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▲「苔こけコケ展2014」会場入り口。
前回の記事で案内した「苔こけコケ展2014」が11/21~23に京都府立植物園で開催された。
※主催:京都府立植物園、岡山コケの会関西支部(通称:オカモス関西)。
3日間すべて好天に恵まれたこともあり、今年も去年に続き盛会で、3日間の延べ入場者数はなんと3,795人!
今回、自分はほとんど事前準備をお手伝いできず、2日目にほぼお客さん状態で来場したのだが、
久々にお会いした方や、初めてお会いするコケに興味がある方とついつい話が盛り上がるうちに閉館時間が間近となり、
やや駆け足で展示を見学。それでも時間が許す限り会場の様子を撮影したので、ここでご紹介したい。
まず、うなぎの寝床のような細長い会場を入ってすぐ、出迎えてくれるのは多種多様なコケたち。もちろんすべて本物のコケ!
ここまで一堂に集められると、まるでナマのコケ図鑑を見せてもらっているよう。おもわず手持ちのルーペでじっくりと観察してしまう。
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▲一面のコケに圧巻!しかもひとつひとつ種類がちがう。
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▲これら数十種類のコケの持ち主はオカモス会員で関西在住のTさん。野外のコケを少しずつ採取し、なんとご自宅のベランダで育て増やしているのだとか。
コケの種類がある程度わかる人なら、これらのコケが人の手で育てられたなんて驚きの事実でしょう。
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▲中心にあるツバキの葉にご注目。ツバキを飾っているのではない、ツバキの葉に付いた葉上性の苔類を展示しているのだ!
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▲そしてTさんのコケ一群の隣には、これまたボリューミーなコケたちが。コウヤノマンネングサ、オオカサゴケ、シッポゴケ、オオシッポゴケ、フロウソウなど。
これら大型種のコケを栽培をされているのは岡山在住のオカモス会員Kさん(期間限定で宍戸錠似)。
「お触りOK」ということで、得も言われぬコケのやわらかな手触りを満喫させていただいた。
「コケ展」と銘打っていても京都府立植物園という場所柄、植物に興味はあってもコケは初めてという人も案外たくさん来られる。
そこで会場入口ではコケ初心者の来場者にもミクロの世界にじっくり浸っていただくべく、虫眼鏡やルーペを配布する工夫も。
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▲虫眼鏡やルーペだと拡大率・数倍~数十倍の世界。さらに拡大率・数百倍の世界にも浸れる顕微鏡ブースも設置(右下)
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▲そして会場にはコケに詳しいベテランのオカモススタッフが常に複数控え、お出迎え。来場者の質問にも懇切丁寧に対応。
コケに興味を持ってくれてるというだけでオカモス会員は嬉しいのだ!
また、学術的にコケのことがわかるだけでなく、コケ好きたちによる独自のコケカルチャーにも触れられるのがこのコケ展のよいところ。
素人・玄人関係なく、バリエーション豊かなコケ作品が多数持ち寄られた。
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▲京都でコケといえば欠かせないのが苔庭。見事な苔庭を有し、紅葉の時季にはテレビでもよく紹介される祇王寺さんは京都五山を模したコケオブジェを出展。
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▲オブジェといってもすべてコケは本物。しかも文字の部分もジャゴケで描くというコケづくし!(ピンボケですみません)
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▲さらに傍らには裏千家のお茶がいただける野点コーナーが。コケの京都五山を眺めながらの一服は癒しのひと時。
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▲オリジナルで作られたLED照明器具でコケを魅せるMoss Light-LEDさんの作品。
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▲いろんな形をした石版にコケを埋め込んだアトリエMOSSさんの作品。
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▲なんと私が最近興味を持っている古墳までコケづくし!?(もっとじっくり見ればよかった・・・)
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▲園芸界からはおなじみのミニ盆栽。非常にお手頃価格で販売されていた。
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▲こちらは大阪のど真ん中、心斎橋にあるコケの店・苔なっこさんの作品群。コケはすべて水辺や水中を好むウィローモス。
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▲こちらも苔なっこさんより。流木、石、黒炭、それらすべてに付いているコケは貼ったのではなく、時間をかけて育て生やしたものというから驚く。
信楽焼のミニ狸がまたかわいいこと。私もこの狸になってコケ岩を眺めたい!
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▲一見地味なようですが・・・こちらは去年のコケ展にも出展されたベテラン選手。去年よりも群落が広がっているのがわかる人にはわかるという通好みの作品だ。
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▲岡山在住のNさんの作品「虫の目でコケを見る」。おなじみゼニゴケがモチーフで左は雌株、右は雄株。
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▲こちらは大阪在住のTさんの作品。
Tさんの作品は、以前にもこのブログで紹介したものと同じシリーズで今回はさらに新作が出展されていた。
コケモチーフの焼物という斬新なアイデアにすでに脱帽なのだが、その愛らしいフォルムと見れば見るほど精巧なつくりには毎回驚かされる。
しかも今回はなんとコケ好きの間では不動の人気がある「タマゴケ」がモチーフ。
左の作品は(サク)そのもので、俯瞰で見るとまた迫力があって面白い。蓋と歯(サクシ)の部分が二重蓋になっている。
ちなみに左奥の作品はジンガサゴケの蓋物。こちらもかわいかった。
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▲東京在住のコケイロさんの作品。コケアクセサリーの数々はほとんどが手芸作品。
コケイロさんの作品は単に「コケ」なのではなく「○○ゴケ」とその種類にまでこだわり、
葉の形や色などその種類がもつ固有の特徴をしっかりつかんで表現しているのがすごいところ。
コケが好きであり、さらに普段からいろんな種類のコケをじっくり観察し、違いを理解していないとこのような作品は作れない。
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▲ハタケゴケのブローチ。遠目に見ると本物かもと見まがうほど。ほぼ実寸大じゃないかしら。
最近、種子植物の花びらや葉っぱなどをそのまま樹脂に埋め込んだアクセサリーをよく見るけれど、
コケの場合、葉っぱの一部からでもそこから再生し新たな個体が生まれる可能性がある(いわゆる無性生殖)。
つまりたとえ植物体の一部分であってもそれはまだ生きている「命あるコケ」。
いつからか、そう思うようになってから樹脂に埋め込むコケ作品を見るとなんとなく心が落ち着かず・・・。
「コケに肩入れし過ぎ!」と言われたらそれまでなのだけど(そして確かにそうなのだけど。笑)、
できればコケの「生(せい)」が封じられてしまうようなものではなく、
創意工夫を凝らしてその人らしくコケを「再現」しているようなものに最近はホッとする。
あくまで私個人の感覚的なものなのだけど、そんなわけでTさんの焼物やコケイロさんのアクセサリーなど
今回展示されたコケアート作品はとかく私の心に優しく響いてくるものが多かった。
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▲そして僭越ながら、こちらはわれらMOSS-T PROJECTのブース。Tシャツやオリジナルポストカードを置かせていただきました!(撮影:M.Mさん)
そして最後に。今、日本各地で観察会や地域観光の視点でコケ活動をしている団体のポスターやパンフレットの出展も。
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▲今年9月に発足したばかりの「北海道コケと地衣類の会」のポスター。今後、道内で年1回は観察会、会報誌発行を予定しているとのこと。
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▲地衣類とコケのキャラクター(ゆるキャラ?!)までいる!
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▲こちらは、このブログでもたびたび紹介している青森県の奥入瀬自然観光資源研究会(通称:おいけん)のパンフレット。
おいけんは今年、奥入瀬渓流で出会えるコケたちを集めた図鑑も刊行するなど、いまコケの活動が目覚ましい団体の一つ。
自分の手元にもその図鑑「奥入瀬渓流コケハンドブック」があるのだが、それについての詳しいお話はまた次回にでも。
また、私は参加できなかったのだが、こういった展示のほかにも専門家を招いての講演会や、
屋外に出てのコケ観察会などが3日間通して行われ、いずれも盛況だった模様。
ちなみにこのコケ展のちょうど2日後、オカモス関西のコケサロン(定例会)があり、
改めて今回のコケ展について会員たちで振り返る時間があった。
そこで昨年に引き続き企画段階からコケ展全体を取り仕切ってこられたオカモス関西代表のMさんは、
「訪れた方が皆、最後は穏やかな表情になって会場を跡にされていた。コケの持つ力を改めて見直した」
とおっしゃっていた。
たしかに、会場の様子は皆でわいわい賑わうというよりも、
ひとりでじっくりと静かにコケを見ている人が多く、
その姿はコケならではの色彩、不思議な色形、生態に触れながら、
思い思いにコケと対話しているようにも思えた。
来場者にとっても主催者側にとっても、
コケへの興味、ひいては小さな自然への好奇心が高められた
有意義なイベントになったのではないかと思う。