製作、監督、脚本:リュック・ベッソン
音楽:アンニャ・ガルバレク
撮影:ティエリー・アルボガスト
出演:ジャメル・ドゥブーズ、リー・ラスムッセン、ジルベール・メルキ、セルジュ・リアブキン
「アレクサンドル三世橋からセーヌ河の見下ろす男アンドレ(ジャメル・ドゥブース)は、身投げをして何もかも終わりにしようとしていた。そこへ透けるような白い肌と神々しく輝く金色の髪、さらには滑らかな曲線を描く肢体を持つ謎の美女アンジェラ(リー・ラスムッセン)が現れ、彼よりも先に河へ飛び込んでしまうが……」。(シネマトゥデイ)
「eiga.com」で映画伝道師(writer/editor/movie buff)の佐藤睦雄さんが本作について、次のように述べています。
「セーヌ川にかかる金ピカ(『最後の戦い』同様、モノクロ映画だが)のアレクサンドル3世橋から身を投げた主人公の上に、美女が落下してくる!およそありえないシチュエーションだが、“ボーイ・ミーツ・ガール”の重要なプロットに、『フィフス・エレメント』と同じ“落下”をもってくるとはリュック・ベッソン監督らしい」。
「アンジェラ(angel-a)という女の名前がミソで、彼女がダメ男の運命を好転させていく、というおとぎ話だ。演じたリー・ラスムッセンはモデル系の長身でブロンドの美女。ミラ・ジョボビッチと同じ線を行くベッソン好みの女性である点が笑える。ロメール監督作品「『獅子座』の主人公を彷彿させる不幸なダメ男を『アメリ』の八百屋役ジャメル・ドゥブーズが演じている」。
「彼の右手はポケットに入ったままで、例えばエッフェル塔の上などで、それを逆手にとって笑いを取るぐらいの話術がほしかった。全体に台詞が過剰で冗漫。コントとしては楽しめるが映画的快楽がまったくないのが惜しい。また、『ニキータ』や『レオン』のように肝心の女性キャラに対してあまり感情移入できないのだ。“天使”のような女である以上、もっと“奇跡”を見たかったか。ベッソンらしい夢想の女には描かれているけれど」。
と、多少シニカルなコメントですが、私はこの映画全面的に好きです。この映画は、新たな堕天使像を描いた作品だと私は思います。堕天使についてウィキペディアでは次のように解説しています。
堕天使(だてんし)とは、「もともとは旧約聖書、偽典にある天使の身でありながら高慢、嫉妬、自由意志などの理由でヤハウェ・エロヒム(日本語訳 主なる神)に反逆し結果、天界を追放、つまり堕天された者のことを指す」。
「堕天使は悪魔と同一視されることが多いが、厳密に言えば意味は違ってくる。堕天使は前述したように天使の身でありながら、ヤハウェに反逆し天界を追放された存在という直接的な意味を持っており、一方の悪魔はヤハウェに反逆したもの、人を悪の道へ導く者、地獄に存在する者というヤハウェへのアンチテーゼ自体を示したような意味を持つ」。
堕天使には三つの形態があるようです。
<高慢によるもの>
「天界において神の直下の座にいた天使ルシファーは他の天使を統べる大天使長であった。強大な権威と力をもつ彼に『自分は神をも凌ぐ力を持っているのではないか』という驕りが出てしまった。そのため、味方となる天使を集め神に対して反旗を翻した。が、結果はルシファーの敗北に終わり彼とその仲間は堕天されてしまう」。
<嫉妬によるもの>
「神は人間に天使以上の愛情を注いだ。当然の如く、それに反発したのは神から最も信頼を得ているとされる大天使ルシファーだった。天使は炎から生み出され人間は土塊から創造される。人間は天使ほどの権威も無ければ力も無いのだ。ルシファーは明らかに自分達より下位な存在であるのに神から寵愛を受けている人間に怒りを覚えた」。
「そして神により強い愛情を抱いていた彼はその怒りを嫉妬心に変えた。また、彼の嫉妬心は神への怒りにも変えた。そのため、同志である他の天使と共に神に挑んだが、結局は敗北し堕天されてしまう。その後、地上へ堕ちたルシファーは寵愛の対象となっていた人間に挑戦するようになった。(『創世記』天地創造によればエロヒムは森羅万象すべての物を創造したが、その中には人間もあり、「われわれのかたちに、われわれをかたどって」人間が作られた。)」
上記の二つはよくキリスト教を題材とした作品に使われることが多い。
<自由な意思によるもの>
「神はもともと天使を自分自身を尊重させるために創造したとされるが、彼らの中にその指針に反する自由な意志を持つものがいたという。実はそれも神自身が考案したもので、反する天使たちには自発的に自分を崇めさせるという試みがあった。なぜなら、神は無の心中から自分自身への愛情を芽生えさせることに真価を見出したからである」。
「だが、自由な意思を持つ天使たちに自分から従おうとする服従心など無かった。結果として、彼らは天界から追放され地上まで堕ちた天使は人間に、またさらに深く堕ちた天使は悪魔になった。 ちなみに、この説によれば人間は天使になれるとされ、悪魔は天使に戻れるとされている」。
・・・と、この三つの堕天使はいずれも最終的には悪魔であるわけですが、リュック・ベッソン監督が描いた「堕天使」は、神から見放され地上に宿題を持たされて派遣されます。彼女の宿題はアンドレに、彼の本来の自分自身の姿を気づかせること、その手伝いをすることです。決して悪魔ではありません。「天使」の定義をどうするかにもよりますが、ラストシーンが印象的です。
リュック・ベッソン監督については、10/28付けの記事「『暗殺者~アサシン』にまつわる二つの外国映画と邦画」で取り上げていますのでここでは割愛します。
ジャメル・ドゥブーズ(Jamel Debbouze,1975年6月18日-)は、「フランス・パリ出身の俳優・プロデューサー・コメディアン。モロッコ系。フランスではテレビ番組"H"や"Jamel Comedy Club"などで知られている。子供の時に事故で右腕を失っているため、いつもポケットに手を入れている」。
「アンジェラ」を演じたリー・ラスムッセンは、初めて知った女優さんですが、なかなの才女のようです。
リー・ラスムッセン(Rie Rasmussen,1976年2月14日-)は、「デンマーク・コペンハーゲン出身の女優・モデル。15歳の時にスカウトされてモデル界入り。ヴィクトリアズ・シークレットやグッチなどのショーで活躍。2002年に『ファム・ファタール』で女優デビューしているが、将来的には映画監督を志望しており、映画学校に通い、これまで2本の短編映画を製作している」。
本作で重要なメルクマールとなるのが、パリの名所のひとつ、アレクサンドル3世橋です。
アレクサンドル3世橋(仏 Pont Alexandre III)は、「フランス、パリのセーヌ川に架かる橋である。この橋はフランス共和国の大統領サディ・カルノーとロシア皇帝アレクサンドル3世の間に結ばれた友好の証として、ニコライ2世により1900年のパリ万国博覧会にあわせて建設、パリ市に寄贈された」。
「橋はアンヴァリッド広場とグラン・パレ、プティ・パレの間を結ぶように建設された。建設はエンジニアのJean Résal、Amédée d'Alby、建築家のCassien-Bernard、Gaston Cousinに任された。橋は鋼鉄製、幅40m、長さ107mで3つの関節を持つ単一アーチ橋で、中央に橋脚を建てることなくセーヌ川を一跨ぎしている。両端には石造りのトンネルがある」。
「アレクサンドル3世橋の礎石は1896年にニコライ2世によって設置され、1900年のパリ万博に際して落成した。橋の右岸、下流側には『1900年4月14日、フランス共和国大統領エミール・ルーベがパリ万博を開会し、アレクサンドル3世橋を除幕した』と記された記念碑がある」。(ウィキペディア)
音楽:アンニャ・ガルバレク
撮影:ティエリー・アルボガスト
出演:ジャメル・ドゥブーズ、リー・ラスムッセン、ジルベール・メルキ、セルジュ・リアブキン
「アレクサンドル三世橋からセーヌ河の見下ろす男アンドレ(ジャメル・ドゥブース)は、身投げをして何もかも終わりにしようとしていた。そこへ透けるような白い肌と神々しく輝く金色の髪、さらには滑らかな曲線を描く肢体を持つ謎の美女アンジェラ(リー・ラスムッセン)が現れ、彼よりも先に河へ飛び込んでしまうが……」。(シネマトゥデイ)
「eiga.com」で映画伝道師(writer/editor/movie buff)の佐藤睦雄さんが本作について、次のように述べています。
「セーヌ川にかかる金ピカ(『最後の戦い』同様、モノクロ映画だが)のアレクサンドル3世橋から身を投げた主人公の上に、美女が落下してくる!およそありえないシチュエーションだが、“ボーイ・ミーツ・ガール”の重要なプロットに、『フィフス・エレメント』と同じ“落下”をもってくるとはリュック・ベッソン監督らしい」。
「アンジェラ(angel-a)という女の名前がミソで、彼女がダメ男の運命を好転させていく、というおとぎ話だ。演じたリー・ラスムッセンはモデル系の長身でブロンドの美女。ミラ・ジョボビッチと同じ線を行くベッソン好みの女性である点が笑える。ロメール監督作品「『獅子座』の主人公を彷彿させる不幸なダメ男を『アメリ』の八百屋役ジャメル・ドゥブーズが演じている」。
「彼の右手はポケットに入ったままで、例えばエッフェル塔の上などで、それを逆手にとって笑いを取るぐらいの話術がほしかった。全体に台詞が過剰で冗漫。コントとしては楽しめるが映画的快楽がまったくないのが惜しい。また、『ニキータ』や『レオン』のように肝心の女性キャラに対してあまり感情移入できないのだ。“天使”のような女である以上、もっと“奇跡”を見たかったか。ベッソンらしい夢想の女には描かれているけれど」。
と、多少シニカルなコメントですが、私はこの映画全面的に好きです。この映画は、新たな堕天使像を描いた作品だと私は思います。堕天使についてウィキペディアでは次のように解説しています。
堕天使(だてんし)とは、「もともとは旧約聖書、偽典にある天使の身でありながら高慢、嫉妬、自由意志などの理由でヤハウェ・エロヒム(日本語訳 主なる神)に反逆し結果、天界を追放、つまり堕天された者のことを指す」。
「堕天使は悪魔と同一視されることが多いが、厳密に言えば意味は違ってくる。堕天使は前述したように天使の身でありながら、ヤハウェに反逆し天界を追放された存在という直接的な意味を持っており、一方の悪魔はヤハウェに反逆したもの、人を悪の道へ導く者、地獄に存在する者というヤハウェへのアンチテーゼ自体を示したような意味を持つ」。
堕天使には三つの形態があるようです。
<高慢によるもの>
「天界において神の直下の座にいた天使ルシファーは他の天使を統べる大天使長であった。強大な権威と力をもつ彼に『自分は神をも凌ぐ力を持っているのではないか』という驕りが出てしまった。そのため、味方となる天使を集め神に対して反旗を翻した。が、結果はルシファーの敗北に終わり彼とその仲間は堕天されてしまう」。
<嫉妬によるもの>
「神は人間に天使以上の愛情を注いだ。当然の如く、それに反発したのは神から最も信頼を得ているとされる大天使ルシファーだった。天使は炎から生み出され人間は土塊から創造される。人間は天使ほどの権威も無ければ力も無いのだ。ルシファーは明らかに自分達より下位な存在であるのに神から寵愛を受けている人間に怒りを覚えた」。
「そして神により強い愛情を抱いていた彼はその怒りを嫉妬心に変えた。また、彼の嫉妬心は神への怒りにも変えた。そのため、同志である他の天使と共に神に挑んだが、結局は敗北し堕天されてしまう。その後、地上へ堕ちたルシファーは寵愛の対象となっていた人間に挑戦するようになった。(『創世記』天地創造によればエロヒムは森羅万象すべての物を創造したが、その中には人間もあり、「われわれのかたちに、われわれをかたどって」人間が作られた。)」
上記の二つはよくキリスト教を題材とした作品に使われることが多い。
<自由な意思によるもの>
「神はもともと天使を自分自身を尊重させるために創造したとされるが、彼らの中にその指針に反する自由な意志を持つものがいたという。実はそれも神自身が考案したもので、反する天使たちには自発的に自分を崇めさせるという試みがあった。なぜなら、神は無の心中から自分自身への愛情を芽生えさせることに真価を見出したからである」。
「だが、自由な意思を持つ天使たちに自分から従おうとする服従心など無かった。結果として、彼らは天界から追放され地上まで堕ちた天使は人間に、またさらに深く堕ちた天使は悪魔になった。 ちなみに、この説によれば人間は天使になれるとされ、悪魔は天使に戻れるとされている」。
・・・と、この三つの堕天使はいずれも最終的には悪魔であるわけですが、リュック・ベッソン監督が描いた「堕天使」は、神から見放され地上に宿題を持たされて派遣されます。彼女の宿題はアンドレに、彼の本来の自分自身の姿を気づかせること、その手伝いをすることです。決して悪魔ではありません。「天使」の定義をどうするかにもよりますが、ラストシーンが印象的です。
リュック・ベッソン監督については、10/28付けの記事「『暗殺者~アサシン』にまつわる二つの外国映画と邦画」で取り上げていますのでここでは割愛します。
ジャメル・ドゥブーズ(Jamel Debbouze,1975年6月18日-)は、「フランス・パリ出身の俳優・プロデューサー・コメディアン。モロッコ系。フランスではテレビ番組"H"や"Jamel Comedy Club"などで知られている。子供の時に事故で右腕を失っているため、いつもポケットに手を入れている」。
「アンジェラ」を演じたリー・ラスムッセンは、初めて知った女優さんですが、なかなの才女のようです。
リー・ラスムッセン(Rie Rasmussen,1976年2月14日-)は、「デンマーク・コペンハーゲン出身の女優・モデル。15歳の時にスカウトされてモデル界入り。ヴィクトリアズ・シークレットやグッチなどのショーで活躍。2002年に『ファム・ファタール』で女優デビューしているが、将来的には映画監督を志望しており、映画学校に通い、これまで2本の短編映画を製作している」。
本作で重要なメルクマールとなるのが、パリの名所のひとつ、アレクサンドル3世橋です。
アレクサンドル3世橋(仏 Pont Alexandre III)は、「フランス、パリのセーヌ川に架かる橋である。この橋はフランス共和国の大統領サディ・カルノーとロシア皇帝アレクサンドル3世の間に結ばれた友好の証として、ニコライ2世により1900年のパリ万国博覧会にあわせて建設、パリ市に寄贈された」。
「橋はアンヴァリッド広場とグラン・パレ、プティ・パレの間を結ぶように建設された。建設はエンジニアのJean Résal、Amédée d'Alby、建築家のCassien-Bernard、Gaston Cousinに任された。橋は鋼鉄製、幅40m、長さ107mで3つの関節を持つ単一アーチ橋で、中央に橋脚を建てることなくセーヌ川を一跨ぎしている。両端には石造りのトンネルがある」。
「アレクサンドル3世橋の礎石は1896年にニコライ2世によって設置され、1900年のパリ万博に際して落成した。橋の右岸、下流側には『1900年4月14日、フランス共和国大統領エミール・ルーベがパリ万博を開会し、アレクサンドル3世橋を除幕した』と記された記念碑がある」。(ウィキペディア)
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