20180127
今年は寒い日が多く、東北の雪国ほどではないけれども、雪の日がありました。久しぶりに、西行のことを思い出して『山家集』を繙きました。もちろん西行も雪を詠んでいます。
山家集の524番から543番まで。
524
雪中ノ鷹狩
かきくらす 雪に雉子(キギス)は 見えねども
羽音に鈴を くはへてぞやる
あたり一面の視界を閉ざすように激しく降る雪。獲物のキジの姿は見えない。じっと耳を澄ませていると、キジの飛び立つ羽音が聞こえた。鷹匠はその方角に向けて、一気に、タカをその足に結いつけられた鈴の音とともに、飛び立たせる。
山深く激しく降る雪、静寂の中にひたすらキジの飛び立つ羽音に耳を澄ませる。その一瞬を捉えたタカは、足に結いつけられた鈴の音を激しく鳴らしながら、ひたすら獲物を狙って羽ばたいて行く。
激しく降る雪に閉ざされた奥山の中で、キジの飛び立つ羽音と、タカの足に結いつけられた鈴の音が、一瞬、雪の谷間に響きあう。静と動、白と黒、キジの羽音とタカの羽ばたきと鈴の音。
奥深い雪山の自然の中に溶け込むように点在する人間と鳥の、激しくも美しい動きの一瞬をとらえた和歌。
525
ふる雪に 鳥立※も見えず うづもれて
とりどころなき み狩野の原
降る雪のために、鳥たちの集まる草むらや沢地も、すっかり埋もれて
どこにあるのかさえ、見えない。獲物の鳥も見当たらないみ狩野の原は、取り(鳥)つく島もないような。
※鳥立(とだち)⎯⎯鷹狩りの折に鳥が集まるように作られた草むらや沢地。鳥の飛び立つことをもいう。(新潮社版解説より)