かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

スプリングエフェメラル

2013-04-25 19:36:35 | 文系女子のコケ目線


この春はどういう星のめぐり合わせか、
コケに関するイベントと普段のライター仕事の締切りが
前代未聞に集中していて、現在もそれが進行中である。

さらにこのタイミングで風邪と花粉症を患うというWパンチで、
ただでさえ集中力が短くて困ってるのに、いつも以上に意識が散漫に・・・。

そんなわけで、ついついブログの更新が
後回しになってしまっているのだが、
これは春のうちに記しておかねばと思ったのが、
少し前に読んだの中に出てきた
「スプリングエフェメラル」という言葉についてだ。

 ※:「原寸図鑑 ののはなさんぽ -多摩ニュータウンのいちねん-」(五味岡玖壬子著/けやき出版)


エフェメラル(ephemeral)とは、ギリシャ語の、
「エフェメロス=1日だけの命」からきた言葉で、
Spring ephemeralは日本語に直訳すると
「春の儚い命」というような意味になるらしい。

同書には、詳しくこう書いてある。

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スプリングエフェメラル 早春季植物

芽吹き前の落葉広葉樹の林で花を咲かせえて、
ほかの植物が茂る前に地上から姿を消してしまう植物のこと。

アズマイチゲの他、カタクリ・イチリンソウ・
ニリンソウ・フクジュウ・セツブンソウなどがそうです。




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植物全般がお好きな人、山野草などに詳しい人は
当然のように知っている言葉なのかもしれない。

しかし、お恥ずかしながらコケばかりに気が向ているワタクシ、
この本に出会って初めてこんな言葉があるのだと知った次第。

春のあけぼの、うっかり二度寝をして、
その僅かな時間で見た夢のような、
言葉自体もなんと儚く美しい響きであることよ、と
ページをめくりながら、思わずうっとりしてしまう。

早春にあっという間に葉を広げて花を咲かせ、
他の植物が葉を広げる前に姿を消すのは、
要は、他の植物と下手に競わず、
効率よく日光を得るため(そして栄養を蓄えるため)の
ある種の植物たちの処世術なのだろう。

でもこれって、コケにも同じことが言える。

コケも、大きな植物が枝を伸ばし葉を展開し、
その足元に日陰を作ってしまう前に、
早春のうちから新芽を出したり胞子を飛ばしたりして、
ある程度の成長を遂げる。

そこで姿までは消してしまわないけれど、
苔類(たいるい)のグループの
コケがつける胞子体については、
まさに早春の儚い命だ。

あっという間に柄を伸ばし、
パッと胞子を散らして風に飛ばしたら
ほどなくして朽ちていく。

だから胞子体に出会えるのは、まさに時の運次第。
出会えたらそれだけで今日はラッキーだったと嬉しくなる。



▲半透明の柄で先が黒くて丸い、まるでマッチ棒みたいなものが胞子体。コアミメヒシャクゴケ。(2013年3月 屋久島)


▲黒い部分がはじけて、胞子が飛び散る。苔類だけど、なんの種類かわからず。(2013年3月 屋久島)


▲エゾミズゼニゴケ(だったかな!?)の胞子体。オリーブ色をしてました。(2013年3月 屋久島)


▲マキノゴケの胞子体。 (2013年2月 宮崎)


▲同じくマキノゴケ。ただしこちらは4月の関東地方で撮ったもの。(2013年4月 鎌倉)


▲茶色っぽい綿のように見えるのは「弾子(だんし)」という。
 胞子の粒と一緒に(サク)の中に詰まっていて、乾湿運動によって弾け胞子をより遠くへ飛ばす役割をする。


▲ジャゴケの胞子体はまるでキノコのよう。(2013年4月 鎌倉)


▲こちらはヒメジャゴケの胞子体が出かけているところ。 (2013年2月 宮崎)


▲ヒメジャゴケの胞子体が伸びたところ。 (2013年4月 鎌倉)


▲ジンガサゴケの群落。いっせいに胞子体を伸ばしている。 (2013年4月 伊豆)


▲傘の下に胞子の詰まった(サク)がある。若いものは黄色、熟すと黒くなるみたい。



▲いまにも弾け出さんばかり。ちなみに胞子の色は黄褐色という。


振り返ってみればこの春も、
スプリングエフェメラルなコケたちの姿を
いろんな所で目にすることができたのだなぁ。

きっと、いまごろあの胞子体たちは
もう姿を消していることだろう。

マンションの3階にある自宅の窓から、
柿の木が若葉を茂らせているのを眺めつつ。

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<お知らせ>
岡山コケの会関東支部イベント、「こけティッシュ 苔ワールド!」プチ観察会付きツアーの
参加者を現在募集中です(まだ定員までもう少し余裕があります)。

開催は5月26日(日)。茨城県自然博物館で開催中のコケの一大企画展を見学し、観察会も行います。

オカモス会員はもちろん、もし入会しようか迷っているコケ好きの方も、
お試し参加アリですので、興味がある方は岡山コケの会ホームページの案内をご覧下さい。

●岡山コケの会HP
http://www.okamoss.main.jp/?eid=83


【満員御礼につき募集締め切り】さらにコケ情報:5/25(土)第5回コケ観察会

2013-04-09 10:44:46 | 近所のコケ


※以下のイベントは、満員御礼につき申し込みを締め切りました(2013.4.28追記)

コケ初心者に向けた毎年恒例の観察会が今年も開催されます!

講師はコケ友の中島啓光さんです。

東京理科大のキャンパスのコケ類とさらに地衣類について、
中島さんの説明を聞きながら、観察することができます。


<第5回 コケ観察会>

●日時:2013年5月25日(土)東武野田線 運河駅に11:00集合
    ※お昼ごはんを挟んだ観察会です。

●場所:東京理科大野田キャンパス&自然公園

●講師:中島啓光(横浜国立大学大学院 研究教員)

●申し込み:メールにて受付中。中島さん h-nakaji●ynu.ac.jp まで(●を@に変えてください)

●定員:10人

●参加費:無料

    ※申し込まれた方には、当日の持ち物などについて、
     中島さんから直接メールでお知らせします。


実は私も過去4回、ボランティア講師として参加せていただいた同観察会ですが、
今回は日程の都合がつかなくて参加できず・・・いやはや残念無念です。

参加される皆様、どうぞ楽しんできてくださいね。

またまたコケ情報/ヤクシマゴケ

2013-04-05 10:03:33 | コケをめぐる旅

<私信> 
昨日4月4日に「世田谷コケ散歩」(4/27開催)の申し込みを、
ドコモの携帯からメールくださった I 様(イニシャル C . I 様)


お申し込み受付についてこちらから返信したのですが、
携帯以外のメールのブロック設定をされているのか、
こちらから何度メールを送っても、戻ってきてしまいます。

このブログを見られましたら、携帯の設定を変更していただくか、
もしくは連絡が取れる他のメールアドレスを教えていただくか、
どちらにせよその旨、ご一報いただけますでしょうか?

お手間をおかけしますが、どうぞよろしくお願いします。

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さて、暖かくなってすっかりコケの季節到来!ということで、またまたコケ情報です。

◇6/29(土)「コケ類入門講座:コケ類観察の基本テクニック」(日本蘚苔類学会・国立科学博物館共催)

国立科学博物館の樋口正信さん(蘚類担当)と千葉県立中央博物館の古木達郎さん(苔類担当)による
毎年恒例のコケ講座が、今年も行われます。すでに参加申し込みがスタートしているとのこと。

コケ初心者を対象に、コケの観察方法と
そのポイントをわかりやすく解説してくださる講座です。

お二人とも初心者のなにげない質問にも懇切丁寧に答えてくださる先生方です。
過去に私も参加したことがありますが、「コケを知りたい!」と思いつつ「どうしていいかわからない!」と
普段モヤモヤしている初心者にはうってつけの講座かと思います。

申込方法など詳細はこちらへ(6月8日 締切) → http://www.kahaku.go.jp/event/all.php?date=20130629



◆4/6(土)23:00~ BS日テレ「中川翔子のマニア★まにある」

明日からスタートする新番組なのだそうですが、
その第1回・2回の特集がなんとコケ!

タイトルが「苔女(コケジョ)・苔を愛する人とは? 」とあります。

http://www.bs4.jp/manimani/

この番組に私は何もかかわっていないのですが、
実は企画段階の時にテレビ制作会社の方から
メールでちょっとした打診がきまして。

その際には、日常生活で趣味として“苔”の世界にハマッている
20代~30代ぐらいの男性か女性にフォーカスする内容とのことでした。

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【シリーズ】屋久島で出会ったコケたち

Mar. 3, 2013

淀川(よどごう)登山口から車で下山中。

コケ好き女子たちのアツ~いリクエストに現地ガイドのOさんが応えるべく、
わざわさ途中で車を止めて教えてくれた、お気に入りのヤクシマゴケ群落。

世界では、東南アジア~東アジアにかけて分布しているヤクシマゴケ。
しかし日本では1911年に初めて屋久島で発見されて以来、
他地域ではいまだ発見されていないというから、
まさに国内ではここでしか見ることができない貴重なコケといえる。



▲かがんでいる人をスケールにして見るとおわかりのとおり、岩肌を地面からの高さ3メートル以上も覆っているという大群落!
 写真に収まりきれていないが、横幅も4メートル以上はあった。



▲コケだけど赤いのがヤクシマゴケ最大の特徴。わりと日当たりのいい、それでいて水がしたたるような岩肌がお好き。
 ちなみにこう見えて苔類だ。図鑑によると「茎の長さは2~6センチ」。かなり大型の苔類だ。



▲群落全体をよく見ると赤いものばかりでなく、やや緑色が残るヤクシマゴケも入りまじっている。

 
葉を赤くするのは紫外線から身を守るための対策という。
同じひとつの群落とはいえ、微妙な光の当たり方の違いで、
濃い赤になったり、薄い赤になったり、はたまた緑色のままだったり。

水に濡れた色とりどりの輝きを見ていると、
なんだか玉虫を見つけた時にも似た、華やいだ気持ちになる。


ヤクシマゴケ/Isotachis japonic(イソタキス ヤポニカ) (屋久島 2013年3月3日)


春のお知らせ、あれやこれや。

2013-04-01 12:35:18 | 東京コケスポット


東京は急にぐっと寒さが戻ったような週末を経て、桜も見納め。
今日から新年度ですが、またうららかな日が戻ってきました。

4月にいくつかコケのイベントを行うので、今日はそのお知らせを。


◆4月17日(水)19時~21時 「コケ好き集まれ! ~ルーペから見える宇宙への誘い~」
まさかまさかの6次元(東京・荻窪)でのコケイベント第3弾。
今回は主催が風の旅行社さんです。

なんか宇宙を掲げた壮大なタイトルになっていますが、
コケをテーマにおさんぽや旅行がしてみたい方に向けた
お話しをしたいと思っています。

屋久島(鹿児島)から奥入瀬(青森)まで、
各地の魅惑のコケレポートなども織り交ぜながら。

ご興味のある方はぜひいらしてくださいな。


申し込みは風の旅行社へお願いします。→こちらへ 


◇4月27日(土)13時30分~15時半 「IID GREEN DAY vol. 9 世田谷コケ散歩」

世田谷ものづくり学校で行われる「GREEN DAY vol.9」に参加します。
みどりを知り、みどりに触れるワークショップの一つとしてぜひコケも!ということで
キュレーターの石田紀佳さんからお声がかかりました。

「世田谷コケ散歩」と題して世田谷ものづくり学校の敷地内や近隣の世田谷公園で
主にシティ派のコケと親しむ、気軽な観察会をしたいと思っています。

やはりこちらもすでに申し込みが始まっているので、
ご興味のある方は→ こちら


◆5月3日(祝・金)13:30~16:00 「コケに魅せられて」

先のブログでも紹介した茨城県自然博物館で
現在開催中の「こけティッシュ 苔ワールド! ―ミクロの森に魅せられて―」」の
企画展記念イベントに参加します。

いよいよこの日がやってきた!という感じで、
3人のコケ研究者の方々と同じ舞台で話すのは
いまから緊張感が半端ないのですが、
コケの魅力や一般人ならではのコケの楽しみ方を
お話したいと思っています。

すでに企画展にいらっしゃるご予定を立てておられる方、
ぜひこの日にあわせてお越しいただけると嬉しいです。

お申し込みは→ こちらへ   


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◇【満員御礼】4月21日(日)13時~ 「コケと親しむ みどりのトレーニング」

編集者で世田谷ものづくり大学では出版講座なども開かれている
クラウドブックスの鈴木収春さんとのご縁がきっかけで、
園芸家の塩津丈洋さんと3人でイベントをさせていただく運びになりました。

どんなイベントかというと、企画概要は↓こちら↓

鈴木さんのHPより)

潤いのある緑で見る者の心を和ませてくれるコケ。
近年のミニ盆栽や苔玉ブームなどで、
誰もが気軽にコケを暮らしに取り入れることが
できるようになりました。

しかしその一方で、家で育てていたらコケが枯れた、カビた等、
コケにそっぽをむかれるような経験をしたことがある人も少なくないはず。

せっかくコケをわが家にお招きするなら、
コケにもニコニコ、居心地よく暮らしてもらいたい。

そのためには、私たちはもっとコケの生態や
個性を知る必要がありそうです。

「コケトレ」は、ベストセラー『コケはともだち』著者・藤井久子さん、
塩津丈洋植物研究所・塩津丈洋さんというふたりのコケマニア(コケラー?)を
ナビゲーターに迎え、コケを楽しみ、コケに寄り添い、コケと仲良なる方法を探っていく、
ひいては地球全体のみどりとの付き合い方も考えるためのトレーニング講座です。

開催は月1回。毎回1種類のコケにフォーカスを当て(第1回はギンゴケ)、
コケのお話とともに小さなコケのお鉢をつくるワークショップも行います(持ち帰りいただけます)。


すでに第1回ギンゴケの会は満員御礼ということで、
募集は「キャンセル待ち」状態となっていますが、
今後も毎月1回の連続講座(1回きり参加もOK)を予定してますので、
次回は間に合うようにこのブログでも告知したいと思います。

 ※塩津丈洋さんのブログ → こちら

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最後の最後になりますが、雑誌を2冊紹介。

バタバタしていて宣伝するのが遅くなりましたが、
現在発売中の「山と渓谷4月号」の書評ページに、
僭越ながら『コケの自然誌』の書評を書かせていただいています。



この本に出会えてよかった!と思える一冊でした。
よかったら読んでみてください(雑誌が店頭に並んでるのはたぶん4月14日くらいまで)。





さらに!昨年、青森県・奥入瀬で立ち上がったモスプロジェクト(現・奥入瀬自然観光資源研究会)の事務局長であり、
地元の自然ガイド、執筆家でもあられるノースビレッジの河井大輔さんに、
北海道の自然雑誌『ファウラ』誌上で拙著『コケはともだち』を紹介していただきました。




見本誌を送ってもらったので雑誌全体も読ませていただいたのですが、
特集は「野の花・山の花」、さらにコウモリの特別企画や
キノコの連載など興味深い内容が多く、すごく力の入ったローカル誌だとびっくり。

東京だとローカル誌といっても街のグルメ情報やイベント情報が主流のものばかりで、
ほとんど手に取らないのだけど、さすが自然に恵まれた北海道。
こういう雑誌が身近にある環境がうやらましいです。