かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

【コケ情報】苔庭がぐっと身近になる!コケの新刊「苔三昧 ~モコモコ・うるうる・寺めぐり~」

2015-04-24 13:41:48 | コケの本棚


▲大石善隆著/岩波書店より2015年3月25日発行。


ここ最近、プライベートが小忙しくて、
ゆっくり本を読むのもままならなかったのだが・・・。

やっと読めました、“前代未聞のコケの入門書”と
コケ業界でもウワサの『苔三昧』


コケに興味がある人なら誰しも気になるコケスポットの一つが「苔庭」。
でもなんとなく自分にとってちょっと敷居の高い存在であった。

というのも、そこは「庭」なわけだから、どなたさまかの管理下にある場所である。
そしてどちらかといえば、静かに景観を眺めるよりも一つ一つのコケにルーペをかざして
その姿かたちを詳細に見るほうにより興味をひかれるコケ好きの立場からすれば、
自然のフィールドに比べて苔庭は自由度が低い。

しかも苔庭を有しているのはだいたいが社寺仏閣。

そんな場所でうずくまってルーペでコケを見たり、カメラでコケを激写しまくったり、
ましてや「はー。かわいいわぁ」「キミは素敵だねぇ」なんて独り言をぶつぶつ(←本人は真面目にコケに話しかけているつもり)、
なんていうのは、おこがましくてなおさら気が引ける。
ましてや「何ゴケかな?」なんて、気軽につまみとることもできないし・・・。

じつは今までしばしば鎌倉や京都へ苔庭を見に行ってはいたものの
正直なところ、いつもこっそりひとめを避けて、
コケに触る(もちろんつまみとってはおりませんヨ!)のさえ緊張しながら、
おそるおそるコケと触れ合っていたのである。

でもきっと、私のようなコケ好きさんは他にも大勢いらっしゃるのではないだろうか。

そんな苔庭とコケ好きの間にそびえたつ見えない壁に、
風穴を明けてくれるのがこの『苔三昧』なのである。
そういった意味で、この本は確かに前代未聞、画期的かもしれない。

本書は、苔庭のコケをじっくり見たい人のための内容で、
苔庭のコケの生態、主なコケの種類、庭の歴史・文化など多角的に掘り下げて書かれている。

従来の苔庭を語る本は、「日本庭園」について読者がすでにある程度の知識があることを前提に書かれたものが多かったが、
本書は苔庭の「基本のき」から優しく説いてくれており、コケや庭の知識がまったくない人にとっても非常に読みやすい。


著者は、コケ研究者の大石善隆さん(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター研究員)。
大石さんは西芳寺(別名:苔寺)をはじめとする京都の苔庭の調査・研究の実績もある方で、
2013年にNHKが一年かけて西芳寺の苔庭を取材した特別番組にも出演されていることは、
コケ好きさんの間では知られるところである。

大石さんは執筆するにあたって全国各地の苔庭を巡り、本書には厳選した70か所(!!)を掲載。
北海道や沖縄など掲載がない県もあるが、北は秋田県から南は熊本県まで、必ず自分が住んでいる近隣の県は載っているので、
「苔庭といえばどうせ京都でしょ・・・」と決めてかかっていた人にとっては必ずや嬉しい発見があるだろう。

しかも、各庭に生えているコケの種名も記載されている(そしてそれがどんなコケなのかを説明したコケ図鑑もアリ)ので、
先の「苔庭のコケだからつまみとれないし、はっきりした種名がわからない・・・」というモヤモヤも解消。
まさにかゆいところに手が届いた一冊なのだ。


ちなみに内容とは離れるが、さらなる読みどころとしては、大石さんの文章にもご注目。
そのお人柄がにじみ出ているような文章なので、ぜひそこも味わっていただきたい。

先日ちょっとした用事があってメールのやり取りをしたところ、
「なんだか売れなさそうな本で・・・」と出版早々弱気な大石さん。
これだけ立派な本を書き上げておきながら、なんてことをおっしゃるか!

書き出しはそんな謙虚な大石さんのお人柄が出ているかのような、ちょっと緊張気味の文章。
しかし中盤の「全国の苔庭ガイド」を過ぎたあたりからは筆が乗ってきたのか、
まるで読者の隣に寄り添って話してくれているかのようなノリノリの書きぶりで、
本人がコケの世界に入り込み、楽しんで書いておられるのがひしひしと伝わってくる。

とくにコケの雄株と雌株の出逢いについて書かれた頁では、
「雄株ばかりのコケをみつけると、『大丈夫。来年はきっとステキな出逢いがあるよ』と温かいエールを送りたくなってしまいます」
との一文。雌に出会えなかった雄ゴケに同情し、親身にいさめ励ますコケ研究者っていったい・・・。

大石さんのハンパないコケ愛ぶりが感じられるとともに、
コケに語りかけるそのお姿を想像して思わず笑ってしまった。
  ※↑上記はあくまで個人的な感想なので、皆さまも実際に読んでそれぞれに大石さんの文章を感じてみてくださいマセ。


この本を読み終わった後、ふと、数年前にコケのイベントでお世話になったお寺の住職がおっしゃっていた言葉を思い出した。

 「お寺って一般の人にとってはちょっと敷居が高い気がしてしまう場所かもしれませんけど、
 本来のお寺というのは、誰でも気軽に集まれる場所なんです。
 近所の人がおしゃべりしにきたり、子供たちの学びやだったり。ほら、『寺子屋』っていうでしょ。
 だから、大した用事がなくても『お庭のお花やコケを見に来ました』っていう理由で寺の門をくぐってもらうのも全然構わないんですよ」

そう、勝手に敷居を高くしていたのは、自分の思い込みだったのかもしれない。
少なくとも、本書に掲載を許可してくれたお寺はコケを見に来てもらうのはウェルカムなのではないだろうか。

 
これから初夏にかけては一年でひときわコケが美しいシーズン。
近いうちに本書に載っているわが家に最寄りのお寺をぜひ訪れてみたい。
この本を片手にコケを見ていたら、あわよくば住職さんとコケトークができるかもしれないし!

本書の表紙・裏表紙にちりばめられた苔庭写真を眺めているだけで、そんな嬉しい予感さえしてくる。



▲帯が付くとこんなかんじ。本のカバーはトレーシングペーパーのような透かしになっていて、これまたおしゃれなのだ。



【コケ情報】第9回コケ観察会@東京理科大学 野田キャンパス

2015-04-13 10:14:20 | コケ情報
前回まで書いていた続きもの「マイ タマゴケ クロニクル」はvol.3までを予定しているのですが、その前に。
春のコケ観察会開催との嬉しい情報がコケ友・中島さんより届きましたので、お知らせします!


※2015.4.17追記:下記の中島さんの観察会は、今日の時点で定員まであと5人だそうです。ご興味のある方はお早めに~!



中島さんが毎年春・秋に定期開催されているコケ観察会(地衣類も見ますヨ)も早9回!
2011年からスタートし、秋に参加された方は春のコケの表情もまた見たいと、
さらに何回も参加されている方は定点観察できるのが面白いと、リピーターさんも多いコケ観察会なのです。

関東近郊の方だけでなく、時にはかなりの遠方から参加される方もいて、
「コケに興味はあるけどまったく知識がない」という方でもウェルカム!とのこと。

詳細は下記のとおり。定員は10人までの先着順なので、
ご興味がある方はお早めに申し込まれることをオススメします。


【第9回コケ観察会】 主催者・講師:中島啓光(横浜国立大学)

☆日時/集合:5/16(土)午前11時、東武野田線運河駅改札前
☆定員:10名
☆場所:東京理科大学野田キャンパス・自然公園
☆内容:プロジェクターを使ったコケ説明会の後、昼食(各自持参)をはさんで、
    午後からキャンパスと自然公園に生育するコケ植物(10種類以上)と地衣類(5種類以上)を観察します。
☆終了予定時刻:午後4時
☆申込:件名を“第9回コケ観察会申込”とし、氏名、当日の連絡先を明記したEメールを、
    h-nakaji■ynu.ac.jp (■を@に変えて)宛にお送りください。

~中島さんよりメッセージ~
2011年7月の「コケとキノコの観察会」(第1回コケ観察会)に始まり、
年2回のペースで開催してきた観察会も今年で5年目。
初心者の方に、コケ(コケ植物と地衣類)の魅力を知っていただく、きっかけとなれば幸いです。



マイ タマゴケ クロニクル vol.2

2015-04-01 06:28:35 | コケをめぐる旅
2008年の夏にタマちゃん(タマゴケ)と初めて出会った私は、
その愛らしい姿にすっかり心をわしづかみにされ、
それからというもの山に入るたびに「タマちゃん、タマちゃん…」と
念仏のように唱えながら(はたから見るとかなり怪しい)再会を試みるのだった。

その後、何度か八ヶ岳を登った際には小さな群落と出会い、
また最初に出会った針山タマちゃん(なんだか人の名前みたいだ)とは
同じ登山ルートを登るたびに再会し、その鞠のようなフォルムに毎回きゅーんとなっていたのだが、
次に衝撃的なタマちゃんと出会ったのは、思いもかけぬ場所、
母の実家がある田舎の山中でのことだった(ちなみにこれまた長野県)。


山の緩やかな斜面に建つ母の実家には、田舎ならではのそこそこ大きな庭がある。
そして庭からは、地続きで裏山に入ることができる。

法事で母の実家を訪れた私は法要を終えて、
久々に顔を合わせた親戚たちが居間で談笑する中をこっそり抜け出し、
また例のごとくコケチェックをしに庭に出た。

 ※コケチェック:コケ図鑑を読むようになってからというもの、行く先々、とくに緑の多い場所へ行くと、
  必ずどんなコケがそこに自生しているのかをルーペと図鑑でチェックするのが習慣となっていた。


庭に配置された大きな岩に付いたコケ、スギなどの樹幹に付いたコケなどをルーペを使って夢中で見る。
ルーペでコケを覗いていると、まるで森に入っているような豊かな気持ちになれる。これが何とも楽しい。
そうして小さな森を見てはちょっと移動、見てはちょっと移動を繰り返しているうちに、
知らないうちにどんどん庭の奥へ奥へと進んでいたらしく、気づけば裏山に足を踏み入れていた。

親戚たちの声が届かない所まできてしまい、これはさすがにまずいだろう。
そう思い、庭へ戻ろうと踵を返したその時だった。

(ん?なにやら強い視線を感じる・・・)

そう、何かにじっと睨まれているような。

(タヌキか!? ま、ま、まさか、、、クマ!!?)

クマと遭遇した自分の姿が頭をよぎり、背筋が寒くなる。
もし本当にクマだったらえらいこっちゃ!
まずは冷静に。そしてクマに背中を向けぬようにせねば!

できる限り物音を立てぬようにおそるおそる辺りを見回してみる。

すると・・・



▲ジーーーーーーッ!

ぎゃ!!!

タマちゃん!! しかもなんと大勢な!!

いままで見たことのない巨大な群落からは、無数の「目玉おやじ」がにょきっと顔を出し、
このおやじ部分だけ見ていると、なんだか、エイリアン襲来、そしてこのままにじり寄られて囲まれて、
最終的には誘拐されちゃうんではないかとすら思えてくるものものしさである。



▲ちょっと引いて見てみるとこんな感じ。大きさは大人の頭部くらいはあった。(長野県、4月中旬)


まさか田舎の裏山で潜伏中のエイリアンと遭遇するとは。
しかし、ビビりつつも不思議とまたいっそうタマゴケに心惹かれてしまう。

あの睨み、キモチ悪いはずのに、なぜだか快感。
むしろ「もっと睨んで!」とさえ思えてしまう。
なんだろう、この感じ。うーむ。これぞタマちゃんマジック!


▲ジーーーーーーッ!


それ以来、あの赤い目玉にまた睨まれたくて、
タマゴケ探しは胞子体が出て(サク)の蓋が取れる春先(4月頃)を狙うようになるのであった。