無線室

無線通信、特に受信に関する考察、実験、感想などを‥‥。

朝日新聞も交信を誤訳

2014-03-17 12:18:24 | 航空無線
 前回お伝えした読売新聞の誤訳ですが、朝日新聞でも3月17日付で同じような誤訳で記事を掲載していました。
操縦士自ら通信装置切る? マレーシア機、着陸の可能性

 8日未明に消息を絶ったマレーシア航空機の通信装置の一部が、管制とパイロットとの最後の交信よりも前に切られていたことが16日わかった。交信でパイロットは異変が起きたことを管制に伝えておらず、マレーシア政府は、通信装置を故意に切った人物がパイロット本人だった可能性もあるとみて調べている。

16日記者会見した同国のヒシャムディン国防相兼運輸相代理によると、この通信装置は飛行中の機体の状態を航空会社に伝えるもので、管制がパイロットと最後に交信するより前の午前1時7分に切られていた。

 無線による交信では、空域がマレーシアからベトナムへと変わることを管制が伝えたところ、パイロットからは「了解。お休み」との返答があった。この際、機器に異常が起きたという話はなかったという。
  (後略)
 会員登録すれば以降の記事も読めますが、登録していないとここで記事が終了します。

 やはり、朝日新聞内部でも原文の「Alright, good night」を直訳してしまいました。この記事そのものは配信会社からの提供ではありませんが、配信会社で「お休み」と訳してしまっているのかもしれません。
 誤訳のおかげで、読者の受け止め方が変わってしまう可能性もあります。そうなってしまうと、真相を知りたい読者に間違った情報を与えかねません。適切な翻訳に努めてほしいものです。

読売新聞が交信を誤訳

2014-03-13 11:09:59 | 航空無線
 3月8日に、クアラルンプールから飛び立ったマレーシア航空370便北京行きが行方不明になりました。今日で6日目を迎えますが、いまだに発見に至る手がかりすらつかめていません。

 そんな中、読売新聞は中国のニュースサイトを引用する形で、3月12日にこのような記事を掲載しました。
了解、おやすみ…不明機パイロット最後の交信

 中国紙「新京報」(電子版)などによると、マレーシア民間航空局の当局者は12日、消息を絶ったマレーシア航空機の中国人乗客の家族らと北京で対面し、同機と地上管制との最後の交信内容を公開した。

 同機が消息を絶つ直前、ベトナムの管制域に入る際、マレーシアの管制が「間もなくホーチミンの管制域に移る」と伝えたところ、パイロットが「了解。おやすみ」と応じたのが、最後の交信だったという。
 この記事だけを鵜呑みにすると、パイロットが操縦中に寝ようとしていたのが消息を絶った原因と受け取られかねません。管制を引き継ぐときに交わされる「good night」という挨拶を誤訳しているのです。
 読売新聞が名前を挙げた新京報では確認できませんでしたが、人民網(人民日報電子版)に英語の交信が掲載されていました。
 それによると、読売新聞の「了解。おやすみ」としていた部分は「Alright, good night」とされ、中国語で「好的,晚安」と訳されています。「晚安」は日本語で「おやすみなさい」という意味になるので、読売新聞はそのまま訳してしまったのでしょう。

 エアバンドリスナーなら、交信を終えるときに使う昼間の「good day」と夜間の「good night」は非常にポピュラーな挨拶なのはご存知かと思います。あえて訳すなら、さしずめ「さようなら」程度の意味しかないでしょう。
 それなのに、「おやすみ」とさもパイロットが就寝するかと思われそうな交信をしていたと誤解されかねない翻訳は問題です。記事を編集する段階で、「おやすみ」は不自然ではないかという内部の論議は起こらなかったのでしょうか。

 忽然と姿を消してしまったマレーシア航空370便。今後の動静が気がかりですね。