かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

地上に舞い降りた流れ星、スナゴケ

2010-01-25 07:30:06 | 近所のコケ


前回のギンゴケ同様、
街で出会える頻度の高いコケである。

名前の由来は、砂地に生えるところからと思われる。




このコケの魅力は、
なによりそのかわいい形にある。


群生する姿はまるで、
流れ星の大群が地上に舞い降りたよう。


▲コケにしてはやや黄色っぽいところがまた、星を連想させる




マット状に広がって群生することが多く、
森などではその上に木の実や種が落ちる。

ほどよい湿り気を含んだスナゴケは、
生まれてくる次の命が安心して眠れる
心地よいベッドだ。


▲ふかふかの星のベッドでお休み中のドングリ





▲こちらはドングリと赤い実。スナゴケに包まれて、なんとも気持ちよさそう




ちなみにうちの近所で見かけるスナゴケは、
猫のお気に入りの通り道なのか、
葉に猫の毛が絡まっている姿をよく見かける。



コケ庭にもよく使われるコケのひとつであり、
また環境適応能力に優れているため、
ビルの屋上や壁面に植えられて都会の緑化にも活躍している。




▲コンクリートの上のスナゴケ。岩の上などにも生える

コンクリートジャングルを生き抜くタフなヤツ、ギンゴケ

2010-01-22 22:35:48 | 近所のコケ



満員の通勤電車に揺られ、
毎日、家と会社の往復。

最近仕事もうまくいかないし。

なんだか疲れるよなぁ……と思わず頭を垂らす。



そんなとき、あなたの目に飛び込んでくるのが、ギンゴケだ!



このコケは、とにかくたくましい。
乾いたコンクリートの上でもすくすく育つ。



▲家の前の道路にて。群生するギンゴケ。




全国どこでも見られ、コンクリートだけでなく、ブロック塀、排水路など、
他のコケなら「過酷」といえる環境ですら、このコケには問題なし。


さらに日当たりの良し悪しや、気温の高低もあまり関係なく、
富士山の頂上のような極寒の場所にも生えるタフぶりだ。




槍のように伸びた茎に、葉は重なり合ってつく。

ルーペで見てみると、下部分は緑色、上部分は透明~白っぽい。
これは上部分に葉緑体がないからだ。


さらにすっかり乾燥すると、
「銀苔」の名にふさわしく銀色になる。


▲ルーペでのぞいてみたところ。このギンゴケが、どこに生えていたかというと……







▲なんと排水溝のフチだった!



都会のコンクリートジャングルに疲れた時、
ぜひすすんで地面を見てみることをおすすめする。


道の片隅で地味ながら、
したたかに生きるギンゴケが、
きっとあなたを励ましてくれるにちがいない。


光り輝くコケの赤ちゃん ヒカリゴケ

2010-01-17 13:34:43 | コケをめぐる旅





コケは何で増えるかご存じだろうか。
ときどき「菌で増えるんだよね?」という
声を耳にするが、それはちがう。


コケは一般的に「胞子」で増える。
この点ではコケは菌類よりもシダ類に近い。



コケから飛び出た胞子は、
風に乗ってふわふわと運ばれていき、
いずれどこかに舞い降りる。

そして舞い降りた場所で胞子は発芽し、
「原子体」といわれる形に変化する。



胞子も小さければ、この原子体もごくごく小さいので
ぱっと見ただけでは確認できないのだけれど、顕微鏡を使って見ると、
原子体は糸状だったり、平たい盤のようになっていたりするのがわかる。




コケによって形もさまざまな原子体は、
いわば胞子という卵からかえったばかりの
「コケの赤ちゃん」だ。


この赤ちゃんから、しばらくすると芽が出て、
その芽がさらに成長したものが、
私たちがよく目にする「コケ」となるのである。




さて、前置きが長くなってしまったが、
コケに興味がない人にも名前だけは
けっこう知られているのが「ヒカリゴケ」。


このコケが「光って見える」といわれるのは、成長したコケではなく、
コケの赤ちゃんである原子体が光って見えている。


またこのコケは自らが発光しているように思われがちだが、
正確には反射によって「光って見える」のだ。


というのも、ヒカリゴケの原子体は部分的に球状をしている。
それが外から光を受けると、レンズのように反射して「光る」というメカニズム。




私が初めてヒカリゴケを見たのは去年の秋、
中央アルプスのひとつ木曽駒ケ岳の麓にある
光前寺(長野県)を訪れたときのこと。




▲参道の脇にある苔むした石垣。この隙間に「ヒカリゴケ」があると聞いてのぞいてみると……






▲あれ?どこかしら? 角度を変えて見てみると・・・





▲あった! 中央の隙間に蛍光黄色に光っているのが「ヒカリゴケ」だ! 








石垣の奥にひっそりとたたずむヒカリゴケは、
私たちの見る角度によって光って見えたり、見えなかったり。


運悪く見る角度が悪いと、なかなか見つけることができない。


この日も「ヒカリゴケってどこ?この辺だって聞いたのに~」と
当のヒカリゴケの前を素通りしている人がけっこういた。




ヒカリゴケはもともと強い明かりが苦手。
石垣の隙間にさしこむわずかな光があれば、
じゅうぶん生きていける。


自ら発光するのではなく、光を受けてこそ輝くとは
地味に徹したなんともコケらしいコケだ。


ちなみに原子体から成長した植物体は、
もう光って見えることはない。



ヒカリゴケの原子体を見る機会があったら、
ぜひいろんな角度から眺めてみよう。


見る者の立ち位置次第で、
ひときわ明るく輝いて見えるベストポイントが
きっとあるはずだ。








▲おまけ。光前寺に行く前に登った木曽駒ケ岳。標高の低いところは紅葉していてきれい。








▲ロープーウェイで標高2600メートル強まで上ると、千畳敷カールにたどりつく。


コケ友だより ~高知の〝そまひと〟さんから~

2010-01-10 17:40:27 | コケをめぐる旅
高知県の四万十川に、
間伐材や雑木、そしてその端材を使い、
とびきりステキな木の家具を
作られる木工職人がいる。


その名も〝そまひと〟さん。


彼がつくる家具は、木目や小枝など1本1本の木の自然な形を
ぞんぶんに生かしていて、温かくてほっとやすらぐ、
それでいてどこか、子どものようにのびのびとした無邪気なかわいさがある。



もう何年も前に旅先で知り合いになり、
時計を作っていただいたのをきっかけに
以来、毎年年賀状のやり取りを続けている。




▲壁掛け時計。私のずっとお気に入り。






▲つい先月、作っていただいたスツール。




今年の年賀状で、私がこのブログのアドレスを書いたのを機に、
そまひとさんからメールをいただき、
実は彼もコケやキノコに興味があったことが発覚!



先日、地元で撮られたコケの画像をいただいので、ぜひここで紹介したい。






▲高知県西部で一番標高が高い山(1200m程度)にて。
 まだ水も冷たい昨年の5月初旬に、沢登りをされたのだそう。




そう!沢といえばコケの「多発生息地帯」。 
さぞ、みずみずしいコケが期待できるはず・・・・・・





▲きました! 岩にはりつき滝に打たれる「みずみずしいコケ」。
 コケマットを土台にして、シダも元気よくのびている。





▲倒木におおいつくすコケ!コケ!コケ!


ぱっと見ただけでもコケの種類は
2、3種類ではすまないはず。
 

日当たりのよいところを中心に、
所狭しといくつものコケがひしめきあう、 
倒木はまさにコケの共同住宅だ。






▲黄色い花は、「正式な名称は分かりませんが『万年草』の種だと思います」とそまひとさん。
 「米粒位の花弁が5弁の多肉質な葉をもつ可愛らしい花でした」とのこと。





▲花の奥には苔の群生が!標高900m位の広葉樹林の木漏れ日の沢沿いにて。






▲コケはもちろん生木にも生える。しがみつくようにして太陽の光を求める。




いや~~。堪能させていただきました!


前々から沢登りが気になっている私。
こういう沢の風景を見ると、がぜん行きたくなる。


「沢登りでコケ観察」、今年の目標の一つにしようと思う。



ここでの紹介を快諾してくださった、
そまひとさん、ありがとうございました!!

まるで森の妖精の小躍り、ヤマトフデゴケ

2010-01-06 12:10:05 | コケをめぐる旅
明けましておめでとうございます。
2010年も明けて今日で6日目に入りました。


昨年夏にこのブログを立ち上げて早半年。

まだまだ内容が薄いにもかかわらず、
予想以上にいろんな方にご訪問いただき、
とてもうれしい1年でした。


今年もこのブログでみなさまと
よいコミュニケーションがとれたらと思います。
よろしくお願いいたします。


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さて、今日は筆のような形をしたコケのお話を。




年末年始は思いのほか筆をとることが多かった。

12月にこのブログでも募集した「コケコメントつきクリスマスカード」は、
「クリスマスまでコケコケって。この人ちょっとおかしいんじゃないの?」と
人格を疑われまいかという、実は内心ヒヤヒヤものの大いなる賭けであった。


●2009年12月6日付けブログ「クリスマスプレゼント」
http://blog.goo.ne.jp/bird0707/c/6d07b3114b674a2dc5d87322e97ee5e0


しかしフタを開けてみると思いのほかの大反響、
「私もコケにたとえて!」と切望する友人続出。


言ってみるものだなぁと悦に入りながら筆をとった次第。



またその後は、年末恒例の年賀状書き、
そして現在は書き損じていた方への年賀状を書くべく、
ふたたび筆をとる日が続く。



そんなこんなで筆をとるとき、
いつも思い出すのが屋久島で見た
「ヤマトフデゴケ」だ。





色は明るい緑色、葉はまっすぐで針のように先が細い。

近づいてよく見ると、
しばしば葉先が白い綿毛のようになって
筆の先に見えるところから「フデゴケ」の名前がある。


また、手のひらでなでてみても、
筆先に触れているかのようなコシと柔らかさがある。

 


このコケの最大の魅力は、
触るだけでとても愉快な気持ちになれることだろう。

というのも、このコケの葉は、
茎からとても外れやすくなっている。


たとえば表面を軽くなでただけで、とたんに葉が茎から外れ、
ピョンピョンと元気に四方八方へと飛び跳ねるのだ。


その様子はまるで、森の小さな妖精たちが小躍りしているかのよう。



飛び跳ねた葉は、
いろんな場所に散って再生し、
また新しい群落を作る。



▲森の妖精の正体。放射状の形をした葉は、乾いているとよく跳ぶ。




フデゴケは、やや乾いた地上や岩の上でよく見られ、
北海道から沖縄まで日本全国に分布している。


もし見つけたらなでなでして、
ぜひ彼らの繁殖に協力してあげてほしい。




▲なでなで。