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恩師とお別れしてきました

2010-07-02 23:40:14 | Weblog
6月30日に、生まれた直後からお世話になったかかりつけの小児科医とお別れしてきました。

当然記憶にはありませんが聞いたところによれば、私は生まれて10日目ごろ瀕死の状態になっていたらしく、公立病院では助からないと言われていたようです。祖父のつてを使い地域の有力者の紹介で、その開業したばかりのその小児科医を紹介されて、ダメもとで伺ったような話でした。親が聞いた先生からの説明では、「アレルギー体質に加えて感染症を合併し、危険な状態だった。新生児に抗生物質を使用することについて当時は異論があり、公立病院では適切な治療ができていなかった。ペニシリンを投与したら、泣かなかった赤ん坊が次の日から泣くくらい元気になって結果は良かった」というストーリーのようでした。

40年以上も開業医として地域の医療に従事していらした方でした。専門は皮膚科であり、内科全般をこなし、公立病院や大学病院に出向いて勉強を続けておられました。必要なら公立病院や大学病院に適切に紹介していました。私の母が水腎症になって手術になった際は都立病院を紹介され、入院中は時々勉強がてら病室に寄ってくれていました。

常に患者と共にあることの重さを、背中で教えてくれた恩人でした。町医者という言葉は差別用語になったらしいですが、まさに、町医者としての使命を果たされた方だったと感じています。私の印象は、病院としては暇な方で、いつも先生は机に向かって勉強していました。患者が来ると、椅子を回してこちらを向き、診察が終わるとまた机に向き直してしまう、そんな印象でありました。学術肌と言えば聞こえはいいでしょうが、商売上手な人ではなかったと思います。

思い出に何か欲しいとお願いし、先生が中学生時代に購入して共に戦争を乗り越え、医学部に行く勉強に付き添い、最後の日まで診察室のデスク上で使っていたという「英和辞典」を、形見としていただいてきました。70年くらい前の辞書ということになるでしょう。この医師に出逢って助けられなければ今の私は存在しません。したがって動物病院も家族も存在していないことになります。出逢いに、何か運命的なものを感じないわけにはいきません。

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