作雨作晴


日々の記憶..... 哲学研究者、赤尾秀一の日記。

 

§281b〔君主の世襲制の根拠〕

2018年09月08日 | 国家論

 

§281b〔君主の世襲制の根拠〕

Geburts- und Erbrecht machen den Grund der Legitimität als Grund nicht eines bloß positiven Rechts, sondern zugleich in der Idee aus. - Daß durch die festbestimmte Thronfolge, d. i. die natürliche Sukzession, bei der Erledigung des Throns den Faktionen vorgebeugt ist, ist eine Seite, die mit Recht für die Erblichkeit desselben längst geltend gemacht worden ist.

出生と相続は、単なる実定法の根拠としてのみではなく、同時に理念のうちにある根拠として(世襲の)正当性を構成する。
⎯  確定した王位継承を、すなわち自然な継承を通して、王座の就任をめぐる派閥の抗争は予防されるということは、それはずいぶん前から世襲そのものに対して正当に主張されていた一面である。

Diese Seite ist jedoch nur Folge, und zum Grunde gemacht zieht sie die Majestät in die Sphäre des Räsonnements herunter und gibt ihr, deren Charakter diese grundlose Unmittelbarkeit und dies letzte Insichsein ist, nicht die ihr immanente Idee des Staates, sondern etwas außer ihr, einen von ihr verschiedenen Gedanken, etwa das Wohl des Staates oder Volkes zu ihrer Begründung.

この一面はしかしながらただ帰結に過ぎない。それが根拠としてうけとられると君主の尊厳を(小理屈の)推論の領域に引き摺り下ろしてしまうことになる。この前提のない直接性と、そして究極の内在性という(君主の尊厳の)性格が、国家の内在的な理念ではなくて、尊厳の外にある何かに、尊厳とは異なった思想の一つに、国家もしくは国民の福祉とかいったものに、君主の尊厳の根拠が与えられることになる。

 Aus solcher Bestimmung kann wohl die Erblichkeit durch medios  terminos gefolgert werden; sie läßt aber auch andere medios terminos und damit andere Konsequenzen zu, - und es ist nur zu bekannt, welche Konsequenzen aus diesem Wohl des Volkes (salut du peuple) gezogen worden sind.
 
確かにこのような判定から、媒辞を通して(理由づけられて)、世襲が導き出されるかもしれない。;しかし、それはまた、他の媒辞をも、そして、そのために別の結果をも許すことになる。 - そして、民衆のこの福祉 (salut du peuple) という理由づけから、どんな結果がもたらされたかはあまりにもよく知られている。
 
 
 
 
ここでヘーゲルは、君主の世襲制の根拠は何か?君主の地位が世襲される理由は何なのか、を問題にしている。多くの場合、君主の地位の世襲が、君主の地位の交替に際しての、君主の地位をめぐる党派間や派閥間の抗争をめぐる混乱や軋轢の生まれるのを予防することができるといったことを理由とするものである。たしかに、君主の地位を巡って権力闘争に火がつけられて、その結果として悲惨な現実がもたらされたことは、我が国の壬申の乱にその例をみるように歴史的にも明らかである。
 

しかし、そのような有限な理由づけは、君主の地位の尊厳の根拠を、他にも、たとえば「国民の福祉」のためといったことに理由を求めることを許すことになる。それは世襲される君主の地位の尊厳の根拠の一面に過ぎないし、そうした有限な根拠は、君主の世襲についての正当な根拠にはならないという。実際にも、たとえば「民衆の福祉」 (salut du peuple)という大義をもって行われたフランス革命が、その結末に血を血で洗う権力抗争をもたらした歴史的な現実をヘーゲルは目撃している。

 

§281b〔君主の世襲制の根拠〕

 

 

 

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