無線室

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防護無線が‥‥

2010-05-27 20:35:56 | 鉄道無線
 防護無線は、危険を認めた乗務員がほかの列車にその危険を知らせるためのものです。防護無線を受信した列車は、ただちに非常停止させなければいけません。
 この防護無線、到達距離はおおむね1kmを想定しています。ところが、それを大きく上回るような「事件」が起こってしまいました。
電車無線、10キロ先に届いて非常停止 電離層で反射か

 27日午前8時半ごろ、大阪府高槻市のJR京都線摂津富田駅近くを走行中の西明石発京都行きの普通電車(7両編成)の運転士が、踏切内に男性が立ち入っているのを発見。同線を走る他の列車を緊急停止させる電波「防護無線」を発信したところ、約10キロ離れた同府枚方市内の学研都市線を走っていた複数の電車も受信し、非常停止した。男性にけがはなかった。京都線は3分後に運転を再開したが、学研都市線で尼崎発京田辺行きの普通電車が津田―藤阪間(ともに枚方市)に約20分間停車、計5本が運休するなど約1万人に影響が出た。

 JR西日本によると、同じ路線を走る列車が使う防護無線は通常、半径1キロ程度しか届かない。今回のトラブルの原因については、夏の大気中にできる「スポラディックE層」と呼ばれる特殊な電離層が電波を反射し、通常より遠くまで飛ばしたのではないかとみている。

 JR西は「広い地域の電車が止まりお客様に迷惑をかけたが、安全性には問題がない」としている。
 以上は朝日新聞のものです。本来は1km程度しか飛ばない防護無線が、10kmほど離れた無関係の路線にまで及んでしまいました。

 ただ、気になるのはその原因。JR西日本は異常伝搬、すなわち「Eスポ」と略されるスポラディックE層を原因としているのです。
 確かに、この時期はEスポが発生しやすいシーズンではあります。ただ、Eスポは1000km先の電波を反射させるものであって、10km先の電波は反射しません。

 したがって、可能性として高いのは地形的なものと考えられます。防護無線を発報もしくは受信した列車が、周囲に障害物がなく見晴らしのいい場所にいたのかもしれません。
 事実、1986年には当時の国鉄常磐緩行線綾瀬駅付近を走行していた列車から防護無線が発報、10線区23本の列車が止まってしまいました。車掌が誤って防護無線機に触れてしまったために発報されたものでしたが、問題は列車のいた場所。列車が当時の営団千代田線をまたぐ高架付近にいたこともあり、想定以上に電波が飛んでしまい他線区にまで影響してしまったのです。
 本日の一件は、朝日新聞以外にも産経新聞読売新聞のサイトにも掲載されています。ただし、地形的な可能性に言及しているのは読売新聞だけです。
 周辺に大きな障害物がない場合にも防護無線が遠方に届くといい、神戸方面を走る東海道線の列車が作動させた防護無線が大阪湾を飛び越え、無関係な大阪府南部を走る阪和線の列車に伝わるケースもあるという。
 読売新聞は、異なるアマチュア無線局1万局との交信でもらえるアワード「よみうり1万局賞」の発行元。Eスポ以外の可能性を掲載したのは、そのせいかもしれません。

 いずれにせよ、電波伝搬の不思議を垣間見ることができた事件ですね。

【5/28 4:43追記】
 その後、朝日新聞のサイトでは2段落目が以下のように訂正されました。
 JR西日本によると、同じ路線を走る列車が使う防護無線は通常、半径1キロ程度しか届かない。今回のトラブルの原因については、大気中にできる電離層が電波を反射し、通常より遠くまで飛ばしたのではないかとみている。
 「Eスポ」の記述がなくなっています。どこからか「こんな短距離の伝搬はEスポではありえない」とクレームが入ったのでしょうか?

2 コメント

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Unknown (南栗橋車両管理区荒川支所)
2010-05-30 00:53:52
こんばんわ

関西でもあったのですか

常磐線の防護無線発報が
京葉線まで届いた事件
覚えています

葛飾・江戸川は基本的に
超高層建築が無いですから
その当時、電波が抜けちゃったんですね
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UHF (AR8200)
2010-05-30 01:25:21
南栗橋車両管理区荒川支所さん、こんにちは。

「UHFは飛ばない」といわれますが、実際には反射などの思わぬ伝搬が結構あるんですよね。
アマチュア無線は遠くへ飛ばす工夫をしますが、プロの世界では必要なところだけに飛んでいけばいいという考えです。
逆に、関係ないところには極力電波を飛ばさないようにしています。

防護無線は、その辺のバランスが難しいようですね。
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