読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

日本を愛すればこそのメッセージ、「日本人の覚悟」(金美齢著/2007年)

2010-05-15 16:08:35 | 本;エッセイ・評論
中国人とどんなに仲良くなっても、彼らに台湾という「国」の話をすると、彼らは「中華民国」や「台湾」という「国」ではなく兄弟のいる「地方」だと言い、一方で蒋介石は中国本土から多くの財宝を持って逃げたずるい漢奸だと批判します。


第二次大戦前後に日本が深く関わった、南朝鮮(韓国)、台湾、タイ、シンガポールが、戦後にアジア圏の中でいち早く契税成長を果たしたのに対し、白人社会に牛耳られてしまった中国、北朝鮮、インド、フィリピンなどでは政体の影響が大きいものの、経済成長が遅れたことは事実として認められるでしょう。

日本沿岸のこうした国々が反日を内政のカードにしている一方で、台湾、タイ、シンガポールが親日でいてくれることは、それぞれの国に同じように対応していた日本の立場を、合理的に判断してもらえる証左となります。

さて、親日国である台湾と日本との間を良好に結びつける人の代表者が本書著者の金美齢ですね。本書の大半を占める、台湾の中国からの独立を謳う金さんの願いは、2008年5月20日、第12代中華民国総統に馬英九氏が当選したことでその願いが当面霧散したためか、2009年9月、日本への帰化申請をして日本へ帰化されました。

<馬英九>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%AC%E8%8B%B1%E4%B9%9D

2007年に刊行された「日本人の覚悟」は、当初、親日家の台湾人であった金さんの日本人への暑いメッセージでしたが、昨年台湾系日本人となった金そのものの信条となったわけですね。そんな金さんのメッセージであり信条は、本書の目次を見てもらえれば、おおよその見当がつくと思います。

<目次>
01)着実に進む台湾の「静かなる革命」
02)小林よしのり氏の『台湾論』旋風
03)世論が後押しした李登輝氏の訪日
04)支持率とは何だろう!?
05)公費の“適正支出”と“無駄遣い”
06)「育児と仕事の両立」という志
07)「精神の構造改革」こそが急務だ
08)スタンド・バイ・ユナイテッド・ステイツ
09)日本人に見る「覚悟の欠如」
10)「無孔不入 無悪不做」は、中国人の本質を衝いている
11)もはや後戻りできない台湾化の流れ
12)旧態依然の台湾認識からの役割
13)「米国は台湾の人々との約束を忘れない」
14)これでは「国際交流」がなく
15)五人で土下座した日本のエリート官僚
16)「死んでも非を認めない」のは中国人のお家芸
17)「無告の民」
18)「W杯」と「香港」と「一国両制」と
19)匹夫も志を奪うべからず
20)台湾と北朝鮮
21)李登輝さんが、日本に何か悪いことをしたのですか?
22)許せぬ李登輝氏への外務省の対応
23)「卑怯は恥ずかしくない」ことだと教えるべきだ
24)大国に阿らず、小国を侮らず
25)理不尽な事態には筋を通して戦え
26)中国の台湾合併という事態に至れば
27)SARSにおける中国の杜撰な対応
28)WHOの総会で台湾の加盟がまた否決される
29)日本のろう者とのコミュニケーション
30)奇を衒った教育論を排し、常識の復権を
31)「英国のために命を捧げた卒業生たち」
32)「正名運動」のデモ隊列の先頭に立つ
33)曽野綾子さんと呵呵大笑した話
34)「愛国心」についてひと言
35)日本は、「唇亡びて歯寒し」にならないように
36)森前首相の訪台で思ったこと
37)中国を周章狼狽させた「住民投票」
38)遣り場のない憤りを一票に託した台湾総統選挙
39)台湾総統選異聞
40)全世界が寄ってたかって陳総統に猿ぐつわ
41)因果は巡り、国民党の終わりの始まりか
42)ちらつく中国の抜き難い家父長意識
43)「異教徒より異端者が憎い」
44)中国の反日は、こじつけ都合主義
45)台湾は今日の日本を反面教師に
46)若者に人生を誤まらせる無責任な物言い
47)台湾立法院選挙の結果を見れば
48)改めて知る李登輝さんの偉大さ
49)許せぬ朝日記者の傲慢独善の振舞い
50)台湾人の心が一つに結ばれた
51)「民衆の破壊行為を無理に止めるな」
52)中国の理不尽な内政干渉に断固NOを貫け!
53)一部の「中国派反日主義者」を嫌悪する多数の台湾人
54)国民党主席の座は針の蓆か
55)仕事ができてセクシーな小泉さんの大勝利
56)全ての改革はこの一年にかかっている。
57)「上有政策、下有対策」の中国社会
58)外国人受け入れ問題は慎重にも慎重に
59)日本は道義的にも台湾を支持すべし
60)「台湾主体意識」の再確認
61)皇室は世界で最も古い家系で日本の宝
62)負けっぷりの良さもじつは国家の品格
63)リーダーたる者は冷静沈着に横綱相撲を
64)校長次第で学校は良くも悪くもなる
65)法を守ることが最善の危機管理
66)限りなく美しい輝きを残して沈み、陽はまた昇る
67)「働かざる者食うべからず」の心構えで
68)正統派首相誕生に期待する
69)『美しい国』へ
70)テレビ司会者に鼻面を引きずり廻されている国会議員
71)台湾人よ、目覚めよ
72)どう読み解く台湾と中国の新幹線物語
73)日本で「故宮展」開催実現を
74)民間の地道な活動が日台の距離を縮める


ここでは、上記の中から、次の項から引用しておきます。

34)「愛国心」についてひと言
~・・・肉親愛が、日常の喜怒哀楽を共にする家族・家庭全体への愛情へと拡がるのはきわめて自然である。やがてそれは、自分たちの毎日の命の営みを支える生活環境・地域社会への親しみへと容易に拡大していく。

自分が生まれ育った村や町が理屈抜きで好ましく感じられ、故郷の山や川は何ら特別の、訳もなく懐かしい存在となっていく。初めて字を覚えた学校、一緒に遊んだ幼馴染み、踊り興じたお祭りの日の賑わい、優しかった市場のおばさん、そしてあの初恋の・・・。一つ一つの思い出が、やがて年を経るにしたがって、「郷土愛」とも言うべき一つの素朴な、しかし揺るぎなき感情に包摂されていくのだ。

そしてある日、人々の生活を脅かす非常の事態に際会したとき、永年静かに堆積されてきた郷土愛が熱く燃える愛国心へと昇華するのは少しも不思議ではない。愛するものを護りたいとする人間の本能的感情の発露である。「愛国心」とはそれ以上でもそれ以下でもない。不当に貶められてはならないし、法外に誇張されるべきではない。


日本では、「愛国心」は永年不当に貶められて口だが、「私には愛国心などない」と胸を張って言う人がときどきいる。カッコいいつもりのポーズならともかく、本気で言っているのなら、そういう人とはあまり付き合いたいとは思わない。「愛情本能」を司る脳組織のどこかに欠陥があると思われるからである。

以前の話だが、土曜日朝の日テレの番組「ウィーク・アップ」で、何らかの議論の遣り取りの際、出演者の一人が福島瑞穂氏に「あなたケッコウ愛国者じゃないですか」と茶々を入れたところ、彼女はあわてて手を振って「そんなことはない」と強く否定した。

本来なら福島氏は、「もちろんよ。あなたいまごろ気が付いたの?」と応じるべきだったのではあるまいか。もし社民党が体制に反対するあまり、自国や同胞への愛情まで否定するのであれば、それは古諺(こげん)のいう「産湯と一緒に赤子も流す」の譬えと同じ愚行である。~



<金美齢ホームページ>
http://www.geocities.jp/kinbirei/

<金美齢 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E7%BE%8E%E9%BD%A2


<備忘録>
支持率は客観的な成績表(P31)、無孔不入、無悪不做。軽土深堀(P54、55)、死不認錯、詭計多端(P77)、移花接木(P78)、信口開河(P79)、水野賢一(P95)、福島瑞穂と菅直人(P151)、関門打狗(P161)、中国が日本を嫌う理由(P187)、上有政策、下有対策(P249)、台湾に生まれた悲哀(P257)ゼロトレランス(P268)、台湾の世論(291)


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