かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

ジャゴケ .vs. ムクムクゴケ

2011-07-26 08:58:07 | コケをめぐる旅

▲ジャゴケとムクムクゴケ。6月中旬の赤目四十八滝(三重県)にて。



赤目四十八滝レポートのラスト。


コケの図鑑をめくっていると気づくのは、
コケの名前って案外、おもしろいものが多いということだ。

なかでも一度聞いたら忘れないのが「ムクムクゴケ」。

「コケなのに、ムクムク!?」

最初にこの名前を目にしたときは
かなり衝撃をうけたが、たしかにその名の通り、
このコケの先端はどことなくムクムクしている。


さらにルーペで見るとビロードのような
やわらかそうな毛がびっしりとついているではないか。

「植物なのに毛!?」

とこれまた驚愕するが、実際は、
葉の先端が細かく糸状に裂けているのが
毛のように見えているのである。


でもそんな理由はさておき、コケらしからぬ
そのムクムク、モコモコした見た目は
とにかくコケ好きたち(とくに女子)には人気が高い。

今回、赤目四十八滝でこのコケとであったのは、
人生で3度目(たぶん)だったが、
やはりテンションが上がった。


一方、ムクムクゴケとは対照的に、
コケの中でもとりわけ
人気がないのが「ジャゴケ」だ。

その名前の由来は、ルーペでみると表面に
ヘビの鱗に似た模様があるからなのだが、
そのグロテスクなかんじと、さらに繁殖力旺盛で、
むしってもむしっても絶えず生えてしまうこともあいまって
ゼニゴケと並んで「庭の邪魔者」として扱われている。


このコケ界の陽・陰2大対決が、
まさか赤目四十八滝の隅で
こっそりと行われていたなんて。


▲滝に程近い道沿いのやや日あたりの悪い場所。
 生い茂る大型植物の隅(右下)に、ひっそりとコケらしき群落が。




▲さらに近づいてみると、大きなジャゴケと小さなムクムクゴケが一緒に!




▲どうですか、両者一歩もゆずらぬこのせめぎあい!


大きさから言えば、断然ジャゴケの方が有利に思えるが、
ムクムクゴケもそのキュートな表情の反面、
他のコケの上に無邪気にも大きな群落をつくってしまうという
なかなかの厚かましい性格の持ち主。

よくよく見ると、大柄なジャゴケの隙間にみっしりと群落を広げ、
これ以上、ジャゴケが広がる隙を与えまいとしているようにも見える。


また来年にでも訪れたら、もしかしたら、
勝敗が決まっているかもしれない。

でもまぁ、どちらのコケも好きな私としては、
お互いあまり意地を張らないで、
ほどほどに仲良く共存してほしいのだけど。



●おまけ


▲また別の場所で。今度はケチョウチンゴケの群落に割り込もうとしているムクムクゴケ。
 うーむ、なんてしたたか!(でもやっぱりかわいいから、憎めない・・・)



かえってきた「コケナイト☆」

2011-07-20 14:35:08 | 東京コケスポット

▲コケ好きたちのお祭り「コケナイト☆リターンズ」。荻窪のカフェ・6次元にて。


赤目四十八滝のレポートをいったん中断。

今日はひとまず、先週大盛況のうちに幕を閉じた
「コケナイト☆リターンズ」についてご報告を。



6月中旬にコケ好きたちが気軽に参加できるイベント
「コケナイト☆」を開催したところ、予想以上に反響があった。
あまりの応募者多数のため、会場に入りきれず参加できなかった方もいたほど。

●6月の「コケナイト☆」の様子。
http://blog.goo.ne.jp/bird0707/e/3581d641ff6eddbf27da7a5f8bc3ec33


その後も「募集が締め切られたので、行けなかった!」
「ぜひ、またやってほしい!」と嬉しいリクエストが多かったことから、
7月13日(水)に行われたのが、かえってきたコケナイト、
その名も「コケナイト☆リーターンズ」なのである。


今回も40人近い参加者が集まり、
会場のカフェ6次元は人・人・人でぎゅうぎゅうづめ。

しかも、今回はあくまで「リターンズ」ということで、
トーク内容も前回とほぼ同じにもかかわらず、
前回参加されて今回もまた来て下さった方が
4、5人いらっしゃる(しかもお友達を連れて)。

コケ好きさんたちのコケに傾ける情熱や
これほどにも熱いものなのかと改めて驚いてしまった。



▲開場直前の6次元。前回に比べよりコケっぽい雰囲気になるよう、コケ写真を飾る。



▲コケーキ。「I LOVE(ハート) コケ」の上り旗つき!


またドレスコードも前回に引き続き「コケっぽい服装」だったので、
今回も皆さん創意工夫のコケ衣装が見られて楽しかった。

まるでコケ群落のような緑のぼんぼんがついた帽子や
ヘアバンドを自ら作って被ってきてくださった方、
コケっぽいストールをこの日のために購入してまとってきてくれた方、
昼間は会社勤務なのであまり社内で怪しまれぬよう緑のカーディガンや、
緑のシャツ、緑のワンピースなどをさりげなくお召しになって登場してくれた方。

また、「I LOVE(ハート)KOKE」と刻まれたネイルを爪に施してきてくださった方、
さらに本物のコケが入った「マイコケ鉢」を持参してくださったカップルもいた。


そんななか、とりわけ目立っていた人がこちら。



▲イラストレーターの永井ひでゆきさん。手にはコケドリンク。


つい最近、全身緑の衣装で来日し、「徹子の部屋」では自ら黒玉ねぎとなり
話題を呼んだレディー・ガガから、インスピレーションを得てのこの衣装。

永井さんいわく、

「あの緑の衣装には『コケがいま日本でブームになってるって本当?』っていうガガからの 
 隠されたメッセージが込められていた。だからこの衣装は、
 『そう、コケはいまブームだよ』という僕からの答えなのです」

とのこと。

おそるべし想像力(てか、妄想力?)。

とにかく永井さんのやることは、
いつも私の期待以上なのである。



さらに今回も実際のコケを見てみようということで、
4~5種のコケたちに集まってもらった。



▲左上から時計回りにエゾスナゴケ、ジャゴケ、ハイゴケ、コツボゴケ。ルーペと霧吹きを添えて。


前回は、ゼニゴケやハリガネゴケなど
がついたコケの姿を皆さんに見てもらったが、
この季節になると、をつけたコケは少なくなってくる。

 
 ※(さく)=コケの胞子が入った袋。コケに花はなく種もつけない代わりに、胞子で増える。


そこで今回は「エゾスナゴケ」を使って、
乾燥して休眠しているコケに霧吹きで水を吹き付けて、
一気によみがえる姿をルーペで見てもらうことにする。


くしゅくしゅと葉が縮れ、かちかちにかたまっていたコケ群落が、
水を得たら瞬時に葉が開き、色も鮮やかによみがえる姿に、
会場は「おぉ~!」「開いたぁ~!」と驚く声があちらこちらから。

しかもエゾスナゴケは葉が完全に開くと、
星のような形に見えて、これがまたとても美しいのだ。



▲エゾスナゴケ。右上の小さな群落だけちょっと葉が開いているのがわかるでしょうか。



▲エゾスナゴケのアップ。水を得て完全に葉が開くと、こんなに美しい。



▲キラキラと輝いて人を引きつける魅力たっぷりの姿はまさにコケ界の「スター」。
(『コケはともだち』より。イラスト:永井ひでゆき)
 

そんなこんなで前回同様、私からのコケ植物についての話、
永井さんからの「コケファッション2011秋冬」のお披露目もあり、
あっというまに時間もすぎて、名残惜しくも22時に会はお開き。

帰りの電車でツイッターを見ると「楽しかった」という感想が多く寄せられていて、
「こちらこそ楽しいイベントをありがとう!」という気持ちで帰路に着いた。


ちなみに前回に比べてリターンズは、
より幅広い年齢層(20代~60代くらいまではおられたように思う)、
男女比も男子の人数がより増えていた。

なかには「コケが好きなのに、コケの話をできる場所が他になくって…」と、
その見た目からはまさかコケ好きとは想像できないほど、
〝できるサラリーマン〟風のビシッとしたスーツ姿で
お仕事帰りに来られた男性(30代くらい)までいたほど。


以前、6次元店主のNさんが〝コケ好き女子〟のことをズバリ、

「コケガールは森ガールや山ガールと共存できる。
 京都や屋久島を愛し、下を向いて歩くのが好きな文科系女子。
 コケガールはワビサビのわかる30前後のアラサーになってくると、コケージョに進化」


と、おっしゃっていた。

上手いこと言うなぁと思っていたのだが、
今回の参加者の顔ぶれを見ていると、
〝コケ好き層〟は老若男女と問わず、
かなり厚いのかもしれない。

コケガール、コケージョに続き、
さらなる新造語が生まれるかも!?


それはともかくも、またみんなでわいわいがやがや、
それこそコケの群落のようにギュッと集まって、
コケの話題で心潤うようなイベントができたらいいなと願う。



▲帰りに参加者の方からこの日のために作ったというコケボンボンを頂く。
 緑一色じゃないところがとてもイイ!(コケをよく見てる証拠!) 髪や腕につけよっと。



▲私もひそかにマイゴケを持参。ミズゴケとモウセンゴケ(種子植物)が入った鉢。

チャーミングなメンズたち。

2011-07-09 07:11:25 | コケをめぐる旅

▲あれ、コケの花!? いえいえ、コツボゴケの雄花盤。6月中旬の赤目四十八滝にて。


赤目四十八滝のつづき。

植物には造精器と造卵器が別の個体にあり、
雄株と雌株に分かれる「雌雄異株(しゆういしゅ)」と、
造精器と造卵器が同一の個体につく
「雌雄同株(しゆうどうしゅ)」があるが、
コケもごたぶんにもれず、種類によって
雌雄異株のものと雌雄同株のものがある。


雌雄異株のなかでもとりわけチャーミングなのは、
「雄花盤(ゆうかばん)」をもつ雄株たち。


「雄花盤」とは雄株の茎の先端に
造精器が集まって盤状になったもので、
一見、種子植物の花のように見える。

雄花盤はチョウチンゴケ科のコケに多いようである。


もちろん花ではないので、
色は葉や茎と同じ緑色。

しかしルーペでコケをアップにして見ると、
生い茂る緑の草っぱらのなかに
パッと可憐な花が咲いているようで
これがなんともかわいらしいのだ。

「コケは地味」と思っているコケ初心者さんは、
きっとこの雄花盤を見たらコケのイメージが
一気に変わるかもしれない(かく言う、私がそうだった!)。


また私の経験上、コケに見慣れたからといって、
コケの草むらの中から雄株、そして雄花盤が
そんなに頻繁に見つかるというわけでもない。

また見つけたとしても、コケの草むらに
点々と散らばっているかんじ(あくまで私の経験上だが)。

だからいまも見つけたときには
宝物を発見したように嬉しい気持ちになる。


しかし、ここはなんといって歴史あるコケの森、赤目四十八滝。
雄花盤がこんなにわんさかとあるではないか!



▲このコケたちの大群落にそっと近づいて行きますと・・・




▲もうお花畑状態の雄花盤たち。種類はムツデチョウチンゴケかな?!


ジャニーズか、はたまたK-POPグループさながらに、
チャーミングなメンズたちが一堂にずらり。

もちろん私も彼らを見つけたときには、
アイドルの追っかけさながらに
興奮と嬉しさで黄色い声をあげたのだった!


●おまけ


▲華やかな雄株たちの横で、粛々とをつけるコツボゴケの雌株集団。

〝コケ好きさん〟増殖のきざし!?

2011-07-01 18:45:25 | 文系女子のコケ目線
先にささっとまとめて業務連絡を!

●<明日!>ラジオ出演:7月2日(土)に
 2番組にちょこっと出演します。

1.朝6時過ぎ~:NHK第1(AMラジオ)「土曜あさいちばん」<全国放送>
『著者に聞きたい本のツボ』のコーナーにて。15分くらいの出演。

http://www.nhk.or.jp/r-asa/
http://www.nhk.or.jp/r-asa/pro/2a6.html

2.朝9時35分頃~TBSラジオ(AMラジオ)「永六輔 その新世界」<関東のみ放送>
『ラッキィ池田の粗雑な疑問』のコーナーにて。10分くらいの出演。

http://www.tbs.co.jp/radio/rokuchan/


●イベント:7月13日(水)20時~「コケナイト☆リターンズ」
・『コケはともだち』の著者・藤井久子と
 イラストレーター・永井ひでゆきのトークをメインとしたイベント。
・荻窪・カフェ「6次元」にて。http://www.6jigen.com/
・参加費1500円(コケドリンク&コケーキ付)
・注)ドレスコード有(コケっぽい服)
・予約はこちらまで/rokujigen_ogikubo@yahoo.co.jp
※内容は、前回の「コケナイト」と基本的に同じです。

 ☆ノー残業デーなので、コケに興味のある方、
  前回のイベントに参加できなかった方はぜひ!
  6次元店主さんのによると「スゴイ人気であっという間に
  予約が埋まりそうな感じです」とのこと。
  迷っている方はお急ぎくださいマセ。


●コケとキノコの観察会:7月24日(日)10時~15時
・千葉県野田市・東京理科大学野田キャンパスにて。
・ボランティア講師:コケ担当/藤井久子、キノコ担当/浅井郁夫さん 
・申し込み/中島啓光(世話人)さん宛てにメール。 h-nakaji@ynu.ac.jp

☆コケとキノコが両方楽しめるなんて・・・
 一応、講師だけど一番楽しみにしてるのは私かも。。


--------------------------------------------------------


少し前にも書いたが、『コケはともだち』が、
発行から1ヵ月余りがたち、おかげさまで発行2週間で重版、
ありがたいことにますますご好評を頂いているようである。

このニュースに嬉しさが込み上げると同時に、
私が最近とにかく驚いているのは、
コケのことが好きな人・気になっている人が、
いかに世間に多かったかということだ。


コケが植物の世界ではマイナーな存在で、
ときには「下等植物」とまで呼ばれて卑下されてきたように、
「コケが好き」という人も、人間界ではまだまだマイナーな存在だ。

なので、世に散らばるコケ好きさんたちは
たいてい普段は孤独な星なわけで。

たとえば日常生活で周囲の人たちに、
「実は自分、コケ好きで」と勇気を持って告白したとて、
そこから話題が広がる可能性はほぼ無いなので、
たいがいは忍の一字で、孤独のままじっとしているわけである。


しかし中には、どうにも湧き上がるコケへの探究心と
忍耐力の天秤がうまく釣り合わなくなってくる人がいて、
そういう人はやがて「岡山コケの会」や「日本蘚苔類学会」など
愛好会や学会の門を叩くようになる。

そしてそういった会に所属して初めて、
話の合う同志「コケ友(コケトモ)」を見つけ、
やっと自分の求めていた場所があったと安堵につき、
いままでよりさらに活発に、されど一般的に見れば相変わらず
ごくごく地味につつましくコケ道をまい進していくわけである。

自分を振り返ってみてもそうだったし、
私の周りのコケ友たちを見てもそういう人が多かった。

なので今回の本を出版するに際しても、
「コケ好き人口」というのは、まだ未知数ではあるものの、
やっぱりそんなに多くはないよなと高をくくっていたのだ。


しかし、前回のコケナイトはもちろん、
最近、ラジオなどに出演させていただく機会も得て、
DJの皆さんとお会いすると、なぜだか不思議なことに、
「コケ、いいですね!」「私もコケが好きなんです!」と
堂々告白してくださる方が、結構な確率で多いこと!

たとえば・・・

●6/1にお世話になったJ-WAVE『ランデヴー』の
 DJレイチェルチャンさんのブログ
http://www.j-wave.co.jp/blog/rendezvous/archives/2011/06/14/

●明日放送のTBSラジオ『永六輔 その新世界』で
 お世話になったラッキィ池田さんのブログ
http://blog.luckyikeda.com/?eid=1061322

なかには収録前から撮りためてきた
コケの画像を見せてくださるDJさんもいて、
いきなりのコケ好きさんたち&コケ好き予備軍たちの
続々登場に私も嬉しい反面、

「えっ! コケに興味がある人ってこんなにいたの!?」

と驚きを隠せない。


さらに、『コケはともだち』の
発行元リトルモアさんのリサーチによると、
今回の本の監修に携わってくださった
コケの研究者・秋山弘之さんの『苔の話』(中公新書)、
私がコケ初心者時代に最初にコケの面白さを説いてくれた
蟲文庫・田中美穂さんの『苔とあるく』(WAVE出版)、
さらにコケ散策にお役立ちのポケット図鑑である
『コケ(フィールド図鑑)』(井上浩著・東海大学出版会発行)など、
より専門的・学術的なコケ本たちも人気が再燃しているというではないか!


これはつまりは、『コケはともだち』を入門書として読まれた後、
コケに興味を持ってより深くコケの世界に入り込もうとされている方が、
たくさんいらっしゃるということではないだろうか。

ひょっとすると、いよいよコケが下等植物と呼ばれなくなる日が、
そして全国のコケ好きさん&コケ好き予備軍たちが、

「好きなものは、コケです!」
「興味があるものは、コケよ!」


と堂々胸を張って言える日が、
ちょとずつ近づいているのかもしれない。


  
▲ラッキィ池田さんとのラジオ収録は、
 本物のコケPOPが置いてある吉祥寺の「BOOKS・ルーエ」で。
 同店の名物書店員である花本さんも一緒にパチリ!