の「苔・こけ・コケ展」の物販コーナーに並べさせていただくほか、
11月中旬過ぎからブログでも告知したいと思っています。もうしばらくお待ちくださいませ。


 
 ▲ヒメジャゴケの群落。以前、10月に長野県の民家の軒先で撮らせてもらったもの。2017年版10月のカレンダーに使う予定です


Bar Mousse's recommended place

2016-03-21 12:24:25 | 関西コケスポット
さて今回は、前回の記事で書ききれなかったBar Mousseの一押しの場所についてである。

じつはここが店内でももっともコケコケしていて、かつコケ好きがコケと気兼ねなく触れ合える空間といっても過言ではない。
自分も興奮のあまり激写しすぎて載せたい画像が多くなってしまったため、記事を2回に分けざるを得なくなったというわけだ。


さぁ、覚悟してください。


いきますよ。


その場所は、コチラ!


じゃじゃん!!





これはどこかと申しますと・・・・





こういう場所でゴザイマス(^^)





どうですか、このこんもり具合!(うっかり夢中で激写している筆者も鏡に映ってしまっているのがジャマですがご勘弁を…)











ホソバオキナゴケにハイゴケ、シッポゴケの仲間、タマゴケなど、
限られた空間にみっちりといろんな種類のコケがひしめきあって、
しかも胞子体がちゃんと出て、健康に育っている姿はルーペで見ると圧巻。
ここがお手洗いだなんて本当にシンジラレナイ・・・。

どうしたらこのような場所でこんなふうに元気にコケが育つのだろう!?

店主Mさんにお尋ねしたところ、このように元気にコケが育つまで、
オープン当時からかなり試行錯誤されたとのこと。

その結果、

・土台部分を色々な素材で試したが、土で育てるといちばんコケの調子がよい
・さらに土壌を豊かにするためにミミズを投入したところ、コケは根がないはずだが、ミミズ投入前よりコケが元気になった
・蛍光灯の灯りだけではうまく育たないので、閉店後は植物育成専用ライトで照らしている

などの育成方法にたどり着き、ようやく最近コケが元気に定着してきたという。

それにしてもミミズを投入って・・・コケのためにここまでするなんて。
面白い発想だなぁと私は思わず感心したが、おそらくコケ好き以外の理解は得難いのではあるまいか。

どうやらMさん以外のアルバイトさんたちは筋金入りのコケ好きというわけではなさそうだし、
Mさんがコケのためにあれやこれや手を尽くす様子を「また店長がコケのことで何かやってるわ・・・」と
遠巻きに見ているのがたやすく想像できてしまった。



▲Mさんが「コケの下はこうなってます」とコケをめくって見せてくれた


さて、私がそんな余計なお世話な想像を膨らませているともつゆ知らず、
Mさんはこの空間でのコケとの正しいふれあい方についても教えてくださった。

それは・・・




▲1.用を足して手を洗う



▲2.蛇口を締める(ここまではフツー)



▲3.紙で手をふかず、濡れたままの状態で・・・



▲ぱっ!



▲もいっちょ



▲ぱっぱっ!


こうして手についた水を散らすことで手を拭く紙の無駄使いが減り、ついでにコケにも潤いを与えることができるという。
ひゃー、これは面白いっ!

さらにじっくりコケと触れ合いたいという方は、マイルーペのご持参を。
ただしあまり長時間こもりすぎると用を足したい他のお客様のご迷惑になりますゆえ、ほどほどでお願いいたしマス!



▲洗面台以外にもコケが。苔暦も使ってくださっていて嬉しかった


コケというものは、道を歩けば必ず誰もの視界に入っているはずなのだが、
「コケと出会いたい」という気持ちがそこにないと、まったくといってよいほど記憶に残らない。

しかし逆に言えば、コケに目線を合わせる気持ちがある者だけにそっとその美しさを披露する。

華やかな店が、ひしめきあうように軒を連ねる繁華街・祇園のなかで、
あえて看板も出さず迷路のような路地にひっそりとたたずむBar Mousseは、まさにコケのような存在だ。

時が経つのを忘れてしまうほど居心地のよい店内に後ろ髪をひかれつつ、
もうすぐ夜が明ける祇園の道を歩きながらそう思ったのだった。


:::Bar Mousse:::

所在地  〒605-0084 京都府 京都市東山区清本町375花見末吉西入 末吉一番路地東側二階
営業時間 月~金:19:00~3:00 土・日:17:00~3:00
定休日  木曜日
電話   075-525-6688


※おそらく祇園にとても詳しい方以外は辿り着けないと思うので、
 近くまで来たらお店に電話をされることをおすすめします。
 お店の方が、迎えに来てくださいます。

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【お知らせ】

現在発売中の「anan」(マガジンハウス)の「運命の出会い。」という特集の中で、
ちょっと変わった趣味に没頭する8人の女性が取り上げられているのですが、
その中の一人として「コケが大好き」ということで取材を受け、記事にしていただきました。

1/2ページの小さな記事ですがよかったら本屋さんでのぞいてみてくださいマセ。






Bar Mousse in Kyoto

2016-03-15 16:50:12 | 関西コケスポット



先月のこと、夫が「京都マラソン」に出ることになり、その応援という“名目”で京都へ。

というのも会社員時代から付き合いのある仕事のクライアントからのタレコミで
「コケ好きならぜひ行った方がいい!」と猛プッシュされた場所があり、
今回の京都行きはそちらを訪ねることが“本命”なのだった。

場所は祇園。そこには日が暮れてから訪ねるのがよいという。

そこで祇園にほど近い八坂神社のそばに宿をとり、まずは宿の夕食を食べて腹ごしらえ。
お腹いっぱいになって少しお腹が落ち着いてから出かけようと、しばらくぼーっとしていたら、
女中さんが夕食の片付けついでにささっと布団を敷いてくれる。

(あぁ、普段の家事から解放されて、人に布団まで敷いてもらって、なんとありがたいことよ)

気持ちもすっかりくつろいで、思わず畳に足を投げ出した。


そこそこ疲れていたのだろうか。

目を開けると私はしっかり布団にくるまっており、
はたと気づいてスマホの時計を見ると時刻は午前1時。

(・・・・い!? い、いちじ!!!)

日が暮れたらどころの騒ぎじゃない、とっくに夜も更けているではないか!

びっくりしてビーチフラッグの選手張りに飛び起き、
家族が熟睡しているのを横目でちらっと確認し、
大急ぎで身だしなみを整えて部屋を出る。

なんせ1時なので館内は水を打ったように静まりかえっている。ロビーにももちろん誰もいない。
しかし祇園のそばという土地柄もあってか、玄関は開いたままになっていた。

(ホッ!)

八坂神社を通り過ぎ、事前に仕入れていた住所を見ながら夜の祇園をずんずん歩く。
ここからそう遠い場所ではないはず。歩いてせいぜい5~10分圏内だろう。

がしかし、スマホで地図を見るともうすぐ近くのはずなのだが、なかなかたどり着かない。

15分ほどぐるぐるといくつかの小路を行きつ戻りつしていたが、慣れない場所の夜道も怖く、もうギブアップ。
電話をかけて、コケ好きを虜にするというその場所の住人の方から迎えを出してもらったのだった。






さて、ここまで読んで今回のタイトルを記憶されている方は、もうそこがどこなのか察しがついていることだろう。
そう、階段を上ってその店の扉を開けるとそこには、聞きしに勝るコケ好き(かつ、お酒好きならなおさら!)にはたまらない魅惑の世界が広がっていた。



▲一見さんでは絶対見つけられないであろう路地を入ると、やっとお店の看板が!
 軒先には杉玉ならぬシダの一種ヒカゲノカズラでできた「歯朶玉」が吊るされていた



▲さぁ、階段を上ります。上がった先には魅惑の世界の扉が・・・


その店の名は「Bar Mousse」。
Mousse(ムース)はフランス語で「コケ」のこと。

扉を開けると、すぐ足もとに、お店のロゴが描かれたモザイクタイルがお出迎え。
一つのマークのように見えて、じつは、m、o、u、s、s、eの文字がひそんでいるのがおわかりだろうか。







▲一枚板のバーカウンターが印象的な店内。しかし、よく見るとコケ好きが食いつかずにはいられないあれやこれやが・・・
 


▲その1:壁面のコケテラリウム。木箱の中には本物のコケが生育中。カウンター越しに見るとまるで絵画のよう
 その2:コケテラリウムの下にもご注目。お酒のボトルと引けを取らない存在感で店主が集められたコケにまつわる書物が所狭しと並ぶ
 (ちなみに店主はコケ好きであり寺社仏閣好きでもあるそう)



▲その3:カウンターのコーナーには迫力のあるフラワーアレンジメント
     

じつは今回、私がこの日に訪問するということでコケをイメージしたアレンジにしてくださったそう。なんたるこまやかなお心遣いだろうか(涙)
丸っこいのがいたり、つんつん伸びているのがいたり、くねくね乾燥状態のがいたりと、
コケはいっさい使われていないのに、コケ好きが見るとコケに見えてしまうという不思議!
     


▲その4:コケテラリウム式ランプ

落ち着いた隠れ家のような店内の雰囲気に一役買っていたのはこちらのランプたち。
なかにはもちろん本物の生きたコケと木が植わっている。コケを透過した光は薄緑色で優しく辺りを照らしていた。







▲その5:飾り棚の壁にかけられた絞り染めの苔額



▲コケの群落を絞り染めで表現したという額縁。和の都・京都という土地柄ならではだなぁと感じさせる。
 店主のお知り合いが開店祝いに手作りしてくださったという



▲カクテルを作っている最中の店主Mさん。バーテンダー一筋で東京や京都で修業を重ねられ、2014年に京都・祇園にBar Mousseをオープン。
 (※ちなみに先の写真の男性は、アルバイトの方です)


女性、歳が近い(私よりもう少しお若いです!)、そしてコケ好きということで、
これだけ条件が合えば意気投合しないわけがないという私たち。

スタートがそもそも深夜1時過ぎと遅かったこともあり(ひとえに私のせいなのですが…)、
店内のコケグッズを紹介していただいたり、お互いのコケ歴を話しているうちに、
気づけば腕時計の針は閉店時間15分前の2時45分をさしていた。あぁそろそろ帰らねば。

しかし! そこにタイミングよく常連のお客さんがふらりと入ってこられたため、ゆるりと時間延長。
(私はひそかにテーブルの下で「常連さん、ナイスタイミング!」と小さくガッツポーズをした)

常連さんが帰られた後は特別にカウンターの内側に入れてもらい、テラリウムのコケをルーペで覗き見たり、
コケ栽培の楽しみやご苦労話などもうかがって、結局、お店を出たのは4時半ごろだっただろうか。

Mさんとアルバイトの方のにこやかな笑顔に見送られ、日が昇る前に店をあとにしたのだった。
(しかし今じっくり思い返してみれば、もしかしたらアルバイトの方の笑顔は
 「コケの話だけでこんなに何時間も盛り上がれるとは・・・」という呆れ笑いだったのかも)


それにしても、これまでコケの豊富な山林やお寺の苔庭を目当に京都を訪れたことは幾度もあったが、
このようなコケの魅力がひしひしと伝わってくるセンスのよいバーがあるなんて知らなかった。
今後はこちらBar Mousseも、京都に来たら立ち寄るべき重要コケスポットとして新たに記憶しておかねばなるまい。

日ごろから「コケが好き」ということをコケ好きに限らず周囲にアピールし続けていると、
思わぬところから良い情報をいただけるものだなぁと実感したのだった。

なおBar Mousseにはもう一か所、とんでもないコケむす空間がある。
今回はすでに長い文章になってしまったので、その話についてはまた次回でふれたいと思う。


:::Bar Mousse:::

所在地  〒605-0084 京都府 京都市東山区清本町375花見末吉西入 末吉一番路地東側二階
営業時間 月~金:19:00~3:00 土・日:17:00~3:00
定休日  木曜日
電話   075-525-6688


※おそらく祇園にとても詳しい方以外は辿り着けないと思うので、
 近くまで来たらお店に電話をされることをおすすめします。
 お店の方が、迎えに来てくださいます。



【コケ情報】11月21日(土)~23日(月祝) 「苔・こけ・コケ展2015」開催!

2015-11-09 14:52:37 | 関西コケスポット
11月に入り、街はハロウィンから一気にクリスマスムードへ。でもちょっと待って、その前に! 
コケ好きが集まるビッグイベントが今年も京都府立植物園で行われます。
毎年お越しの方も、初めての方もぜひ「コケの不思議」に触れにきてくださいマセ。





☆会 期: 2015年11月21日(土)~23日(月祝)、9:00~17:00(23 日は16:00 まで)
☆会 場: 京都府立植物園 植物園会館展示室  ※ご来園には地下鉄・市バスをご利用ください

☆イベント
◇11月21~23日 野点席 ~苔庭ではんなり お点前を~ 
   ・裏千家教授 関西宗志
   ・飲食費/500 円 
   ※会場内で随時開催。裏千家のお点前で抹茶がいただけます。

◇11月21~23日 10:00~11:30「植物園内のコケ観察 地上のコケ・樹幹のコケ・岩壁のこけ」(観察会)
   ・共催/日本蘚苔類学会
   ・講師/大崩貴之(京都大学大学院 人間・環境学研究科 、岡山コケの会関西支部)
   ・定員/各日先着20名、参加費無料

◇11月21日 10:30~12:00 講習会 コケを身近に:「コケテラリウムを楽しもう」
   ・講師/岡山コケの会関西支部
   ・材料費/500 円
   ・定員/先着20名

◇11月21日 13:30 ~15:00(受付13:00 ~) 講演会「苔を魅せる器づくり」
   ・講師/岡本 和芳(陶芸作家)
   ・定員/先着60名

◇11月22日 10:30~12:00講習会「コケが活きる魔法の鉢づくり」
   ・講師/大野月子(園芸家)   
   ・定員/先着20名
   ・材料費/500円(セメント・色粉など)
   ※持ち物/作業用の前掛け、作品持ち帰り用の風呂敷、ビニル手袋 などを準備ください

◇11月22日 13:30 ~ 15:00(受付13:00 ~) 講演会「コケが語られる 文学に現れる苔」
   ・講師/青野美幸(京都医療科学大学  非常勤講師)
   ・定員/先着60名、参加費無料

◇11月23日 10:30 ~ 12:00(受付10:00 ~)講習会「コケと遊ぼう」コケテラリウムを作る
    ・講師/泉原 一弥(地球温暖化防止活動推進員・やぁね、こけちゃっカー(屋根苔着車)製作者)
    ・材料費/500円(容器・培養土・コケ材料など)
    ・定員/先着20名

◇11月23日 13:30 ~ 15:00(受付13:00 ~)講演会「コケ植物の美と多様性,その生き方 -小さい体に精一杯工夫を凝らしたくましく生きるコケ-」
   ・共催 日本蘚苔類学会
   ・講師/秋山弘之(兵庫県人と自然の博物館・前日本蘚苔類学会会長)
   ・定員/先着60名、参加費無料


上記の通り、観察会やテラリウム作り、講演会などのイベントも盛りだくさん、さらに今年はコケグッズの物販も充実しています。
今年の自分は会場壁面のコケ写真展示にかかわるほか、拙著「コケはともだち」とコケカレンダー「苔暦2016」を物販品として置かせていただきます。
さらにMOSS-T PROJECTで3年前に初めて作ったコケTシャツ(長袖バージョン)も再販させていただく予定
(枚数が少ないのでご希望の方はお早めに会場へお越しくださいっ)。

他にも屋久島の高田裕子さんのポストカードやkokeiroさんのアクセサリー類など、
普段は手に入れたくてもなかなか手に入れられない珠玉のコケグッズがそろっていますよ。


そして私は現在、写真展示の準備とコケカレンダー完成に向けて鋭意作業中でございます。


▲展示用写真の一部


    
▲コケカレンダー「苔暦」のためのイラスト(何ゴケかわかるでしょうか!?)


この時季の京都は紅葉もきれいですし、植物園内のイチョウの大木が色づくさまは圧巻です。
ぜひ、コケと季節の植物を楽しみに京都府立植物園までお越しください。

 ◆京都府立植物園の利用案内&アクセス→