かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

べたべたマルダイゴケの・・・?!

2016-02-24 10:00:36 | 文系女子のコケ目線
いやはやブログの更新をしないまま、今月もとっくに後半戦に突入。
じつは今月はじめから、

インフルエンザ
  ↓
ウイルス性胃腸炎
  ↓
治った数日後にウイルス性胃腸炎再発

と、流行り病にめった打ちにされて、
ブログの更新どころではなかったわけでありまして。
皆さまはご無事でお過ごしでしょうか。

さて、こちらに無造作に積まれた2冊の図鑑。




おや?なにか挟まっている?







あ!何かに誘われるようにハエが本の中に入りたがっている。なぜでしょう? 

ページをめくってみると・・・





マルダイゴケだ!
そうか、このコケの臭いに誘われていたのね。

さてさて、こちらはどうでしょう?





絵柄はやはりマルダイゴケ。








ページを開くと、やっぱりそこにはマルダイゴケ!
あぁ、伊沢正名さんの写真は何度見てもため息が出るほど美しい。

じつはこれ、コケ友のMさんより
「ちょっと遅くなったけどバレンタインにどうぞ」
と、いただいたギフト。

その名もずばり『べたべたマルダイゴケ付箋』という。





制作者はコケ研究者の片桐知之さん(マルダイゴケは蘚類だがご本人はもともと苔類がご専門)。
アイデアはもちろんのこと、この味わい深い絵も片桐さんが描かれたという。

マルダイゴケは、通称「糞ゴケ」と呼ばれ、
その名の通り動物の糞や死骸の上にのみ生えるという
コケの中でもとっても珍しい特徴を持つ高山性のコケ。
さらに胞子はハエによって運ばれるというのも大きな特徴だ。

残念ながら私はこのコケにまだ図鑑と標本でしかお目にかかったことがないのだが、
図鑑を見ているだけでもコケとは思えぬ色合いの妖艶な容姿の胞子体に、
すでに心中はマルダイゴケにたかるハエのごとし…。

一生のうちいつかは肉眼で胞子体付きの新鮮な群落を
拝んでみたいというのがひそかな夢である。


さて、そんなマルダイゴケでなぜ付箋なの?

その答えはパッケージの裏にあった!



▲付箋と一緒にマルダイゴケの解説がつけられている


その内容を要約するに、

コケの胞子は通常、風にのって遠くに運ばれるが、
マルダイゴケの胞子はハエが好む特有の臭いを発してハエを呼び寄せ、
そして自らを新しい糞(住居)に運んでもらうために、
ベタベタと、ハエの身体にくっつきやすいようにできている。


なるほど、「ベタベタ、くっつく」から付箋なのね! 
こりゃ1本取られましたっ。

後日、ブログに掲載許可をいただくべくMさんを通じて片桐さんに連絡を取ったところ、
氏いわく、

「コケの種類に関わる仕事をしていますので
 一種一種の個性が出るようなグッズを作ろうと思って制作しました」

とのこと。

いやー、とても真面目に答えていらっしゃいますけど、
コケを愛し、また楽しんでないと、こういう柔軟な発想はなかなか出てこないのではないだろうか。
片桐さんの遊び心に万歳!

なお、このマルダイゴケ付箋は現在、
服部植物研究所(宮崎県日南市)にて販売中とのこと。

服部植物研究所はもともとはコケ研究者のための施設だが、
何年か前から一般向けにも公開され、開館時間内なら誰でも無料で見学ができる。



コケにまつわる貴重な資料や、複数のコケグッズが販売されていることから、
自分の周りのコケ好きのあいだでは、服部植物研究所は「生きているうちに一度は訪れたい憧れの場所」。
最近、ブログも開設され、私なんぞはなかなか現地に行けないぶん、
時々そこをのぞかせてもらっては、コケや、コケを研究中の子供たちの姿に癒されている。



▲レトロな雰囲気の建物は建築マニアにもたまらないことうけあいだ



さてさて、話は戻るがMさんへのホワイトデーのお返し、なにがいいかな。
『べたべたマルダイゴケ付箋』のようなサプライズプレゼントはなかなかレベルが高いぞ。

時間はまだある。ここはじっくり考えよう。
チョコレートをもらった男子の気分が少しわかったような気がしたのでありました。