警視庁は1月14日、1995年の地下鉄サリン事件発生直後の警察無線を報道機関向けに公開しました。報道機関が事件発生20年を前に警視庁へ問い合わせたところ、警視庁で保管されていたテープが発見され公開されたものです。
73分30秒のテープのうち、テレビのニュースでは要点だけが伝えられました。せっかくなので、そのすべてを聞いてみたいと警視庁公式サイトを訪れてみましたが、残念ながら公開されていません。検索したところ、
読売新聞で公開されていたのです。
ファイルは
その1、
その2、
その3と3分割されています。3つのファイルを合計すると72分16秒となり、警視庁が公開したほぼすべてであるといえるでしょう。ただし、オペレーターや通報者などの名前はピー音でカットされています。
当初は「八丁堀駅で病人がいる」との通報で通常の対応をしていたところ、同様の通報が日比谷線の各駅で多数入電。通話統制を実施し、情報収集に当たります。
その後、現場から築地駅前で多数の負傷者が救護中との一報。さらに各駅でも多数の負傷者が出ているとの情報も入り、被害が次第に大きくなっていくのです。
乗客の証言から不審物の存在が明らかになり、行方を捜索していた矢先、「霞ヶ関駅で不審物を確保」との報告が。ところが、不審物は千代田線車内から回収したもので、負傷者が相次いでいる日比谷線からではないということで混乱も来します。
最終的には日比谷線、千代田線、丸ノ内線でサリンがまかれたことが判明。しかし、そこまでの確認ができていない状態でテープが終了します。
警察無線は、最初に「方面系」や「県内系」とも呼ばれる本部とパトカーの通信系である基幹系が、のちに警察署と警察官の通信系である署活系がデジタル化されました。警視庁は、ほかの県警と比べて最後までアナログの基幹系が運用され、1988年に完全デジタル化。昭和とともにアナログ基幹系が終了したのです。
受信を趣味とする人の中でも、もはや警察無線を聞いたことがない人が多数を占めているといっても過言ではありません。現在では、せいぜい警察密着番組で断片的に聞こえてくる警察無線を楽しむのが関の山です。
警察無線の通話が、通報から対応までの一連の流れとしてはっきりと聞き取れる状態で公開されるのは、今回が初めてではないでしょうか? 今ではデジタル化されて聞くことができなくなった警察無線が、こうしてよみがえるのはある意味感銘を覚えます。
これらの通話記録は、ベテランには懐かしく、若い人には新鮮に映るでしょう。歴史的事件での警察の初動がわかる、貴重な資料といえそうです。