かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

伊豆のパワースポット、ミカン畑でコケ観察

2010-11-25 16:23:13 | コケをめぐる旅

▲ミカン、ゼニゴケ、コスギゴケのスリーショット。



先日、静岡県で農業をされているJさんのお誘いで、
友人と共に伊豆半島の沼津まで行ってきた。

沼津は伊豆半島を矢印の形(↓)に見立てたら
「V」の左側の先っちょあたりにある町だ。


今回の目的は、ミカンの収穫。


収穫するのは地元名産の西浦ミカンで、
いわゆる冬のおこたで食べるのに定番の「温州ミカン」である。


ちなみに私は故郷が西にあるせいか、
そもそも伊豆がミカンの一大産地だということすら知らず・・・。
ミカンといえばつい和歌山・愛媛を思い出してしまう。


しかし実際に沼津に行ってみると、気候は温暖、目の前は駿河湾、
海を望む斜面に畑があるので海からの照り返しという日当たりのよさもあり、
まさにミカンを育てるのにバッチリのロケーション。


さらにJさんのイチ押しは、
駿河湾の向こうにそびえる雄大な富士山の眺め。


Jさんいわく、

「青い海とセットで富士山が望めるミカン畑は、伊豆のパワースポット!」

とのこと。





▲ミカン畑からの眺め。みかんの葉で隠れてしまったけど、左側に富士山があるのです。




▲「はやく摘んでくれー」と言わんばかりにたわわに実ったミカンたち。




当日は天気も快晴、さらにミカンのオレンジ色も映え、
その中で手足を動かしてミカンを収穫するのはとても気持ちのよい作業だった。



▲ミカンを摘むときのハサミの入れ方を教わる。ちなみにミカンの木は隔年で実をつけるのだそう。



▲てっぺんの実は脚立に乗って収穫する。両手が空くよう、肩掛けカゴは必須。




▲あっという間にカゴいっぱいに収穫。



▲それをのちほど出荷。この中から40個ほどお土産にいただく。




そして、ここでも思いがけずコケとの出会いが。


今回はミカン収穫が目的だったので、
コケのことなどつゆも気にしていなかったのだが、
ミカンの木の下でコケたちが気持ち良さそうに
群落を作っているではないか。



▲手前にゼニゴケ。日当たりがよいせいか、スクスクと育っているご様子。



これを見てしまうと、やはりコケ好きとしては
地面にはいつくばってでも観察せずにはいられない。


収穫作業の合い間に、しばしのコケタイム。




▲ゼニゴケだけかと思いきや、をつけたコスギゴケもいた!



コケに夢中の私の背中にJさんは、

「コケって本当にどこにでもいるのねぇ。
 でも、それだけ出会いがたくさんあるってのも、コケの魅力よねぇ」

とひと言。



それを聞いて、

「そう!そうなんだよなぁ」

と納得していると、
今度は目の前のゼニゴケの雌株たちが
ちょうど胞子を飛ばそうとしているではないか。


▲雌株に生えるヤシの木似の雌器托(しきたく。造卵器のある部分)。
 黄色い胞子はまるでヤシの実。



「おぉお。すごい!これはちょうどいいタイミングで出会った!」


これまた嬉しくて一人で感嘆の声を上げていると、
そばでミカンを摘んでいた友人Aちゃんも気になったのか、
「どれどれー?」とこちらに来て一緒に観察。


実はもともとはまったく
コケに興味がなかったAちゃん。

しかしこの1年くらいかけてじわじわと洗脳・・・
いや、コケの魅力を伝え続けているので、
ここ最近はコケに対して非常に反応がいい。


どうやら這いつくばることにも、
もう抵抗がなくなったようだ。

「シメシメ。もうちょっとでコケ友ゲットだな」

と心の中でほくそ笑む私。




▲また別の木の下には黄緑色をしたポコポコと丸い集団が。



▲朝露にぬれてしっとり。指でなでてみるとベルベッドのようでキモチイイ!!



▲家に帰って図鑑で調べてみたところ、色と生育地からツチノウエノコゴケではないかと推測。


  ※ツチノウエノコゴケ (『校庭のコケ』より抜粋)
    全国の低地に広く分布する。都市部でも普通。
    名前の通り、日当たりのよい土の上に生える小さいコケである。
    裸地や花壇に多い。黄緑色。茎は直立し短くてほとんど枝分かれしない。
    
 

収穫したばかりのミカンをいただきつつ、
視界には立てば富士山、座ればミカン畑、そして下を向けばコケと、
あらゆる方向からパワーをいただいた一日だった。




▲収穫作業後。ミカン両手にポーズをキメッ。



▲お昼は湾岸まで降りて地元民に人気という食堂へ。アジのたたきがのった出汁茶漬け。おいしかった。

テレビ朝日「奇跡の地球物語」にてコケ特集

2010-11-18 19:30:32 | 文系女子のコケ目線
もうすでに放送されてしまったのだが・・・。


毎週日曜の夕方、「サザエさん」と同時刻、
テレビ朝日で「奇跡の地球物語」という番組がやっている。


こないだの14日(日)は「京都晩秋」と題したコケ特集だった。


私はこの時間に家にいるときはいつも「サザエさん」の方を見てしまうため、
この番組のことをほとんど知らなかったのだが、数日前にコケ友のよ2さんから
今回の特集のことを教えてもらっていたので、見ることができた。


番組は30分と短い時間ながら苔庭の美しさに限らず、
コケが生まれた歴史から、コケの栄養の摂りかた、
コケは大きく分けると蘚類・苔類・ツノゴケ類があること、
そしてそれぞれのからだの違いなども図解で詳しく説明。

なかなか見ごたえのある番組だった。


当番組の公式サイトにその概要が載っていたので、
興味のある方のために紹介しておこう。


●「奇跡の地球物語 京都晩秋Part1 ~美しき古都を訪ねて~」
http://www.tv-asahi.co.jp/miracle-earth/backnumber/20101114/index.html



なかでも私がとくに印象に残ったのは(公式サイトにも書かれているが)
大原・三千院を開いた伝教大師が残したこの言葉。


「等持定理青苔地」

これで「とうちじょうりせいたいち」と読む。


木々は風が吹けばざわめくが、
コケはどんなに風が吹こうと、
何があろうとざわめくということがない。

「等持定(=すなわち禅の境地)というのは、
コケの大地のような静寂の境地であり、
まばゆい緑の大地は心の平穏を表している」

という意味をもつ言葉なのだそうだ。


たしかにコケはとても小さいので
風が吹き葉がなびいても、音ひとつしない。


大地一面に広がるコケたちが音もなく風に揺れる光景は、
イメージしただけでもなんとも神秘的。

なんだか心の中の時間が止まったような、
もしくは時間という枠そのものが
あってないもののような不思議な心持ちになる。


それが禅の境地に繋がるのか私にはちょっとわからないが、
先人の言葉に「コケから教わることはまだまだありそうだ」と思いを新たにした。




衝撃の鎌倉コケ散歩

2010-11-17 13:45:02 | コケをめぐる旅

▲はたしてこの壁だけで何種類のコケがあることやら。



11月3日、文化の日はお寺好きのTちゃんと北鎌倉へ。


円覚寺と建長寺では寺内に保管されている
宝物(ほうぶつ)の保存維持のため、
毎年この時期になると風入れを兼ねた宝物展が催される。


3~5日の限定公開ということで、
混雑を見越して朝9時にTちゃんと北鎌倉集合。

やはり予想通り宝物展目当ての人で
駅の狭いプラットホームはごった返していたが
朝一番に訪れた甲斐あって寺内は意外と空いていた。



▲円覚寺前にて。



私はお寺や仏教には全然詳しくないのだけれど、和のものは全般的に好き。


中国の宋や明から日本に渡ってきたという絵巻や衣服、
後醍醐天皇、北条貞時、足利尊氏など歴史的有名人たちの直筆の書、
応挙や雪舟の墨絵など、普段はなかなか見られない芸術品が
数百点も目の前で見られたのはとても心豊かになる体験だった。



なかでもとりわけ、Tちゃんと私の目を引いたのが円覚寺で展示されていたコレ!



▲白沢さん
  
   ※「くすりの博物館」http://www.eisai.co.jp/museum/history/0100/sub0100.htmlより画像を拝借。
    何人も書き手がいるらしく、円覚寺の展示物はこれとはややタッチが異なる。



「しろさわ」ではない、「はくたく」と読む。


柱にちょこんとかけられた比較的小さな墨絵だったのだが、
解説を読むとこの白沢さん、「宝物風入れの守護神」というではないか!



「えっ、このおじいちゃんみたいな人面牛が!?」


と私もTちゃんもびっくり。


「こんな老いた人面牛に果たして
数百とある貴重な宝物を守りきれるのか!?」


と心配になりつつも、


「宝物展が無事に成功するよう、ワシが今年も一肌脱ぐかぁ」


と毎年この時期になると曲がった腰を上げて
縁の下の力持ち的に一人でがんばっているのかと思うと、
なんだか、けなげすぎて萌える。



ちなみに帰宅後、白沢さんについてネットで調べたところ、
なんと麒麟や鳳凰などと似た類で、けっこう徳の高い聖獣とのこと。


また、人の言葉もわかるらしいので、
私たちの「白沢=老いた人面牛」発言は
きっと彼の耳に届いていたことだろう。


失礼なこと言ってごめんなさい、白沢さん。


●白沢(はくたく) <ウィキペディアより>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E6%BE%A4



そんなこんなで、円覚寺・建長寺の宝物展を満喫。


そして、ここからがコケに興味のあるみなさんに
ぜひお伝えしたい情報なのだが、
この2つのお寺の境内はとってもコケが豊富!


いずれのお寺も拝観料がいるため、今までノーマークだっただけに、
こんなにコケむしている場所があるとは私にとっては衝撃の事実!


   
▲円覚寺にて。


   
▲建長寺にて。



いずれも全部載せきれないのでその一部だが、
コケ観察をしたい人にはとてもよいスポットだと思う。


とくに建長寺の参道にある水路の壁面(下段の右画像)は、興味深いコケがいくつも。
でも水路にはばまれて手が届かず、なんともどかしかったことか!




▲水路の左脇に、なんか緑のかたまりが・・・




▲アップにすると、こんなかんじ。ホンモンジゴケじゃないかと思うのだが
(いかんせん、水路があるので間近で見られず・・・)




▲もう1ヵ所あった! この山のようなボコボコ、もとからあった石とかじゃなくて、
 コケが何年もかけて厚い層を築いているのではないかと推測。



この魅力的コケスポットの発見に、

「ここのコケ、ヤバイ! スゴイ!」

と私はしばし興奮気味。



かなり大きな声でひとり言を連発していたらしい。
少し離れたところで建物を眺めていたTちゃんが、


「この子を一人にさせてたら、怪しすぎる!」

と急いでそばにかけ寄って来てくれた。



自分の寺鑑賞もそこそこに、ありがとう!Tちゃん!
おかげさまで心ゆくまでコケを観察することができました。(←ただの迷惑者)




そしてさらに、私を興奮のルツボにおとしいれたのが、
コケの茂みからにょきっと伸びていたキノコ集団。



▲なんじゃこりゃ。見たこともないヘンな形!


クリーム色で、いびつなウサギの顔みたいな形。
耳の部分はくるっと巻き込まれ、真上から見るとてっぺんは空洞になっている。


この衝撃の発見により、さらに私はこの場に留まること20分(Tちゃんゴメン・・・)。



数日後、兵庫県にいらっしゃる「人と自然の博物館」の秋山さんに
(コケがご専門でありながら、キノコにも精通しておられる)、
メールでおたずねしたところ「アシボソノボリリュウタケかも」とのこと。


最初は「新種発見かも」と
内心ドキドキしていたのだけど、
やはり知られた種類であったか。



<今回出会ったコケたち>
・ウマスギゴケ
・ジャゴケ
・ヒメジャゴケ
・ケゼニゴケ
・エビゴケ
・ホンモンジゴケ(たぶん)
・ホソバオキナゴケ
・ハマキゴケ
・コバノチョウチンゴケ・・・などなど

   


▲上はケゼニゴケ。下はちょっと何コケかわからず。後ほど図鑑で調べるつもり。



Tちゃんとは来月も鎌倉散歩へ行こうと約束。

これで今年は春夏秋冬、季節ごとに鎌倉を訪れることができそうだ。
幸せだなぁ。でも鎌倉がもっと近ければなぁ。



●おまけ。こういう楽しみもあるから鎌倉散歩はやめられない。

  

  

▲左上:お昼は円覚寺の近く「紫穂の里」にて「SHIHO御膳」をいただく。
 右上:おやつは鎌倉・小町通りのカフェ「エチカ」にて。キャラメルチーズケーキ。
 左下:途中、北鎌倉駅付近で市が開かれていたので寄り道。クルミに入った蜜蝋のろうそくを購入。
 右下:円覚寺にあった木彫りのお地蔵様。左のお地蔵様の手がサルノコシカケに。

大収穫の高尾山コケ散歩

2010-11-07 15:23:46 | 東京コケスポット

▲手の大きさと同じくらいの巨大なコケ。コケは小さいものばかりではない。高尾山にて。


嬉しいことに8月から月1のペースで
コケ友さんとのコケ散歩が続いている。

 ※コケ友…会えばコケの話題で盛り上がったり、一緒にコケを探しをしたりと、
  コケを囲んで、供に喜び、苦労を分かち合ったりしている友だち。
      


10月下旬はコケ友Yさんオススメの高尾山へ。
YさんとHさんと私の3人でのコケ散歩。

結果から言うと、予想以上に収穫大で楽しかった~!
出会ったコケたちのことを思い出すと今もニヤニヤしてしまう。


高尾山は登山ルートがいくつもあるが、
今回私たちが登ったのは6号路(Yさんのイチ押し)。

谷に沿って山道をたどる沢沿いのコースだ。



▲朝9時に駅集合。コケ散策は午前中からがオススメ。状態のいいコケが見られる可能性が高い。




▲「森と水」がウリの6号路。看板には、「道沿いの苔むした杉の大木や、
 沢の水音など深山の趣が味わえるコース」とある。



▲登山道の脇に立てられた学習用看板「シダを見つけよう」。コケの看板も作ったらいいのに…



平日だったのでそこまで混んではいなかったけれど、
とはいえそこはさすがミシュラン三ツ星の高尾山、
どこを歩いていても必ず人がいる。

途中何度も、山登りベテラン風のおば様方やおじ様方、
遠足できていた幼稚園児軍団に抜かされながら、
私たちはコケを愛でつつ、ゆっくりゆっくり頂上を目指した。



▲岩一面のチャボスギゴケ(たぶん)。縮れるとクシュックシュっと縮れて小豆色になる(左上方のがそう)。




▲ホソバミズゼニゴケ(たぶん)。コケ友さんたちの間では、通称フリルちゃんと呼んでいる。




▲アップ。なぜフリルかというと、葉先が細かく分かれてフリルのように見えるのだ。かわいい。




▲これが人生二度目の出会いとなるアブラゴケ!とっても小さいコケなので見つけたときは 嬉しかった!




▲クジャクが羽を広げたように葉が円形に広がる、その名もずばりクジャクゴケ。




▲キヨスミイトゴケ(たぶん)。Yさんがとりわけ好きなコケで、通称キヨさん。
 私は今回初めて生で見た。枝から垂れ下がる様子はまるで、誰かが編み物しかけを枝にかけたよう。




▲「おけけなコケ」part.1、ケゼニゴケ。
 白いボタンのように見えるのが雄器床(オスの生殖器官)と
 雌器床(雌の生殖器官)。いずれも毛が生えている。




▲あらあら、こちらも葉の中心におけけが!? 「おけけなコケ」part.2、ケチョウチンゴケ。
 毛に見えるのは実は仮根とその上に立ち上がった無性芽。



2時間半かけてたっぷりコケを堪能し、頂上についたころにはすっかり空腹。

茶屋で昼ごはんを食べたり、展望台で富士山を眺めたり、
おやつにみんなでチップスターを1つ買って分け合って食べたり。

美味しいものとまったりした時間。
そしてコケについての会話を楽しむひと時。

これもコケ散歩の大きな楽しみなのである。




▲展望台にて。遠足の幼稚園児たちに混じって富士山を望む(奥にうっすらと見えるでしょうか?)。