かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

2013夏、コケ学会の思い出 & 【コケ情報】樋口正信さんのコケラジオ

2013-08-31 21:37:59 | コケをめぐる旅

▲岡山県倉敷にてコケ観察(8月)


前回に続き、8月5~7日に岡山で開催された
第42回 日本蘚苔類学会(年に1度のコケの学会)についてのレポート。

初日の5日は午後に岡山県倉敷駅前に集合。
蟲文庫・田中美穂さんの「苔とあるく」でもおなじみの鶴形山公園でのコケ観察会から始まった。

ちなみに今回の大会参加者は全体で100人を超える大所帯だったそうなのだが、
どのタイミングで参加するかは各会員の自由となっている。

学会発表(コケ研究者の皆様による各々の研究発表)以外に、
このような観察会は「オプションツアー」となっていて、希望者のみが参加するシステムだ。



▲10数人とほどよい人数でコケ観察。講師は蟲文庫の田中さんと、とくに苔類にお詳しいTさん。いやー、贅沢でした!

それにしても岡山は暑かった。そして鶴形山には西日本ではおなじみのクマゼミがめっぽう多かった。

途中、コケに夢中になるあまり、下を向いたまま茂みの中に入ったところ、
その衝撃に驚いてパニック状態で飛び回るクマゼミ4~5匹と不運にも正面衝突。
東京では考えられないセミアクシデントに、コケ観察どころではない場面も・・・。

クマゼミといえばその激しい鳴き声が特徴なので
鳴き声がする木は避けて通っていたつもりだったのだが、
そういえばメスは鳴かないのだよね。



▲クマゼミたちよ、おだやかな暮らしを邪魔してごめん・・・
 


そして学会2日目の6日、この日は岡山理科大学にて、
朝から夕方までコケ研究者の皆さんによる研究発表会が行われた。

日本蘚苔類学会が太っ腹だなーと常々思うのは、私のようなただのコケ好きでも、
純粋にコケに興味のある人になら常に広く門を開いておくというその姿勢である。

今回のような日本のコケ研究者の大御所から若手までが一堂に集まる
たった年に一度の貴重な研究発表会も上記のような理由から、
ありがいことに私みたいな者でも自由に視聴できる。

もちろん、専門的なこととなると素人の私ではわからないことだらけになるのだが、
中には一般人が普段よく見かける身近な種類のコケをテーマに研究されている方もいて、
そういった方の発表はとりわけ興味深く聞くことができる。

今回はとくにSさんのゼニゴケの雄株と雌株が数メートル離れているにもかかわらず、
きちんと受精し胞子体をつけるメカニズムについて今までの一般論とはまた別に
新たな仮説を立て、実証された研究発表が私の中ではとっても印象深かった。



また、大会会場の一角には、こんなあやしい3人組も・・・



▲ソファのコケを観察中!? 


いやいや、あやしい者ではありません。
というかヤラセです(笑)

実はMOSS-Tプロジェクトのコケ画Tシャツを大会会場に着てきてくださっている方が何人もいて、
ちょうど近くにいらっしゃった人のいいMさんとIさんをひっつかまえて、
「Just looking for the MOSSES!」のポージングをしてもらったのだった。

 ※ちなみに右端は私で、撮影はMOSS-Tプロジェクトの相方M女史。

Mさん、Iさん、あの時は私たちのわがままを聞いて下さり、ありがとうございました。


さらに同日にコケの愛好会である岡山コケの会との共催企画で開催された
「コケを楽しむ I LOVE mosses!」展もとても見応えがあった。

このイベントは岡山コケの会の会員を中心としたコケ好きが、
手製のコケグッズやコケ写真を持ち寄って展示するというもの。


▲所狭しと並べられたコケグッズたち。茨城県自然博物館のコケ展で大人気だったコケ帽もありました!



▲お恥ずかしながら私も出展。手前のスケッチブックは、普段コケを眺めてて気がついたこと、小さな発見などをイラストと文字にして書き留めたもの


学生さんからアラ還世代(もしくはその上も?!)まで幅広いコケ好きの皆様による、各種コケグッズ。
写真集あり、フォト句集あり、手芸品、絵画、アート本、ハイゴケを詰めた手製クッションなどなど、
いや~、面白いアイデアがたくさんあって、本当に時間が足りないくらい充実のラインナップだった。

中でも私がもっとも心ときめいたのは、関西から参加されたTさんの作品。
Tさんからブログ掲載許可を得たので、この場でご紹介したい。



▲3枚のコケの写真の前に、陶芸作品が3つ。


それぞれをアップで見てみると・・・


▲なんとゼニゴケのからだにあるカップ型の無性芽器(無性芽をためておく入れ物)を模した蓋物だった!



▲こちらはケチョウチンゴケの葉の1枚を模した小皿。コケの細胞と中肋までみごとに再現されている



▲さらにこちらはジャゴケの葉状体を模した小皿。蛇模様はもちろんのこと先端部分の成長点も忘れていません


コケを見ていて、コケ器にコケ小皿を思いつくこの発想力。すばらしすぎます。

そしてなんともおしゃれなんだよね。
コケ本来の美しさがこのお皿から伝わってくる。

あぁ、こんな器、わが家にもほしいなぁ。
こんなお皿で料理を食べながら、コケ好きたちとコケ話ができたら楽しいだろうなぁ。。。なぁ~。。。。(このあと、しばし妄想の世界へ)


そんなこんなで今回も充実の3日間。
ご一緒しました皆様、大会を取り仕切ってくださった岡山の皆様、本当にありがとうございました。


 

 
▲上段:(左)観察会のあとの懇親会。女子たちは飲みつつも顕微鏡でコケを覗く (右)Kさんが自家栽培された立派なオオカサゴケ
 下段:(左・右)3日目のオプションツアー。石灰岩地の渓谷にてコケ観察中


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話は変わりますが、最後にコケ情報をば。

コケ研究者で国立科学博物館所属の樋口正信さん(注:とってもダンディー)が、ラジオ番組にご出演されます。
すでに放送日を過ぎたものもありますが、近々では明日9/1、明後日9/2と続けてご出演があるので、
コケにご興味のある方はぜひお聞き逃しなく!(私も聞かねば♪)。

◇TBSラジオ
番組名:環境プロジェクト「今日よりちょっといい、明日を」

(放送月日・時間・出演テーマ)
平成25年8月25日(日)5時15分~5時24分 「コケってどんな生き物?」
平成25年9月 1日(日)5時15分~5時24分 「コケってどんな生き物?その2」
平成25年9月 8日(日)5時15分~5時24分 「コケを通しての自然保護活動」
平成25年9月15日(日)5時15分~5時24分 「コケを楽しむヒント」


◆文化放送
番組名:いとうせいこう GREEN FESTA

(放送月日・時間出演テーマ)
平成25年 9月 2日(月)20時~20 時30分 いとうせいこうの知らないコーナー
平成25年 9月13日(金)20時~20 時30分 いとうせいこうの知らないコーナー


エレガントすぎる!ホンシノブゴケ

2013-08-22 23:43:48 | コケをめぐる旅

▲ホンシノブゴケ(2013.8月 岡山県)

残暑お見舞い申し上げます。

あっという間にもう8月も後半、
東京は朝晩がだいぶ涼しくなってきて、
少しずつ季節が移り変わっているのを感じています。

皆さんはお盆休みはどのように過ごされましたか?
私はお盆休みの数日間はまるまる夫の実家へ行っていました。

しかし休みに入る一日前、私の方の実家の祖父、祖母、父が揃って夢に出てきてくれて。
さらになぜか今も生きている母、弟、そして私までも登場。いつぶりだろう、久々のF家一堂勢揃い。

こんな夢が見れるのもやっぱりお盆の成せる技??
目が覚めたとき、なんとも嬉しい気持ちになった。

いま思い返しても贅沢な夢でした。


さて8月5~7日に行われた日本蘚苔類学会第42回・岡山大会について、
印象に残ったことを忘れないうちに書き留めておこう。

順序が逆になるけれど、今回一番心ときめいたコケを見たのは大会3日目のフィールドワークでのこと。
岡山県の内陸部、少し広島県よりの石灰岩台地が浸食してできた渓谷で見た「ホンシノブゴケ」だ。

教えてくれたのは岡山在住のKさん。

Kさん「上流の方にすっごくきれいなコケがありますよ」

私「へー、なんていうコケですか?」

Kさん「ホンシノブゴケって言うんですけど、普通のシノブゴケと違って茎に対して放射状に枝が伸びるので
    フワフワと立体的な群落を作っているから、行けばすぐわかるはず」

そうは言われたもののこの時点では、正直、「シノブゴケの仲間か、ふーん」くらいに思っていたのだ。
ある程度のシノブゴケの仲間は、関東をはじめいままで各地でさんざん見てきていたから。

しかし! 実際にご本人に対面するやいなや、一瞬でズキューン! ←(ハートが貫かれた音です)

「なんてエレガント!!」

それはもう心ときめいたこと、ときめいたこと。

結局、観察時間の1/3はこのコケを見ていた(というか見とれていた)といっても過言ではない。
それくらい心をわしづかみにされてしまう美しさだった。



▲半日陰の山地の斜面に突如現れたフワフワ、モコモコ。ホンシノブゴケの群落だ。たしかにシノブゴケの仲間にしてはえらく立体的だ



▲さらに寄ってみる。わわ、一本一本が長くて大きいなぁ。そして緑色がなんとも優しく明るいなぁ



▲ふー、なんとお美しい! 大型だけど作りは繊細。地面に垂直方向にひょろ長い枝が出ていて、全体的に放射状に枝がついている


ちなみに私がこのホンシノブゴケ群落に行き着いたときに、すでに先に観察されていたAさんによると、
「石灰岩地によく生えているコケですが、どちらかというと石灰岩地に直に生えるのではなく、その付近に生えたがるコケ」とのこと。

また、すぐ近くには普通のトヤマシノブゴケ(※)もいたので、両者を比較してみた。

  ※トヤマシノブゴケって言いきってよいかわからないけど。もしくはヒメシノブゴケあたりか。ここではひとまずトヤマシノブゴケで通します。



▲ホンシノブゴケ



▲トヤマシノブゴケ



▲はい、もいっかいホンシノブゴケ


ち・・・ちがう。

なんて言うんでしょう、トヤマシノブゴケが「大和撫子」なら、
ホンシノブゴケは「ロシア美人」って感じだろうか。
エレガントでありながら、なんともダイナミック!

  ※ちなみにトヤマシノブゴケもホンシノブゴケも分布範囲が日本・朝鮮・中国・極東ロシアであることからこの例えにしてみた!

シノブゴケの仲間はもともとシダ類の「シノブ」に似ていてることからその名があり、
どの種類も「繊細な作りでレース編みのよう」と称される美しいコケの一種ではあるのだけども。

コケ界の美容番長と(私が勝手に)名付けていたトヤマシノブゴケも、
ホンシノブゴケ様の迫力の前には姿が霞むなぁ。



▲ほら、大きさもこんなに違うのです(右:ホンシノブゴケ、左:トヤマシノブゴケ)



▲トヤマシノブゴケのアップ。「今日の私はちょっと乾燥気味なの。本来の美しさはまだまだこんなもんじゃないわ」と弁解が聞こえてきそう


ホンシノブゴケ様のその美貌の秘密は、
やはり放射状に枝が出ている点にあるだろう。



▲トヤマシノブゴケ。枝葉が地面に対して平行につき、平べったい



▲ホンシノブゴケ。茎に対して枝が放射状についているため、地面から立ち上がるように生える。葉はわりと少なそう。
 地面に垂直に向かって生える枝はひょろっと細長くムチゴケの鞭枝のようだ


大型なコケであること、石灰岩地の近くにあること、放射状に枝が出ていて立体的な群落を作っていること、
このあたりを覚えておけば、今後もホンシノブゴケ様と出会える確立は高まりそうだ。


●おまけ


▲「あ、もしよかったら私とかもここにいますんで~」的にトヤマシノブゴケの間から顔を出すアツブサゴケさん

【満員御礼→】【告知】 9月1日(土)14:00~ 「コケトレvol.4 ホソバオキナゴケの会」

2013-08-10 11:46:32 | 東京コケスポット

▲コケトレvol.4で作るのは「苔ぼっくり」です(撮影:塩津丈洋)


※2013.8.14追記:下記のイベントは満席になりました。


自分にとってはフェスよりアツイ、この夏の一大イベント、
コケの学会「日本蘚苔類学会第42回・岡山大会」から帰ってきました!

いや~、岡山は関東に比べてめっぽう暑かったです。
あとやっぱりセミの鳴き声が違う。

東京のアブラゼミが「普通車」なら岡山のクマゼミは「ダンプカー」並みの音量(むむ、たとえがイマイチか…)、
もとい東京のアブラゼミが「泣いている小学生」なら、岡山のクマゼミは「号泣するオヤジ」といったところでしょうか(って、このたとえもどうだか…)。

学会最終日の3日目は、フィールドワークで石灰岩地へ出かけましたが、
石灰岩地の近くに生育するという「ホンシノブゴケ」は初めて出会ったこともあり、とりわけ印象深かったです。

そのレポートについては、また後日に。


さて、7月8月と夏休みに入っていたコケトレ、
9月1日に vol.4を行うことが決定しました。

今回のテーマは盆栽でもおなじみの「ホソバオキナゴケ」です。

ホソバオキナゴケの特徴や、ホソバオキナゴケのこだわりの生育場所について、
またホソバオキナゴケとよく似たアラハシラガゴケの両者をルーペで実際に見比べたり、
冒頭の写真にあるような「苔ぼっくり」を作ります(これがまたとてつもなくかわいい)。

すでに主催者のひとり鈴木収春さんのホームページで告知が始まっています。
定員が20人程度で、昨日の時点で残席は7席ほどとか。
もしご興味がありましたら、お急ぎくださいませ。

申込みフォームはクラウドブックス・鈴木さんのホームページにありますので、そちらでお願いします。
「コケトレってなんなの?!」という詳しい説明もそちらにありますのでご覧ください。


※イベント趣旨・vol.4の詳細・お申込みはこちらへ→ クラウドブックス

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<追伸>
別件になりますが、「コケ好きによるコケ好きのためのコケTシャツ」も引き続き購入希望者募集中です。
一応、9月中旬の発送をめどに、来週8/18(日)を募集の締め切りとさせていただきます。

ブログのトップに申し込み詳細のアドレスを張りましたので(すみませんがリンクできず。コピペしてください)、
ご興味がある方はそちらをご覧下さい。