かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

コスギゴケの白い帽子の秘密

2012-01-31 22:23:28 | 近所のコケ

はじめに書いときますが、
今日の記事は長文、
そしてなかなかマニアックですヨ。

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コケ探しをしたことがある人なら、
庭や公園などで一度はその姿を見かけたことが
あるだろうコスギゴケ。

また、コケに興味のない人でも、
理科の教科書でその名前だけは
聞いたことがあるかもしれない。

比較的多くの私たちになじみ深いこのコケは、
(胞子が入った袋)を包む帽子(専門用語では「帽」と言います)が、
白い毛で覆われていることが大きな特徴の一つ。

学名の「Pogonatum inflexum(ポゴナトゥム インフレクスム)」の
Pogonatum(ポゴナトゥム)が「たてがみ」を意味するのも、
この帽の白い毛から発想を得てのことのようだ。



▲こちらがご存じコスギゴケ。が温かそうな白い毛で包まれています(2011年10月 伊豆高原)


ちなみに信じがたいことにその昔、
この帽の白い毛は、毛生え薬になると考えられていたとか。

やはり薄毛は現代に限ったことでなく、
昔の人にも大きな悩みのタネの一つだったのか。

しかし〝ワラにもすがる〟どころか、
コケにまですがるほどだったとは・・・。

当時の薄毛に対する深刻ぶりがうかがえて、
なんだかせつない気持ちになる。



さて、話がそれてしまったが本題はここから。

私はこのコスギゴケの帽について、
前々から気になっていたことがある。

それはこの羊毛のように温かそうな毛が
どうやってから取れるのか、ということ。


そもそも帽というものは、(およびその中の胞子)を守るのが役割であり、
の中の胞子が外へ飛び立つ準備ができると、から取れる(外れる)ようになっている。

帽が取れた後は、蓋のついたがあらわになり、
そしてその蓋も取れると、いよいよ胞子が外へ飛び立つという段取りだ。


他のコケ(蘚類。帽は蘚類にしかないので)を見てみると、
帽がを覆うの面積はの上半分もしくはそれ以下が多い。

つまり、すっぽり被るというよりも浅く被っているような状態なので、
が熟した頃にもし風に吹かたり、雨に打たれたりすれば、
ごく自然に取れるというのは、なんとなく理解できる。



▲ナミガタタチゴケの帽は蓋に斜めにのった状態。




▲こちらはエゾスナゴケ。蓋だけをすっぽり包む。小人が被っていそうな帽。


コスギゴケの場合も、実は本来の帽の面積はさほど大きくなく、
他のコケ同様、蓋にちょこんとのっかる程度。

しかし、帽から多くの長い白い毛が伸びて、
全体をすっぽりと覆うようになっている。



▲コスギゴケの帽。写真中央のを見ると、まだ小さく膨らむ前からすでにしっかりと毛に覆われているのがわかる。


ご覧のとおり、茎の部分から
すっぽりと全体が毛に包まれた状態だと、
やはり風に吹かれたり雨に打たれただけで、
取れるとはなんとなく想像しにくい。


今までコスギゴケはいろんな場所で
よく見かけてきたとはいうものの、
じっくりと成長経過を観察したことはなかった。

そのためこの疑問は長年、私の中のプチミステリーだったわけである。


ところが先日、そんな長年の疑問が
解決するような場面に出くわした。

それは季節ごとに訪れている伊豆高原で、
いつものごとくコケ観察をしていたときのこと。

その時の様子がこちら。



▲とあるコスギゴケの群落。本をスケールにしてみるとおわかりの通り、群落としての大きさはさほど。



▲近寄って見てみると・・・写真中央のにご注目! 毛の一部が、裂け始めている!?



▲こちらはさらに裂け目が広がったたち(写真中央と中央右やや下の)。



▲こちらの皆さんも。どんどん毛が裂けてめくれあがってきています。




▲さらにめくれが進行すると・・・もう蓋部分にかろうじて引っかかっているような状態。



▲おぉ、ついにがあらわに! 



いままで私は、何らかの方法で白い帽が丸ごとスポッと
取れるのだとばかり思っていたのだけれど・・・。

今回の群落の様子を見るに、

①が小さい頃から全体を覆っている帽の毛は、
 が成長して膨らむと全体を覆いきれなくなり、

②一部からじわじわと裂け始め、

③最後はトップが蓋に引っかかっただけ

のような状態となる。

この状態なら雨風で
自然に外れるというのもなずける。


しかしまぁ、まだこれはほんの一例だけなので、
もしかしたら他にも帽の取れ方はあるのかもしれない。

今後も引き続きコスギゴケの白い帽子については、
いろんな場所で時間をかけてチェックするつもりだ。


◆今日のコケ絵日記 (今回のまとめとして絵に描いてみました。フリーハンドでたどたどしい筆致ですが・・・まぁ素人なのであしからず)




祝!キノベス28!

2012-01-24 22:27:05 | コケの本棚
先日、拙著『コケはともだち』でお世話になった
リトルモアの編集者Tさんより、嬉しい知らせがあった。

なんと拙著が「キノベス!」に入ったというのだ。

「キノベス!」とは、紀伊國屋書店が毎年1月に行っている企画で、
過去1年間に出版された新刊を対象に、書店全スタッフと選考委員で
〝お客様に全力でおススメしたい本ベスト30〟を投票で選び、公表するというもの。

「今年は選考委員長と10名の選考委員が、全社から集まった
 563の応募コメントを熟読し、ベスト30を決定しました」

とのことである。


選ばれる本はジャンルは問わず、
文芸からエッセー、写真集などさまざま。

そして拙著はその28位にランクイン!

http://booklog.kinokuniya.co.jp/kinobest2012/archives/2012/01/28.html


1年に出版される気が遠くなるような冊数の本の中から
たった30冊のうちの1冊に選んで頂けるなんて本当にありがたい。

ランクインした他の著者を拝見すると、
まぁなんともそうそうたる顔ぶれなので驚き、
ちょっと恐縮もしてしまうのだけど。

でも『コケとも』は決して私だけの力で書けたものではなく、
編集者Tさん、イラストレーター永井さん、デザイナー大原さん、
そして監修の秋山さんほか、ご協力いただいたコケ好きの皆様のおかげ、
いわばチームプレーで獲得したものであるから、
改めてみなさまに深謝し、大いに喜びたいと思っています。


なおこれを機に、新宿南店(東京)と札幌本店(北海道)では
取り急ぎフェアを組んでくださるそう。

そこで去年の発行当初にも行ったコケポップをリトルモアさんが作ってくださるということで、
生のコケを伊豆高原のお気に入りのコケスポットより早急に手配。

ちなみになぜ伊豆高原なのかといえば、そこに親の別荘があるからであり、
庭から、そしてコケ好きに優しいご近所の皆様からコケを分けてもらえるから。


そしてコケを送るついでに、フェアをしてくださるという新宿南店と札幌店の
書店員の皆様に感謝の意を表して、恋文ならぬ「苔文」も同封することにした。



▲アイロンをあてると糊がはりつくというフィルム付きのはがきに、押し苔を挿入。




▲アイロンをあてフィルムをはがきに接着させて、文字をしたためたら、ほらこの通り「苔文」が完成!


フェアをしてくださることはもとより、
札幌店にはそもそも『コケとも』を
推薦してくださった書店員さんもいるとのこと。

その方は、きっとコケ好きに違いない。喜んでくれるといいな。


またフェアが始まったら、ここでもお知らせしたいと思います。






コケ色レッグウォーマー

2012-01-17 18:30:48 | 文系女子のコケ目線

▲コケ色レッグウォーマー(右)&アームウォーマー(左)。そして外でのコケ観察に必需品ののルーペ(Vixen)とコンパクトデジカメ(リコーCX5)


この冬はレッグウォーマーにはまっている。

レッグウォーマーは数年くらい前から
若い女性たちを中心に流行っていたようだが、
私自身は首やお腹を温めることには執心しても、
すねおよびふくらはぎを毛糸で覆ったところで
正直、前者2つのそれほど効果を
感じるわけがあるまいと疑っていなかった。

ところがどっこい。

厚手の毛糸生地をよいこらしょと引っ張り上げて、
下肢をくるむと、たちまちじんわりとその部分が温かくなってくる。
さらにくるぶしまでしっかり覆うとなおのことポカポカ。

私の中ではなぜか昔から「下肢は体の中でもわりと丈夫なパーツの一つ」ととらえていて、
だから、わりと放任というか、ズボンで覆っていればそれでいい、
というくらいのケアしかしていなかったのだけれど。

こうして下肢をくるんだ途端、ポカポカするだけでなく、
「ちゃんと守られている」という安心感というか、
心まで温かくなってくるような気がする。

そうか、下肢もちゃんとケアしてほしかったのだな。
どうしてもっと早く取り入れなかったんだろう、レッグウォーマー。


そんなわけで。

ここ最近はほぼ毎日、
レッグウォーマーをつけています。

毎日つけていると1足じゃたりなくなるので、いまでは4足も。


そしてこないだWEB通販で見つけたのが、
このコケ色レッグウォーマー。

暗緑色、オリーブグリーン、白、グレー。

これらの色々が織り交ざったのを見ていると、
コンクリートやブロック塀、岩をすみかにしているコケやら、
コケと一緒にいる地衣類やらが自然と思い出されますよね! (←「いや。コケ好きだけです!」という声も聞こえてきそうだけど…)。


 
▲たとえばこういう子たちとか。。(2011年2月、湯河原にて)


このレッグウォーマーをつけると
寒空の下でもコケ探しに出かけてみようか
なんて気持ちになってくる。

思わずそろいのアームウォーマーも買ってしまった。



▲アームウォーマーは指切りタイプ。コケ観察にはこの方が指が使えて便利かも。さ、図鑑でも持って出かけますか。



●おまけ

帽子をかぶったかわい子ちゃん。

日当たりのよい岩場がお気に入り。

一見地味だが近づいて見ると
これがなんともかわいいのだ。



▲生育環境と、なんといってもこの葉の縮れっぷりからチヂレゴケの仲間だろう。
 しかも縮れてるだけでなく巻きがなはだしいところを見るとナガバチヂレゴケかも。



▲帽子がとれ、蓋もとれると、ぱかっと赤い歯が開く。

辰年の年賀状。

2012-01-12 17:56:07 | 文系女子のコケ目線


▲お仕事関係やコケ関係の皆様に送った今年の年賀状。私の大好きなコケの一つ、ヒノキゴケ。


今日はこの冬一番の寒さとか。

あ、遅くなりましたが、
新年明けましておめでとうございます。

コケ好きの皆様においては、
苔むしておめでとうございます(笑)

皆々様にとって辰年が実りある
心温かな年となりますように。


おかげさまで私のほうは
年末から崩していた体調も回復し、
心身ともに元気になりました。

今年もよろしくお願いします。

またマイペースですがブログも更新してきます。
気が向いたときにでものぞきにきてくだされば幸いです。



さて、年始に実家近くの神社で
毎年ひいているおみくじ。

今年の結果は、「半吉」。

でも書いてあることは
なかなかよかった。

『このみくじに当たる人は、年老いて若がえるがごとく、
 再び栄えにおうて頼もしき姿なり。神仏を祈りてよし』

さらに、

『職は刀剣、金物類、鏡類は何にてもよろしけれど、木か紙に縁あることもよろし』

とのこと。

よっしゃ、木と紙とくれば、植物好き(てかコケ好き)であり出版業界に身を置く私にはぴったり。
悔いなき1年となるように私なりにがんばりたいと思います。


なお、辰年の「辰(龍)」は十二支の中で
唯一の空想上の動物だということはよく聞くが、
龍は水にまつわる神様として各地の民話にも登場するのだとか。

ぜひとも龍の神さまのご加護を受けて、
今年も潤いたっぷりのコケたちと
たくさん出会えますように。なむなむ。



▲コケ友さんたちから届いた年賀状。皆それぞれに趣向を凝らしたコケお年賀です(右下のは地衣類だけど)。



ちなみにコケには、「フトリュウビゴケ(太龍尾苔)」という龍の名前の付いたコケがある。
もし昨年中に見つけられていたら、私の年賀状もヒノキゴケではなかったかも・・・。

なお、どんなコケかというとコケの研究者である
上野健さんの「コケの論理」というブログが参考になります。


●コケの論理(ロジック)
http://sphagnum.chesuto.jp/

写真はもちろん、文章もとてもステキなブログです。