かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

近づいて見たり、引いて見たり。

2012-03-30 16:00:22 | コケをめぐる旅

▲切り株に生え、胞子体を伸ばしているナガハシゴケ。若葉のような明るく優しい緑色が美しい。(2012年3月11日鎌倉朝比奈切通し)


あっというまに3月も終わり。

今朝、ベランダに出たら、
遠くに見える住宅街の隙間から
若葉色がのぞいていた。

この冬は寒い日がたくさん続いたけれど、
ようやく木々も芽吹き始めたのだな。

もう少ししたら桜色の木々も現れることだろう。

この季節のベランダは、
毎日発見があってとても楽しい。


さて、もしあなたが地面に顔を
近づけることさえいとわなければ、
春は「苔見(こけみ)」も楽しい季節。

通例ではコケは、他の植物たちが芽吹く前に、
胞子体を出して〝旬〟を迎える。

しかし今年は寒さが厳しかったせいか、
ほうぼうを見て歩いても、わりとコケの成長が遅い。

つまり今年はまさにこれからが苔見の季節。
ぜひ、サクラと共にご覧あれ。



で、話はちょっとさかのぼって。

まだすこし冬の寒さが感じられる3月11日、
1年以上ぶりとなる岡山コケの会関東支部の
コケ観察会が行われた。

場所は鎌倉。主に朝比奈切通しを歩きながらコケたちの様子を観察した。

 ※切通し(きりとおし):山や丘を切り開いて通した道。


今回は1年以上ぶりの開催ということで、
参加者はみなさん、気合じゅうぶん!

ということはつまり、いつも以上に、
みなそれぞれにコケの世界にどっぷりつかってしまい、
地面にへばりついたら離れられなることうけあいなわけで・・・。

とくに今回は講師を務めてくださったKさんが、
「さぁコケ観察を始めましょう」と山道を一歩踏み出した瞬間から、
気になるコケを見つけて動かれなくなってしまったことから、
「それなら私も~」とみな続々と各自のコケワールドに入り始める。

案の定、今回も予定時間を大幅に過ぎてしまい、
お昼になり空腹でおなかが鳴ってようやく、
「あれ? 私たちもしかしたら全然進んでなくない!?」
と気づくありさまなのだった。



▲壁にはりついたり、採取したコケを回し見したり。なかなか前に進まない私たち。


ちなみに会の世話人&タイムキーパーであるAさんは、
早くからこの時間の遅れに気づいていたのだと思うが、
私たちのコケへの情熱を最優先してくださり、
今回もできる限り自由にさせてくれていた。

毎回のことながら、感謝、感謝である。



▲お昼過ぎ。参加者の先頭を歩く世話人Aさん。でも振り返ると誰もついてきていないので、たぶん愕然とされていたと思う。



時間には限りがあるので、いつまでものんびりはしていられないのだけれど。
そうは言ってもやはり、コケ観察は、焦らず、ゆっくり、が基本。

普段は「風景の中の緑」としてしか認識していないコケでも、
近づいてじっくり見てみると、そこにはいろんな発見がある。




▲コバノチョウチンゴケ。古くなって縮れた濃い緑の葉と色鮮やかな新芽が同居するのが春先恒例の姿。




▲さらに近づいて見てみると・・・雌株から胞子体が出てきてる!




▲こちらは、花のような形をした雄株。春らしいライムグリーン色が美しい。
 ちなみに、画像右上に密集している、もっと濃い緑色の花形をしたものは、コツボゴケの雄株。


こんなに小さなものでも少しずつ成長し、季節ごとに姿を変える。
それが、山や森が生きているという証でもある。

そして、その様子を見守る私もちゃっかり生きているわけで。

ときには自分自身を心のルーペで
ぐっと近づいて見てみたり(または引いて見てみたり)すれば、
普段は気づかないいろんな変化が見つけられるのかもなぁ。


なんて。

やはりコケを見るっておもしろいものです。




▲コケも近づいてじっくり見た後は、再び引いて見てみる。
 それによってどんな場所にそのコケが生えているのか、種類ごとのコケが好む場所というのがわかってくる。



<今回出会った主なコケ>

1エビゴケ
2オオベニハイゴケ
3カガミゴケ
4キブリナギゴケ
5ギンゴケ
6コガネハイゴケ
7コツボゴケ
8コバノチョウチンゴケ
9シノブゴケ
10ダンダンゴケ
11ツチノウエノコゴケ(かな?)
12ナガハシゴケ
13ノミハニワゴケかコメバキヌゴケのどちらか
14ハリガネゴケ
15ハリゴケ
16ヒダゴケ
17ヒメナギゴケ
18フガゴケ(絶滅危惧種)
19ヤノウエアカゴケ
20極小サイズのホウオウゴケの一種(名前を失念!)

21アズマゼニゴケ(かな?)
22ケゼニゴケ
23ジャゴケ
24ジンガサゴケ



▲こちらがフガゴケ。切通しの岩壁に生えていたのだが、ごらんのとおりあまり状態はよくないようだった。




▲ケゼニゴケとジャゴケが一堂に! どちらもボタンのような雌器托(しきたく)がついている。もう少ししたら胞子を飛ばせるかな!?



冬のAKM48 その3

2012-03-16 15:45:20 | コケをめぐる旅

▲ケチョウチンゴケ。(2012年2月三重県・赤目四十八滝にて)


赤目四十八瀧での思い出をもう一つだけ。

雪がとけて岩肌にお目見えしたのは
ケチョウチンゴケの群落。


ケチョウチンゴケ(毛提灯苔)とはその名の通り、
まるで毛のような仮根(かこん)が特徴のコケである。

仮根といえば、土や岩などにしがみつくために
たいてい茎の根元に生えているものだが、
このコケについては、茎の上部にまで仮根が生え、
しばしば葉の上にまで広がることがある。

ちなみに「チョウチン」とつくのは、
の形が提灯の形と似ているからだそうだ。


数年前、初めてこのコケを目にしたときには、
そのコケらしからぬお毛々っぷりにかなりの衝撃を受けたものだったが、
今回、その大きな群落を眺めていたところ、
当時の衝撃を上回るのではないかと思われるほど
一角が大変なことになっていた。




▲おぉ、どうしたどうした。



とくに写真の真ん中あたりの子らなんて、
もはや自身の体までも覆い尽くさんばかりの毛深さ。

私の観察史上最高のモジャモジャっぷりである。

あんたたち、どうしてまたこんなことになっちまったのと、
見ているこちらがオロオロしてしまう。


しかし、冷静になって考えてみれば、
人間界では「ムダ毛」という言葉があるくらい、
一定基準量を超えた毛をムダとみなして気にするものであるが、
コケにとってはこのモジャモジャの仮根、
それなりに何か理由があるのかもしれない。

何度かこのコケに出会っていると、
みんながみんなモジャ公というわけではなく、
毛深さの程度は個人差(群落差?)がある。

生える場所の違いか、はたまた季節が関係するのか。

図鑑によると、実はこの仮根の先には、
小さな糸状の無性芽がついているとのこと。

もしかしたら毛深いやつほど
無性生殖に精を出しているのかも!?

手持ちの図鑑にはその意図までは触れられていなかったが、
このモジャモジャ仮根について、すでに研究されている学者の方がおられるかもしれない。

今度どなたかにお会いしたら、ぜひ伺ってみたいなぁ。




●おまけ

一触即発!?ケチョウチンゴケとムクムクゴケのお毛々対決!



▲モジャモジャとムクムク、(コケ好きには)奇跡のツーショット!



▲ケチョウチンゴケとムクムクゴケ、よく見るとどうもお互い陣地を取り合い、せめぎ合っているように見える。


※記憶をたどるとこのバトル、実は昨夏から続いていたのでした。

「ジャゴケ.vs.ムクムクゴケ」(ケチョウチンゴケの登場は記事末尾に)
http://blog.goo.ne.jp/bird0707/e/aed44112e256a4242e6e4e41e2118b90


冬のAKM48 その2

2012-03-05 09:57:22 | コケをめぐる旅

▲雨上がり。葉がぬれていつにも増してつややかなホウオウゴケ。


すでにお気づきの方もいるかもしれないが、
前回からタイトルにつけている「AKM48」とは、
もちろん「赤目四十八滝」のことである。

言わずもがなこれは、いま全国のアイドルオタクの心を
わしづかみにしているアイドルグループ「AKB48」とかけているわけだが、
そう言ってみたくなったのは語呂のよさのみならず、
自分自身がすっかりAKM48のコケオタクになりそうな予感がするから。

予感というか、事実すでに〝追っかけ〟を始めてしまっているわけで。

しかもその風貌たるや、手にはカメラと三脚をかたく握りしめ、
背中には観察グッズやコケ本などをパンパンに詰めたリュック。

おまけに季節柄、寒さには勝てないということで
ダウンジャンパーの下に着ているシャツはズボンにIN!

さらにどこにコケが現れる(目にとまる)か
わからないので、瞳は終始ランラン。

コケを見つけたら見つけたで
地面にへばりつき顔はニヤニヤ。

客観的に見ると、アイドルオタクのことをどうこう言う前に、
もうあなたもじゅうぶんコケオタクだよ・・・といわんばかりの有様。


うむ。でも、それでいいのです。

老後まで続けられる人生の楽しみを見つけたのだから。

AKB48を追っかける全国大勢のアイドルオタクらの陰で
これからもひっそりと、でも全力でAKM48を追っかけてゆきたいと思います(キリッ)。



さて、前置きが長くなってしまったが前回のつづき。

月曜日に赤目四十八滝を訪れてから、
火・水曜日は別件の用事をすまし、
再び赤目四十八滝を訪れたのは木曜日のことだった。

天気予報は「雨のち曇り」で神戸は朝から雨。

しかし今日中に東京に戻らねばならないということで、
雨を気にしつつも出かけることにする。

ところがいざ現地に着いてみると雨はほとんど小降りに。
気温もまずまず。これならコケ観察も問題ない。

しかも月曜日はあんなに積もっていた雪が、
今日来てみると見事に溶けて風景は様変わり。



▲月曜日

 ↓


▲木曜日





▲月曜日

 ↓


▲木曜日





▲滝も増水していた。


数日前まで雪に埋もれてまったく見えなかったコケたちも、
やわらかい初春の雨が雪を溶かしてくれたおかげで
どの子も姿かたちがはっきりわかる。

しかも雨に濡れて、いつにも増して緑色が鮮やかで濃くなっている。

突然見どころが増えて、
心の中で嬉しい悲鳴をあげていると・・・

ほら、さっそくここに胞子体付きのコケが!



▲この時点ではそこらじゅうが緑に見えますが・・・




▲さらに近づいてみる。さて、胞子体をつけたコケ、いったいどこにいるでしょう? コケ目線でぜひ見つけてみてください。




▲そう、ここにいました!




▲胞子体を伸ばしているムツデチョウチンゴケ。



ちなみに同じチョウチンゴケ科のコツボゴケやコバノチョウチンゴケも
この時季、同じように胞子体を伸ばす。

それがコケ好きたちにとってはフツーの人の梅見と同じくらい
心をときめかせてくれる春の風物詩となっている。



▲まるで「春がキターーー!」とばかりに天に向かって万歳三唱をしているよう。


それにしてもこれら胞子体、決して雨が上がってからにょきにょき生えてきたわけではなく、
おそらく雪が降るよりももう何日も前(もしくは何週間も前)からこつこつと少しずつ柄を伸ばしてきたと思われる。

たとえ雪が降って、自分のからだが身の丈の何倍もの高さの、そして冷たい雪で覆われても、
こんな細い柄を迷いなく天に向かってのばし続けていたのかと思うと、
なんと根性がすわっていることかと見ているこちらまで身が引き締まる思いがする。

私だったら雪に積もられたら気が弱くなって、一度出した柄も引っこめたくなるかも・・・。

コケのたくましい生命力に敬服である。



他にもこんなコケたちと出会うことができた。



▲スギバゴケ。




▲ゼニゴケの仲間(もしかしたらアズマゼニゴケかな!?)。




▲サナダゴケの仲間(おそらく)。



どのコケもなんと青々としていること!
「やっと雪から出られた」とコケの深呼吸が聞こえてきそう。

これぞコケ本来の生命力あふれる天然自然の美しさ。神々しささえ感じさせる。




▲サナダゴケの仲間の群落。