西部瓦版〜ウェスタナーズ・クロニクル〜其の伍拾参; シドニー・ポラック『大いなる勇者』(1971年、ワーナー)之巻。
ミニ・シリーズ“『レヴェナント』への道”第四弾です。
主人公は実在のマウンテン・マン、ジョン“レヴァー・イーティン”ジョンソンをモデルにしている。別々の著者の二つの小説をジョン・ミリアスとエドワード・アンハルトが脚本化。
1846年ワイオミング(たぶん)。軍服姿のジョンソンが街を後にする冒頭。ポラックによれば、俗世間を離れたところに安息などないというのが本作の教訓であるらしい。ニューシネマのひとつの帰結といえようか。
『レヴェナント』の重要なソースのひとつであるリチャード・C・サラフィアンの『荒野に生きる』と同年の作品で、雪景色をはじめとして共通点が多い。『レヴェナント』はいかにもこの時代ならではの映画の再現を目論んだものかもしれない。
ほとんどの場面がユタの標高4千メートル以上のロケ地で撮影される。
プロットはシンプルで基本的に主人公がさまざまな人物に出会うエピソードの連続。つまり本作は『田舎司祭の日記』のようなスピリチュアルな物語であるということか。
主人公はいやいや娶らされたクロウ族の酋長の娘と息子のように世話をしていた少年を殺され、復讐の鬼と化す。『レヴェナント』との類似点ということでいえば、台詞の少なさとか狼と格闘する逸話もそうだ。
春樹もだいすきなジャック・ロンドン「火を熾す」との共通点を指摘する声あり。木につもった雪が落下してきて火を消すというエピソードは「火を熾す」にもあるようだ。
当初はジョンソンが山中で凍死するというラストが想定されていたが、現行のしみじみしたラストに落ち着いた。序盤でジョンソンが凍死したハンターから譲り受ける名銃は本作の神話的な趣を強めている。
山で死ぬことはジョンソン本人の願いでもあったらしい。1900年に死が確認されたあと、ジョンソンはロスの古参兵墓地に葬られるが、1980年代にワイオミングに移葬される。その際のセレモニーにはレッドフォードも参列した。
グリズリー狩り専門のトラッパー役でウィル・ギア。主人公の心情がナレーションおよびティム・マッキンタイア(偉大なジョンの息子である)による歌で伝えられる。
「頭に気をつけろ」が山の人間たちの挨拶がわりの言葉。主人公の道連れとなる人物によれば、スキンヘッドにしているとポールの装飾に役立たないので先住民に頭の皮を剥がされないらしい。ほんとなら西部劇はハンク・ウォーデンみたいなスキンヘッドだらけのはずだから、これはジョークだろう。
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