無線室

無線通信、特に受信に関する考察、実験、感想などを‥‥。

誘導無線の受信機選び

2008-07-11 13:08:05 | 鉄道無線
 誘導無線は、長波帯の電波を使用する電磁誘導の原理を利用した無線です。ごく限られた範囲での通信に適しており、鉄道のほか炭坑や、国際会議場の同時通訳などでも使用されています。
 電波法上では無線局ではなく、「高周波利用施設」の扱い。そのため、無線局免許状や従事者免許が必要ありません。「通信線」と呼ばれる電線を敷設する手間はありますが、微弱電波により必要最小限のエリアで通話することができます。
 そのため、通信線からわずか数m離れただけで、受信が困難になってしまいます。このことから、なかなか手軽に受信できないのが実情です。

 誘導無線の受信には、さらに大きな壁に立ちはだかります。それは、周波数が低すぎて誘導無線を使用する周波数を対応している受信機が少ないのです。
 誘導無線は、100~275kHzを使用します。ところが、この範囲をカバーできていない受信機が意外と多いのです。
 間もなく発売されるIC-RX7をはじめ、アイコムのIC-R20IC-R5といったハンディ機は下限が150kHzになっています。これでは、誘導無線の中でも比較的ファンが多いとされる京急の列車無線(基地局:130kHz)が受信できません。
 また、VX-7VX-3などのスタンダードの広帯域受信機能付きアマチュア無線機でも、下限は500kHz。発売が予定されているVX-8でもこうなってしまえば、「無線鉄ちゃん」からは「使えない」と烙印が押されてしまいます。

 一方で、同じスタンダードでも、VR-500VR-150といった広帯域受信機では、下限が100kHzで誘導無線すべてをカバーできます。廃盤となったAX400シリーズも誘導無線OKです。
 このほか、エーオーアールのAR8200シリーズや「名機」AR8000、アルインコのDJ-X8/X7/X3なども下限は100kHz。誘導無線をフルカバーします。

 しかしながら、下限が100kHzでもアイコムのIC-R1やアルインコのDJ-X1などの旧機種では、下限に近づくにつれて内部発信で受信が不可能になってしまうのです。実は、カタログスペック上の下限はIC-R1が2MHz、DJ-X1の下限は500kHz。つまり、これ以下の周波数の受信性能は保証されないのです。
 確かに、カタログでも「表示周波数」として下限が100kHzと表記されていますが、表示はするけど受信できなくても仕方がないということを意味します。もし中古の機種を手に入れるときには、この辺にも注意しましょう。

 さて、次はアンテナです。受信機に付属するアンテナでは、微弱な誘導無線の電波を安定して受信することはできません。
 最近の受信機でこそ、中波専用のアンテナを内蔵させてAM放送をクリアに受信できるようになっていますが、それはあくまで大出力の放送を聞くためのもの。やはり、専用アンテナを用意しておくべきでしょう。

 一番手っ取り早いのは、中波用のバーアンテナを流用する方法。コイルの電線を受信機のアンテナに巻き付けたり、アンテナコネクターに差し込んだりします。
 次に、ハンディ機専用のアンテナを使う方法。「DJ-X8を使ってみて」でもご紹介したティーアール無線研究会のIRアンテナを使えば、受信が難しい車内でも安定して受信ができるのです。
 ただ、気をつけなけばいけないのは、IRアンテナはBNC接栓であること。最近のハンディ機の主流であるSMA接栓には、変換コネクターで接続する必要があります。ちなみに、SMA接栓のIRアンテナはコネクターの大きさなどが関係して、技術的に困難だそうです。

 誘導無線は、「究極の鉄道無線」と呼ばれるほど受信のハードルが高いといわれています。それでも、果敢にチャレンジしてその「究極」を味わってみましょう。