かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

段階を踏んでまずい、オオカサゴケ。

2011-09-30 23:24:34 | コケをめぐる旅

▲オオカサゴケ。大型でコケの中でも非常に美しいコケの一つといわれている。8月・奈良にて。


コケ研究者の間では「コケはまずい」とよく言われる。

私も『コケはともだち』を書く際に、
去年、ジャゴケ、ホソバオキナゴケなど
何種類かのコケに「ごめんなさい」をして、
実際に味を確かめてみりした。

いろんな味があったけど、
総じて言えば、やはりまずかった。


でもそんなコケの中でも

「とりわけまずい!」

とウワサされているのが、
「美しいコケ」としても名高い
このオオカサゴケ。


「ほんまかしら?」 

「ほんまですかね?」


やっぱり自分で体験してみないとわからない!ということで、
奈良の山中でムシメガネのMさんとオオカサゴケを口にしてみたところ・・・


「うぇえええ・・・まずい」


えぇ、やっぱりまずかったです。


どういうふうにまずいかというと、
これが面白いことに「まずい」が
段階を踏んでやってくる感じ。

(その場ですぐさま書いたメモが残っている)

・噛んだ瞬間、意外にも優しい甘み

  ↓
・次に強烈な青臭さ

  ↓
・さらに強い苦み

  ↓
・あれ、優しい甘みが戻ってきたゾ?

  ↓
・うぇええ・・・やっぱ苦いワ!


まずいまずいとは聞いていたけれど、
こんなに複雑な味わいがあったことは、
予想外の発見だった。



▲ユキノシタの小ぶりな葉よりも大きいオオカサゴケ。名前の通り、広げた傘のような形をしている。

似てない双子。

2011-09-23 12:39:15 | コケをめぐる旅

▲2つのコウヤノマンネングサ。8月・奈良にて。


1週間と1日ぶりの「出会えてうれしかったコケ」シリーズ。

前回に引き続き、コウヤノマンネングサ(普通サイズ)。


コケって潤っているときと
乾燥しているとき、全然風貌がちがう。

見つけたときに図鑑と照らし合わせても
図鑑のコケはたいがい潤っているので、
乾燥気味のコケだと、判別がつかないこともしばしば。


この左右のコケも見た目がかなり違うが、
同じコウヤノマンネングサ。

これだけ近距離に生えてるわけだから、
日照条件やら湿度やらはほぼ同じかと思うのだが、
なぜこんなに風貌が違ってしまっているのかは、謎だ。


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このブログの左欄にある「ブックマーク」に
コケ友・Mさんのブログを追加しました。

ムシメガネ

8月の日本蘚苔類学会奈良大会で
初めてお会いして、意気投合。

コケ歴もヒト歴も私より先輩にあたるMさんは、
柳のようにしなやかで、でもコケに対して
子供のようなみずみずしい好奇心を忘れていない、
九州きってのコケガールなのであります(ブログを見てもらえれば納得のはず)。

いつかそちらに行きますので、
一緒にコケ散歩、しましょうね。


超デカッ!コウヤノマンネングサ

2011-09-15 08:27:11 | コケをめぐる旅

▲手にあるのは草ではなく、コケの1種、コウヤノマンネングサ。8月・奈良にて


出会ってうれしかったコケ、
続いてコウヤノマンネングサ。


もう名前に「クサ」とついている時点で
草だと思われて当然なのだが、植物分類学上、コケである。

でもまぁおそらく本人は、草かコケかになんて微塵もこだわらない寛大な性格と、
拙著「コケはともだち」でも書かせてもらったが、
そもそも名前に草とつくのは、約200年前に和歌山県・高野山で
このコケが発見された当初は、植物学のなかでコケの概念がまだ明瞭ではなく、
地元では高野山の霊草として「高野の万年草」と呼ばれていたからだとか。


低山の半日陰の土の上に比較的よく見られるコケで、
いままでも何度もこのコケに出会ったことはあったのだが、
この奈良で出会ったコウヤノマンネングサは、
ただでさえでかいコケなのにさらに輪をかけたビッグサイズ!

ここまで大きいと、もう本当に草でいいんじゃないかと思えてくる。

普通のコウヤノマンネングサの高さが5~7㎝くらいだとすると、
10㎝以上はあったんじゃないだろうか。



▲リップスティック(約7センチ)を横に並べてみる。枯れ葉の下にまだ3~4㎝長さの茎があるのでそれも入れると、かなり背が高い。


ここまで大きく育ったのは、おそらく生えた環境にとても恵まれていたからだろう。

森の、大きな木がそこここに立ち並ぶ中で、ぽっかりと空いた土地に枯れ葉が積もり、
その間から上手に茎を伸ばして、顔を出すコウヤノマンネングサの群落。

広く場所を占有するその様子は、
もう何年もここに居ついていると見え、
いまさらほかの植物が入る隙間も与えないほど。

まさに彼らのパラダイスのようだった。






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このブログのトップにある<近々のお知らせ>にも書きましたが、
9/6発行の男性向け雑誌『DIME』(小学館)の最新号で、
『コケはともだち』と、コケガール代表として
(お恥ずかしながら)私を紹介してくださっています。

おそらく、まだ本屋さんに並んでいるはずです。
よかったら手にとってみてください。                                       


●『DIME』公式ページ。画面下のほうに該当記事のタイトルが書かれています
http://www.digital-dime.com/new/index.html

クジャクゴケたちの秋支度

2011-09-13 17:51:00 | コケをめぐる旅

▲クジャクゴケ。8月・奈良にて。


ここ数日は昼間は陽射しが強いものの、
朝晩はすっかり秋の風。


毎日のようにうちの網戸に
とまりにきたカナブン。

ぶぅーん、ぶぅーんと
羽音をたててやってくる。

あれがいつのまにか聞こえなくなり、
もう夏は終わったのだなぁと。

毎年思う。


いまはまたちがう虫たちがマンションの
敷地の隅にある草むらで鳴いている。

季節がもう変わったのだよというのは
いつも虫たちが教えてくれていたような気がする。



さて、夏は暑さと乾燥で休眠していたコケたちも
秋になって涼しくなればまた復活する。

さらに種類によっては、胞子を飛ばす時期を迎え、見頃となる。

また書きたいことがこれからどんどん増えてきそうなので、
こないだから続いている「出会えてうれしかったコケ」シリーズ、
今回からざざっとダイジェストでご紹介。



クジャクゴケは、一度その姿を見たら
忘れられないほど美しいコケの一つだ。

特徴はその名の通り、クジャクが羽を広げたように
うちわ状に枝葉を広げること。





いまは秋に向けて胞子を飛ばすために、柄を伸ばしているところ。
もう少しすれば次第に先端がぷくっと膨らんでくびれて、
胞子をたくさん蓄えた?|(サク)ができる。



観察会が行われた奈良のこの地方も、
先日の台風で大きな被害を受けたと聞く。

クジャクゴケをはじめ、
あのとき出会ったコケたちは
いまどうしているだろうか。

元気でいるといいのだが。



●おまけ


▲「見て見て、私たちだって秋支度中よ!」と言わんばかりに茂みの奥で
 若い?|をつけて勢いよく柄を伸ばすコスギゴケ(おそらく)。秋はいろんなコケが見頃なのです。

猪の首か麦粒か、イクビゴケ。

2011-09-11 14:42:42 | コケをめぐる旅

▲イクビゴケ。8月・奈良にて。


前回のつづき。

奈良大会の観察会1日目で出会ったイクビゴケ。

兵庫県で見たとき以来、おそらく2度目。
山道の側面の、あまり明るくない湿った土の上に生えていた。


イクビゴケは漢字では「猪首苔」と書く。
というのも?|(サク)が猪の首に似ているからだとか。



▲緑色の粒のようなものが、胞子を蓄えている?|(サク)。猪が首を上げているように見える!?


また手元の図鑑「しだ・こけ」(岩月善之助・伊沢正名著、山と渓谷社刊)の解説によると、
「西欧では〝麦粒をばらまいたような?|(サク)〟とも表現される」とのこと。


たしかに。

サクを包む部分の葉の先が
針のようにツンツンしていて
稲穂についてる毛を連想させる。

どちらかといえば西欧の表現のほうが、
私にはしっくりくるかなぁ。


ただ私の周りにはなぜか、
いままでお世話になった人生の緒先輩方に、
やたらめったら猪年が多くて。

このコケの名前を聞いただけで、あの方やこの方、
そういえばあの人だって猪年だったよなぁと
いろんな緒先輩方の顔が次から次へと思い浮かばれてしまい、
なんとなくこのコケの前では、頭が上がらない気がしてしまう。

森のこかげでホソベリミズゴケ。

2011-09-06 15:32:10 | コケをめぐる旅

▲ホソベリミズゴケ。8月、奈良の山中にて。


前々回のつづき。

出会えて嬉しかったコケ、
今日は「ホソベリミズゴケ」について。



日本蘚苔類学会 第40回奈良大会の
1日目は希望者のみのコケ観察会。

「カビゴケ」でもご紹介した
蜻蛉の滝が流れる山林周辺にて
たっぷり4時間のコケ観察である。


「ちょっと面白いコケがあるから、見に行きませんか?」

ふいにKさん(奈良大会の事務局長、コケの研究者)に誘われて、
私やTさんなど5人ばかりで後をついて行くことにする。


Kさんは、道ばたのコケにはほとんど目もくれず、どんどん山道を登っていく。
もう着くかな? もうちょっとかな?と思いつつ、
Kさんの後ろをついて行くが、いっこうに着く気配がない。

私たちは気になるコケを立ち止まって見つつ、
ときどき「このコケなんですか?」なんてKさんに質問をしつつ、
山道を30分以上は歩いただろうか。

それでもKさん、「まだ、もうちょっとあります」とか言いながら、
ひょうひょうとした表情で山道を登っていく。

さらに30分くらい歩いただろうか。

Kさんの気軽な誘いにのった自分を
少しばかり恨みかけていた、そのときだった、

「ここですよ!」

とKさんが緑のかたまりを指差したのだ。

見ると、それは、こかげで木漏れ日を浴びながら
キラキラと輝くホソベリミズゴケの群落だった。





しかも、コケの先っちょにご注目!
白っぽい柄の先に黒褐色の楕円のものがついている。

この音符のおたまじゃくしみたいなものが、
ホソベリミズゴケの(サク。胞子の入った袋のこと)なのだ。


ミズゴケの仲間は、もともとあまり頻繁にをつけない。
もしつけたとしても、短時間で胞子を飛ばし終わってしまうので、
ほとんどお目にかかれるチャンスがないというのが通説。

なので、これはとても貴重な出会いというわけ。



▲やっとの思いでホソベリミズゴケに出会え、地味に興奮している私たち。
 やや明るい場所だが、近くには川が流れていてほどよい湿気がある。


ここまで来る道のりの長さに息も絶え絶えになっていた私は、
自分はおろか、Kさんにまで逆恨みしかけていたが、
この群落をひと目見たらすぐに疲れも吹き飛び(←なんてゲンキンなんだ…)、
しばらく無心でひたすらコケを眺め続けた。

汗だくの私の目の前で「俗世のことは存じませんのヨ」とでも言わんばかりに、
涼しい顔でたたずむホソベリミズゴケは、なんとも神秘的なこと。


ミズゴケのは、はじけて胞子を飛ばすのだが、
その瞬間に「パチン」という音がすることが知られている。
しかし、さすがにその音までは聞くことができなかった。


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●9月3日「魅惑のコケ入門」、無事終了。

台風の影響で曇り時々雨のお天気でしたが、
おかげさまで、28人の参加者がありました。

私からは初心者がコケと仲良くなるためのポイントをお話し、
伊村先生からはコケのゆるやかな生き方哲学という、
とても面白い話を聞かせていただきました。

ルーペでのコケ観察もあり、
南極のコケボウズの紹介もあり、
あっという間の楽しい90分でした。




押し苔のたのしみ

2011-09-01 12:39:48 | 文系女子のコケ目線

▲「押し苔」をしたカビゴケ付きの葉を額縁に入れて。
 これを見ると、奈良でのコケの思い出がよみがえる(うっとり)。


最近、朝晩は涼しくなってきたというものの、
夏のコケはたいがい乾燥していて
あまり見頃でもないということもあり、
家にこもって「押し苔」にはまっている。

そう、押し花ならぬ、押し苔。


基本的なやり方は押し花と同じ。

というか、押し花の本は数々あるけれど押し苔の専門書はないので、
押し花を参考にせざるを得ないということなのだが、
いまのところ、同じ方法でほぼ問題ないように思う。


きっかけは、先月の日本蘚苔類学会の奈良大会に
行ったときに立ち寄った「森と水の源流館」で見つけた
押し花の本『押し花で描こう 野草たちの小径(こみち)』(佐藤桂子著/発行:マール社)。

同じく大会に参加したTさんが、「この本、なんか、めっちゃええんよ!」と
イチ押しされていたので、私も思わず買ってしまったのだった。


この本のよいところは、華美で大きな花に着目するのではなく、
雑草を中心として、押し花で〝道ばたの風景〟を再現しているところだ。

〝道ばたの風景〟には当然コケも重要な構成要員なわけで、
掲載の作品にはちょこちょこコケも登場している。

私はまだまだその高いレベルに到達するには
道のりが程遠いけど、とりあえず目に付いたコケを
ちょっとだけ頂いて押し苔にし、ハガキやしおり、
ブローチなどを作り始めている今日この頃である。



▲カビゴケ&葉はもともと平たいので、とくに苦労もなく作れる。
 葉を押して、和紙をバックに敷き、額縁に入れるだけで完成!


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☆最新情報☆ いよいよ今週末!9月3日(土)は『魅惑のコケ入門』

●詳細はこちら→ http://cul.7cn.co.jp/programs/program_564130.html

●簡易ルーペ、コケティッシュのお土産つき!

●現在、参加者20人ほどが集まっています。
 まだ少し余裕があります、スケジュールががまだ定まらなくて・・・
 という方も、前日・当日の申し込みも可能ですので、お気軽にどうぞ。

●会場は池袋の西武デパートの上です。駅から地上に出ずに行けるので、台風襲来でも大丈夫!

●お問い合わせ・お申し込みは「池袋コミュニティ・カレッジ」 ℡03-5949-5481 へ。   

観察用のコケの手配はすんだものの、
私のトークの準備が追いつくかちょっと心配・・・
今日・明日でがんばります!