かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

よいお年を

2010-12-30 05:31:49 | コケをめぐる旅
あっという間に師走も30日で、
今年も残すところあと1日。

年末の忙しなさに追われていたら、
このブログの更新も今年はこれで最後になりそう。


コケに興味のある方も、ない方も、
今年もお世話になりました。


ここをのぞいてくださるみなさんに、
ひと足早い、お年「玉」を。



▲タマゴケ(玉苔)のタマちゃん。



それではよいお年をお迎えください。
来年もまたよろしくお願いします。

ミクロ世界のトップランナー「ユウレイホウオウゴケ」

2010-12-21 11:52:06 | コケをめぐる旅

▲さて、この中には何種類のコケがいるでしょうか?
 (2010.12.5鎌倉の天園ハイキングコースにて)



師走もあっという間に半ばを過ぎ、
ブログ更新もままならないまま、
バタバタ続きの今日この頃。

12月も2回も鎌倉へ行くことができ、
その収穫をこのブログにまとめておきたいのだが、
いかんせん時間がない・・・。汗


ということで、今回は短縮版でお届け。


トップの写真は12月5日に行われた、
「岡山コケの会」主催の鎌倉コケ散歩のイベントで、
山中のハイキングコースでの1枚。

  ※岡山コケの会:専門家・愛好家問わず会員になれるコケ好きたちの集団。
          当ブログの左にブックマークしています。


ブログ用サイズの小さな写真なので、
上のクイズに答えろと言うのはちょっと無理難題だったが、
実は3種類のホウオウゴケの仲間がくっついている。

<答え>
・ホソベリホウオウゴケ
・コホウオウゴケ
・ユウレイホウオウゴケ


ホウオウゴケの仲間は世界に約900種、
日本にも40~50種存在するという。

基本的に他のどの植物と比べてもサイズが小さいコケの中でも、
この仲間はとくにからだが小さく、その多くは茎の長さがわずが1㎝前後。

とりわけユウレイホウオウゴケは、
「コケの中でも最も小さい種」のひとつと言われ、
植物体のサイズはミリ前後。

採集や分類がとても困難な、
研究者泣かせのコケなのである。




▲藻のようにベタッとした緑っぽいのが、ユウレイホウオウゴケ。


このベタッとした緑の主となっているのは、
固体が成熟してもなお残っている原始体である。
葉や茎もあるのだが、小さくてほとんど判別できない。

  ※原始体:胞子(コケの種のようなもの)が発芽した次の成長段階で、
       顕微鏡で見ると糸状をしている。コケの赤ちゃんのようなもの。




▲アップ(ややボケですが…)。赤いのは。これだってせいぜい1mm程度。


  
このコケについては名前にインパクトがあるので、
その存在だけは知っていたけれど、何せこの小ささ。

私のような素人ではいつまでたっても見つけられそうもない。


事実、石を差し出され、「ここの部分にありますよ」と言われても、
「え?どこどこ?」としばらくワタワタしてしまった。


このコケを見つけられたのは、引率のK先生。

いくら専門家とはいえ、木々がうっそうと茂るこの山道の中で
こんなミクロのコケをどうやって見つけているんだろう。

不思議に思いたずねると、

「目で見つけるというよりも、周囲の環境からありそうだなと判断して、
 探せば出てくることがある、そんな感じですよ」

というようなお答えだった。

なるほど~。



▲こういう雑木林の中を散策。ほかにもアブラゴケなどにも出会った。

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最後にどうでもいい話だけれど・・・。
短縮版とか言っといて、いつもと変わらぬこの長文・・・。

結局、いったん書き始めると止まらなくて長くなってしまうなぁ。
 

「苔のつぶやき」

2010-12-13 19:06:26 | 文系女子のコケ目線
少し前のことになるが。

11月中旬、ご近所つながりで親しくさせてもらっている
書道家のMさんから久々にメールをいただいた。


「本日、相田みつを美術館にて感銘を受けた詩があり、
 ぜひお伝えしたくなりました」との趣旨。


はて?どんな?


メールを読み進めると、コケをテーマにした詩なのだという。


以前、お会いしたときに世間話が広がって、
聞かれてもいないのについつい私がコケの魅力について
熱っぽく語ってしまったせいだろう。

Mさんはそのことを憶えていてくださったのだ。


今日はその詩をここで引用・紹介したいと思う。

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「苔のつぶやき」


わたしには殆ど陽が当たらない


わたしには杉の木や松の木のように
高くてカッコいい姿にはなれない


その代りどんな風が吹いても
倒れるということがない


わたしには初めから
倒れるだけの高さがないから

(作:相田みつを ―1980年ごろの作品―)

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もともとコケに対して持っているイメージや、
いま自分の置かれている境遇など、
自分次第でこの詩の感じ方はさまざまだろう。

そもそも芸術というものが、そういうものにちがいない。


ちなみに私はこの詩に対して
なんだかよくわからないけれど、
心が波立った。

これを、なんと言葉に表せばよいのだろう。


他と比べはじめたらキリがないけれど、
コケは自分が「小さいこと」をもう十分に知っている。

だからこそ、他の植物には真似できない
しなやかさやしたたかさでもって、
胸を張って生きている。

それがいいんじゃないか。


なんとなく人の人生にも通ずるような
そんなイメージが湧いて、
心が波立ったのかもしれない。



その後も、なんとなくこの詩のことが気になっていて。

2週間後、実物をひと目見たくて
有楽町にある相田みつを美術館へ行ってきた。


残念なことに、館内の作品は定期的に
入れ替え(3ヵ月間隔だったかな)をしているそうで、
行った日がまさに入れ替えて初日だったため
お目当ての詩はもう展示されておらず、
販売されていた詩集を見るだけにとどまった。


でもまた別に、コケを取り上げた
もっとシンプルな詩が展示されていたので、
こちらも引用・紹介しておく。

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「雑草」


雑草のように

苔のように

(作:相田みつを ―1990年頃の作品―)


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すごくシンプルです。えぇ。


ただ、実際に生でご本人の書かれた
文字を見ると、また趣が変わってくる。


私が行った時にはコケを取り上げた詩はこれだけだったが、
コケの有る無し問わず、他にも人生の悲喜こもごもを
巧みに歌った詩が数多く展示されていた。

失礼ながら、いままで相田みつをさんに
さしたる興味がなかったため、正直、驚いた。


とくに自分の心に響いた何点かの作品には、
「いのちの根っこ」みたいなものを
強くしてもらったような、静かな感動をいただいた。



▲長野県上田市の道端にて(2010年9月下旬) 

道端の定住者

2010-12-06 12:21:11 | 近所のコケ

▲ブロック塀の足元。落ち葉にまぎれて、青々とコケが輝く。



先週、東京では2日ほど雨が降り、
そのおかげでコケはいきいき。


さっそく身近なコケをチェックするため
家の近所にある「秘密の花園」ならぬ「秘密のコケ園」へ。


とりたてて広い場所ではないのだが、
そこはもともとサイズが小さなコケのこと。

ここへ来ればいつも4~6種くらいのコケと出会える。




そこで今回、発見したのが、これ。




ん? よくわからない?



これですよ、これ!


▲右からギンゴケ、ハマキゴケ、ホソウリゴケの貴重なワンショット!



実は私はひそかに彼らを「道端の定住者」と呼び、慕っている。


とりわけ乾燥に強く剛健なのはギンゴケの「銀さん」。


ホソウリゴケ、ハマキゴケ、そして(この写真にはないけど)チュウゴクネジクチゴケは、
コンクリートやブロック塀の上でお互い切磋琢磨しながら群落を広げていく、
仲良しトリオ、「道端の御三家」である。



つまりこの画像は、4者中3者が一堂に会し、
そのうえ彼らの特徴がとてもわかりやすい形で
出ているという点で、貴重なワンショットというわけだ。



たとえばギンゴケは、ギンゴケらしく緑がかった白銀色に輝き、
小ぶりの群落ながら、独特の存在感を醸し出している。





また、自分の群落に他者が割り込んできても、ついつい許してしまうハマキゴケは、
今回も見事にホソウリゴケとギンゴケに割り込まれ、ちょっと困り顔。





ホソウリゴケは天真爛漫。饅頭状の大きな群落を作り、
さらに第2、第3の群落をどう広げていこうかと、今まさに画策中のご様子。





たかがコケ、されどコケ。


こうして見ているだけでも3者3様の性格が
はっきり出ていて、とてもおもしろい。



道端の定住者たちは、いずれも街を愛するシティ派。
あなたのご近所には誰がいるか、ぜひチェックしてみてほしい。




▲顔を上げるとブロック塀の上にいたカマキリと目が合った。
お腹のふくらみ具合から見ると出産間近かな。

香嵐渓のコケ ~弟からのコケレポート~

2010-12-01 14:13:52 | コケをめぐる旅

▲ほぅ。秋らしい。




2週間ほど前、名古屋にいる弟から電話があった。

彼のほうから電話なんて珍しい。
いったいどうしたんだろう?

そう思いつつ電話口に耳を傾けていると、


彼は開口一番、


「いま、香嵐渓に来てんねんけど、めっちゃコケあんで!」


と興奮ぎみに一言。



「え? こ、こうら・・・?」


「こ う ら ん け い!」



香嵐渓は、愛知県豊田市の紅葉の名所で、
毎年11月が見ごろという。

弟は噂を聞いてふらりと来てみたのだが、
紅葉の美しさはさることながら、
コケの豊富さにびっくりして電話してきたとのこと。



本人いわく、


「このコケスポットを、ご報告したくて・・・」


となにやら含みのある口調。



さらには、


「いやー、コケがすごいわ。紅葉とのコントラストがきれいやわ」

「ここのコケスポットはすごい!来てよかったぁ!」


と電話口でうれしそうに繰り返す。



くー! 弟め、たまの電話で珍しいと思いきや、
さては姉をうらやましがらせようと電話してきたな。


私もすかさず食い下がり、


「そんなに言うのなら具体的に見たいから、ぜひその画像を送ってよ」


と、証拠物品の提出を要請。



そして先日、画像の入ったCDが送られてきた。

彼が「藁葺き屋根のコケがすごい」と
話していたのがトップの画像。


うーむ、たしかに!すごいボリューム。
こんなコケと出会えたなんて。
あぁ。やっぱりうらやましいなぁ。



せっかくなので他にも何枚かご紹介しよう。



▲屋根の下には、人・人・人。受付かな?




▲行ったのは平日だったが、かなり混んでいるよう。



▲屋根のコケをアップで。これだけ見るとまるでコケ大草原。そして秋らしい色あい。



▲さらにアップ。このふわふわと羊毛みたいに温もりのあるかんじはハイゴケ科かな?



▲こちらは相変わらず青々としたコスギゴケ(たぶん)



▲こちらも秋らしいコントラスト。イチョウとコバノチョウチンゴケ(たぶん)




コケの緑と紅葉の赤、この秋ならではの風景。

時すでに遅しかもしれないが、
私も自分の体で堪能しに、
どこかへ出かけたくなってきたなぁ。