かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

コケ情報:青森県あげてのコケプロジェクト! 奥入瀬でコケを知る連続講座始まる。

2012-05-27 10:01:38 | 文系女子のコケ目線

▲奥入瀬は知られざる隠花帝国(「ネイチャーランブリング」より転載。撮影:河井大輔)


青森県・奥入瀬(おいらせ)で、
ネイチャーガイドをされている河井さんから
少しまえに連絡を頂いた。

なんでもこの6月から今秋にかけて、
現地で連続コケ講座が開催されるとのこと。

現地に行ったことがない人にとっては、
〝奥入瀬〟というと秋田県の白神山地などと並び、
「名前は聞いたことがある」、「自然の美しい場所らしい」
くらいの認識である場合が多いのではないだろうか。

というか、正直言って私がその一人だった。

しかし何を隠そうこの地はコケ・地衣・シダ類の宝庫、
河井さんいわく「東北の隠花帝国」だというのである。

しかし現地の観光に携わる人のほとんどが、
そのような自然の特徴に対して
きちんとスポットをあてた活動を
いままで取り組んでいなかったという。

現地ネイチャーガイドも樹木や野草、野鳥などの知識はあっても、
蘚苔類に明るい人はほとんどいない・・・。

それではいかんだろうということで、
青森県をあげて、今回の連続コケ講座の企画が
河井さんらを主体に立ち上がったのだそうだ。


聴講者は一応地元のガイドが対象。

しかし、ガイド特定という規定もないので、
コケについて知りたいという熱意のある方なら歓迎とのこと。

さらに詳しい情報については、河井さんが所属しておられる
ネイチャーガイド集団「ノースビレッジ」のサイトで大変詳しく載せておられる。

河井さんの文章と写真、同業者も嫉妬しながらうっとりしちゃうほど(←ワタクシのこと。笑)
ステキなので、今回のコケ講座の話は抜きにしても、お時間があるときにぜひ読んでみられたらよいと思う。

●ノースビレッジ「ネイチャーランブリング」
http://www.novi.jp/web-tour/top.html


なお、連続コケ講座の第1回講演者は、
拙著の監修もしてくださった、秋山弘之さん。

参加費は無料。ただし、すでに受付は締め切られ、応募者多数で嬉しい悲鳴とのこと。
それだけ地元にとっては、待たれていた企画だったということなのだろう。

※すでに地元紙「東奥日報」では記事として取り上げられた。
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2012/20120523140105.asp?fsn=eb33f76037153e93cde084f7e7644d6f


今後の開催予定や詳しい情報について知りたい人は、
ノースビレッジで問い合せを受け付けている。

ただし、いざ参加したいとなった場合、
宿泊の斡旋や送迎などはしていないのでその点はご留意を。


-------------------以下、第1回の告知文を抜粋して転載-------------------------------------------

奥入瀬渓流蘚苔類観察会&研修会 第1回開催のお知らせ

拝啓 先の説明会において御案内申し上げておりました
奥入瀬渓流蘚苔類観察会&研修会の第1回講座を別紙の通り開催致しますので
お知らせを致します。参加を希望される方は5月26日(土)までに
代表事務局ノースビレッジまで御連絡をお願い致します。

野外観察会および講演会のどちらかのみの参加でも構いません。
お申し込みの際には、観察会+講演会参加か、どちらか一方への参加かをお知らせください。
また複数名参加の場合は人数を告知願います。

観察用具やテキスト等の準備がございますので、
必ずお申込みをなさってから御参加くださいますよう、お願い申し上げます。 敬具


<奥入瀬渓流蘚苔類観察会&研修会>

【第1回】6月2日(土)
講師:秋山弘之 氏(日本蘚苔類学会会長・兵庫県立大学准教授、兵庫県立「人と自然の博物館」主任研究員)

●野外観察会
午前9時~午後12時
集合・奥入瀬渓流館前

●講演
「コケ植物の多様性と美、不思議ないきものキノコ」
会場・奥入瀬渓流館
午後1時30分~午後4時30分

蘚苔類観察会&研修会実施にあたっての注意事項
1.当企画は蘚苔類研究者を奥入瀬渓流に招聘して実施する、地元ガイドを対象とした「研修会」です(専門家を招聘しての「学術調査」ではありません)
2.当研修会の目的は、地元ガイドの意識および基礎知見の向上、そして蘚苔類専門家への奥入瀬PRにあります
3.当研修会は専門家による「野外観察会」および「講演会」で構成されます
4.「野外観察会」は専門家によるフィールドワーク(現地での観察指導)です
5.野外観察会の実施にあたっては以下の点を厳守します
   ■採集行為は講師・参加者共に一切行わない(採集許可の申請は行わない)
   ■観察対象は遊歩道沿いの生育種であり、歩道区域外への立入りは一切行わない

   ■個体観察時においては講師の事前レクチュア、および現場での指導に従う
6.各回の「講演会」では各講師に蘚苔類についての基礎講義(観察方法・生態的知見・観察会開催にあたってのアドバイス等)に加え、蘚苔類生育地としての奥入瀬の印象を語って頂きます
7.当研修会は基本的に地元のガイドを対象としますが、一般の参加も可能です


<参加申込先>
㈱ノースビレッジ(代表事務局)
TEL 0176-70-5955
FAX 0176-70-5988
(受付締切日5月26日)


福岡コケフォーレ その2

2012-05-23 19:32:43 | コケをめぐる旅

▲カビゴケ(おそらく)。林床の渓流沿いでよ~く注意していると(もしくは鼻を利かせていると)出会う確立高し。(2012年4月福岡県・野河内渓谷にて)


告知しなきゃいけないことが続いて、
すっかり後回しになってしまったが・・・。

マニアックなコケ好きの皆さま、お待たせしました(笑)、
福岡コケフォーレのレポートのつづきです。


「コケ強化合宿」と言っても決して過言ではないコケフォーレ、
今年の参加はコケを研究しているという学生さんたちが半数を占めた。

去年の長野コケフォーレでは、私のような初心者やアマチュアの方が大半を占め、
学生さんがほとんどいなかったので、未来のコケ研究者のタマゴがこんなにもいたのか!とちょっとびっくり。

フレッシュな面々に、主催者の一人であるN先生もいつにも増して気合が入っておられるよう。

こうしてベテラン研究者のコケ魂が
若手に受け継がれていくのかと思うと
なんだか外野の私までうれしくなってしまう。

これからもコケ界の未来は明るいだろう。きっと。 ←(おおげさw)



深夜12時過ぎ(1時だったかな!?)まで顕微鏡でコケを見た翌朝(合宿2日目)、
朝食時間のすこし前に起き、宿舎の周りを一人で〝コケさんぽ〟する。

ちなみに同室のTさんのベッドはすでにもぬけの殻。

そう、彼女も〝朝はコケさんぽ〟な人なのである。

むしろ私よりも何段もうわ手で、あんなに遅く寝たのに朝は5時頃から
ゴソゴソと準備をして、さらりと部屋を出ていかれた。

遅れて私は6時半に起床。

いまだ「寝る子は育つ」の習慣が抜けなくて(?)
寝ることを至極の楽しみとしている私にとっては、ようやったほうである。



▲宿舎。ツツジがちょうど満開だった。



▲宿舎から徒歩5分ほどのところにある雑木林。


そして、朝一番に出会ったのは「ツノゴケ」の大群落(何ツノゴケかは不明)。






▲先端を見るとすでにほとんどの(サク)ははじけていた。


ちなみに、コケは生物学の専門用語では「蘚苔類(せんたいるい)」と言い、
そのなかで蘚類(せんるい)、苔類(たいるい)、ツノゴケ類と3つのグループに分かれている。

日本ではいま約1800~2000種類くらいのコケが確認されているが、
そもそもそのなかでツノゴケ類はたった20種類ほどしかいない。

しかも常にツノを伸ばして(サク)をつけているわけではないので、
ツノゴケに出会い、しかも(サク)が見られたとなると、
これはもう朝からおみくじの大吉でも引いたようなラッキー。

「朝からついてるな!」ってなもんである。



▲一部を取り出してみるとこんな感じ。(サク)は2裂するのが特徴。



朝食後、昨日と同じくみんなで野河内渓谷へ。10時頃に現地に到着。





初日は1時間ほどしか滞在できなかったが、
今日はお昼すぎまでたっぷり3時間ほどのコケ観察である。


なお、いつものことながら私たちコケ一団は
団体にもかかわらず、団体行動はできないのが常。

「じゃぁ始めましょう」の声と共に自分の興味の赴くままに
皆がそれぞれに散っていき、コケを見つければうずくまる。



▲何かあって打ちひしがれているんじゃありません。コケを見てるんです。



渓流沿いは、お察しの通り空中湿度が高い。
なのでそういった場所が好きなコケたちが自然と集まる。

逆に言えば、そこまで湿度ムンムンの場所を好まないコケたちは寄り付かない。

とことん住まいにこだわる。それがコケの性である。




▲水際の岩には(サク)つきの「ケチョウチンゴケ」。




▲その隣の岩にはおなじみ、「ムクムクゴケ」。



▲アップ。どうですか、名前に恥じぬこのムクムクぶり!(実は細かい葉が毛のように見えている)




▲この渓谷で見られると事前に聞いていた「ホウライスギゴケ」にも出会った。




▲こちらは「ツガゴケ」の群落。やわらかくて一つ一つがとても小さい。この面積ならかなりの大群落ではないだろうか。



▲めちゃめちゃ小さいにもかかわらず、よく見ると立派な胞子体をつけていた!




▲苔類(たいるい)も負けてはいません。こちらは(サク)付きの「オオウロコゴケ」(おそらく)。


他のコケを縫うように這っているので本体が見づらい。
ちょっと取り出してみると・・・・



▲こんなふうになっている。




▲オオウロコゴケとパッと見似ているが、こちらはクモノスゴケ科の仲間。苔類。



▲アップ。(サク)はすでに弾けていた。




▲こちらも苔類。その可憐なたたずまいから「小野小町」が名前の由来という「コマチゴケ」(雌株)。
 足元をよく見ると各個体が地下茎で繋がっているのがわかる。


さらに渓流のすぐそばには、コケの中でもちょっと変わり者、
生の葉の上に間借りして生きる「葉上苔類(ようじょう たいるい)」と呼ばれるコケたちが。

種類は葉上苔類の代表格・「カビゴケ」(おそらく)と、もう一種類いたが何かは不明である。



▲いたいた!



▲ここにも!



▲こんなに小さなヤツでもアップにすると、ちゃんと葉と茎に分かれているのがわかるでしょうか。
 


渓流沿いというロケーションも相まって
こうしてコケを見ていると、
それだけで心洗われたような気分になる。

地面を這いつくばったり、急な傾斜に張りついたり、
けっこうムチャな態勢で長時間、目を酷使しているのだけれど、
コケを見ていると不思議と心はどんどんすがすがしくなっていく。


はたから見たら〝珍妙なヒトたち〟かもしれない私たち。

しかしこの時間が、なにものにも代えがたいほど心を満たしてくれるのだ。

たかがコケ。されどコケ。

コケと出会って、ほんま人生トクしてるよなぁと思う。



▲こちらは「アブラゴケ」のアップ(画像真ん中)。葉の細胞が薄く透けていて、油を塗ったかのような光沢感。
 ちなみにツガゴケとアブラゴケは同じ「アブラゴケ科」の仲間である。




【満員御礼】 告知2つ: 6月2日(土)にコケイベント「お寺 de コケさんぽ in 池上」を開催します!

2012-05-19 07:01:27 | 東京コケスポット
  

   
▲池上周辺。現地下見中にて。



<告知1つめ>

昨年、大好評をいただいたコケナイトに続き、
拙著の出版社リトルモアさん主催で、
今年は6月2日(土)にコケイベントを開催できることになりました!

数か月前から池上のお寺に通って、
和尚さんと一緒に練りに練った企画です。

「コケのことよくわからないけど、興味はある」、
「種類は知らないけど、ただコケが好き」
というみなさま、大歓迎です。
ぜひお誘いあわせの上、ご参加ください。

都会にあって意外に緑が豊富な池上本門寺周辺は、
さんぽするだけでもとても気持ちがいい場所です。

コケドリンクとお菓子もつきますヨ!


お申し込みは、リトルモアまで。


※予約アドレス→ koke@littlemore.co.jp


----------(以下、リトルモアより転載)---------------
 
コケ好き集まれ!「お寺deコケさんぽ in 池上」
 
日時:2012年6月2日(土)13:30集合/17:30頃まで
会場:本妙院(東京・池上)
 
ゲスト:藤井久子さん(『コケはともだち』著者)、永井ひでゆきさん(イラストレーター)
 
参加費:1,500円 *コケドリンクと和菓子付き
 
参加にあたってのご注意事項:
・少雨決行(雨天が予想される際は、雨傘やカッパなどを各自ご用意ください)
・持ち物〈筆記用具、セロテープ、参加費(できるだけおつりのないようにお願いします)、飲み物、持っている人はルーペと霧吹き〉
・ご自身の思う〈コケっぽい服〉でご参加ください!ただし野外を歩くので、帽子・ズボンなどの服装での参加をおすすめします。
・お子様連れでのご参加も可能ですが、長時間にわたり野外を歩くことが予想されますので、その点を考慮のうえ各自ご判断ください。なおコケを観察しながら歩きますので、ベビーカーやバギーをおしてのご参加はご遠慮ください。
 
参加方法:
メールに必要事項をご入力のうえ、下記アドレスあてにご予約ください。ご予約の受付が完了しましたら、担当よりメールにてご連絡差し上げます。
・予約アドレス→ koke@littlemore.co.jp
・件名→ 〈コケさんぽ予約〉としてください。
・本文→ 以下の必要事項をご入力ください。

◇必須項目
〈お名前(フリガナ)〉
〈参加人数〉
〈連絡先メールアドレス〉
※予約完了時のご連絡、当日の天候がはっきりしない場合のイベント開催有無のご連絡などに使用いたします。携帯電話のアドレスをご入力いただいても構いませんが、メール設定にて koke@littlemore.co.jp からのメールを受信できるように、あらかじめ設定しておいてください。
〈連絡先電話番号〉
※突然の降雨によるイベントの中止など緊急時の連絡に使用いたしますので、携帯電話など連絡の取りやすいものをご入力ください。

◇参考項目
〈コケ観察の経験が有る・無い〉
※これまでにコケ観察をしたことがあるかないかをお答えください。ある方は場所やきっかけなどもあわせてお答えください。
〈『コケはともだち』を読んだことが有る・無い〉
※参考までにお聞かせください。読んだことがない方も、もちろんご参加いただけます。

※お申し込み多数の際には、先着順にてご予約を締め切らせていただく場合もございます。あらかじめご了承ください。
 
【問合せ】
株式会社リトルモア コケさんぽ担当
メール→ koke@littlemore.co.jp
tel→ 03-3401-1042(平日10:00-18:00〈土日祝日は除く〉)
 
【会場・集合場所】
本妙院
〒146-0082 東京都大田区池上1-33-5



▲同じく下見にて。コケさんぽ中の本妙院住職(私服)。




<告知2つめ>

こちらはコケミニ情報です。

明後日5月20日(日)に、日本テレビ系列「スクール革命」という
ウッチャンナンチャンのウッチャンが司会のお昼の番組で、
拙著『コケはともだち』が取り上げられるそうです。

とくに取材を受けたわけではないので、
どれくらいのボリュームで放送されるか見当もつかないのですが、
おそらく本を通して「いまコケがアツい!」
みたいな内容になるのではないかと思われます。

お時間ありましたら、ぜひご覧ください。

●スクール革命
http://www.ntv.co.jp/s-kakumei/


<追伸>
「福岡コケフォーレ」レポートの続きは追って!


お知らせ:コケ記事掲載(13ページも!)「三田評論5月号」が発売中☆

2012-05-16 00:10:20 | 文系女子のコケ目線



慶應義塾大学出版が毎月発行している『三田評論』から、
少し前にコケについて取材を受けました。

それが記事になってただいま発売中の5月号に掲載されています。
掲載されたのは毎号のレギュラーコーナー「三人閑談」にて。

なんと13ページもコケについての取材記事が載っています!


正直、私としては

「コケのことでこんなにページを使ってくれるなんて…」

と、かなりびっくり!(もちろん嬉しいです)。


慶應義塾生のOB・OGを主な読者対象とした本誌、
雑誌名だけは知っていたものの
塾生ではない私は当然読んだことはなく。

「三人閑談に出てくださいませんか?」と本誌編集のNさんから
最初にお話をいただいたときには、どんな取材になるのか見当もつかなかったのですが、
なんとコケ研究者・有川智己さん(鳥取県立博物館)、盆栽師・村田行雄さん(九霞園三代目)の
お二人とご一緒してコケについて〝三人閑談〟してきました。

内容は〝閑談〟の字のごとく、
コケのこと、とりとめもなくあれやこれや。

コケのどういうところが好きかとか、
コケを食べてみたらどうだったとか、
盆栽界から見たコケの存在って?とか、
コケと日本人の美意識について、
三人のおすすめコケスポットなどなど。

普段からコケ友としているおしゃべりのように、
和気あいあいとコケのことを語り合っております。

とくに盆栽師の村田さんとは初対面だったにもかかわらず、
あんなに話が盛り上がったのは、やはりテーマが
お互いにかわいくて仕方ないと思っているコケのことだったから。

しかも今まで盆栽界の方からコケのお話を聞く機会がなかったので、
今回、伺ったお話はとても興味深いことばかりでした。


コケ研究者と盆栽師と一般のコケ好きという、
前代未聞の異色メンツによる魅惑のコケ座談会。

全ページ白黒ですが、コケ写真もなかなかきれいに載っています。

お求めは慶應義塾大学出版のホームページから通販か、
もしくは、書店では「新宿紀伊国屋本店」のみで取り扱いがあるとのこと。

●『三田評論』
http://www.keio-up.co.jp/mita/mokuji/index.html

●『三田評論』通販ページ(定価430円)
http://www.keio-up.co.jp/np/ko/newbooks.do


ご興味がある方はぜひ読んでいただければ幸いです。





-------------------------

<追伸>
数日前にブログから私宛てにメッセージを送ってくれましたKさんへ。

あれからすぐに返信をさせてもらったのですが、
どうも何度送ってもメールがかえってきてしまいます。

こちら側のネットの問題なのか、Kさん側のパソコンのセキュリティーの問題なのか、
原因はよくわかりませんが、これ以上どうすることもできず・・・。

Kさんがこちらを読んでくださっていることを願ってご報告まで。




福岡コケフォーレ その1

2012-05-10 09:57:44 | コケをめぐる旅

▲アズマゼニゴケ (2012年4月福岡県福岡市)


ゴールデンウィークムードもすっかり去って、
今週からまた日常が回り始めた。

だけど休み前と違うのは、
日に日に木々の緑が鮮やかに輝きを増し、
風の匂いが夏に向かっているのを感じるということ。

出かけるときは常にマフラーとカイロが手放せなかった体も、
気づけば、いつのまにかTシャツと日焼け止めクリームを欲している。

こうしていつだって、さりげなく季節は進むのだ。

誰も見ていないコケの葉の上で静かにノソノソと
でも着実に歩を進めていくクマムシのように。

玄関のすみに置きっぱなしのロングブーツ。
さすがにそろそろ片付けなくちゃ。

-------------------

さて、今日はゴールデンウイーク前半に
福岡県で開催された「コケフォーレ」についてレポートしたい。

日本のコケの研究者たちが中心となって構成されている
「日本蘚苔類学会」主催のこのイベントは今年で4回目。

私自身は前回、長野県で行われたコケフォーレに続き、2度目の参加だ。

   日本蘚苔類学会:コケ研究者じゃない人でもコケ好きなら入会可能。年会費3000円。私も会員です。

 
「コケフォーレ」は、そのエレガントな名前の響きからは
想像しがたいかもしれないが、実はこれ、ひと言でいうならば「コケ強化合宿」。

その内容たるや、まさにコケに始まりコケに終わるといっても
過言ではないくらいコケづくしの3日間なのである。

私などわざわざ東京から福岡に来たことまで
いつのまにか忘れ、寝ても覚めてもコケ、コケ、コケ。

最終日には脳内がコケで満たされ、
帰宅後も2日間はコケの夢を見たシマツ・・・。

それくらコケにどっぷりつかれることうけあいな
日本蘚苔類学会の一大イベントなのである。


初日(4/28)は現地の宿舎Yに13時集合。
   
   ※宿舎Y:http://www.sengokunosato.com/index.html
 
そこから車で15分ほどのところにある野河内渓谷へみんなで向かい、
1時間ばかりコケ目になって各自ひらすらコケを探す。



▲渓谷入口の看板前で、早くもコケを見つけて立ち止まってしまうみなさん。


そして何種類かのコケを少量持ち帰り、
今度は宿舎の会議室で夕飯まで顕微鏡観察。

自分が見つけたコケはどういうコケなのか、
まずは肉眼でつぶさに観察し、図鑑を見つつ、
さらに顕微鏡でコケを細胞レベルで観察することで、
なんという名前のコケなのかをつきとめるのである。

いわゆるコケの研究者の方々が普段から行っている
「同定作業」を参加者はここでしっかり覚えることになる。



▲2つの顕微鏡を使いわけながら同定する。実体顕微鏡(左)は高倍率なルーペといった感じで、葉の形を見たりコケを分解するときに使用。
 次にプレパラートを作って生物顕微鏡(右)にのせ、細胞レベルでコケを観察する。


もちろん、そもそも顕微鏡を使ったことのない人には
先生方が使い方の基本をマンツーマンで指導してくれる。

私など普段ほとんど顕微鏡を触らない初心者なので、
コケの同定もしつつ、顕微鏡の使い方もしっかり教えて頂いた。

さらに先細のピンセットでコケの茎から葉だけを外す方法や
図鑑に書かれている文章と実物を照らし合わせて
どう解釈するかなども解説して頂き、とても充実した時間となった。



▲主催者の一人N先生が研究室からわざわざ人数分顕微鏡&図鑑を持参してくれたので、各々が自分のペースでコケに没頭できた。


そうしているうちにあっという間に数時間がたち、夕刻。

みんなで夕ごはんを食べつつ、
自己紹介などしながらコケ話に盛り上がる。



▲夕ご飯。集中していたせいかお腹もだいぶ減っていたので、あっという間にいただきました。


その後は温泉に入ってホッと一息。

今日も一日よくコケを楽しんだなぁ。。


しかし!

ここからがコケフォーレの真骨頂で、
夕方まで使っていた顕微鏡を今度は各部屋に持ち帰り、
またコケ観察の続きを始めるのである。

もちろんこれは強制ではなく、
観察したい人だけが行うわけなのだが、
ある意味、みんなこれが目的で来ているので、当然する。



▲部屋にて。同じ部屋に泊まったTさんとFさん。顕微鏡タイムの第2ラウンドはもう始まっている。



さらに主催者の先生方から

「わからないことがあったら、いつでも俺らの部屋に電話してね~」

と言われたのをいいことに、

「このコケって、〇〇ゴケでいいでしょうか?」

「このコケは雄だと思っていいか、確認してもらっていいですか?」


パジャマ姿の先生をたびたび部屋に呼びつけては、
一緒にコケを見てもらったりする(・・・なんたるゼイタク)。


そんなこんなで、気づけば午前様。

布団にもぐりこみ、

「あぁ、なんて今日はコケで満ちあふれた一日だったことだろう」

と思うやいなや、疲れのせいかすぐに眠りに落ちる。


そしてまもなく夜が明けると、
またさらにコケな一日が始まるのである。