人形もちのひとは
部屋を
行き過ぎる時
クマのひーちゃんと
目が合う
◇
おお
ゴメンゴメン
と
頭を撫でてやる
◇
それでまた
すぐ離れる
◇
◇
子供
数
沢山持ち
の人は
一人目から
抱き上げて
頬ずりしてやる
◇
しかし
真ん中辺の兄弟の
何番目かの子を
うっかりして
そのまま
また明日に
してしまったりする
◇
◇
年老いた
おばあさん持ちの人は
おいお茶飲んでけや
と声を掛ける
おばあちゃんに
バタンと
ドアを閉めたりする
（私がそうでした）
◇
◇
もっと年老いた
お祖父ちゃん持ちの人は
じいちゃんが
火事を出して
皆がひっしに消して
大騒ぎになった時
「いま消そうと思ったのニィ」
とお祖父ちゃんが
言った
それが
唯一おじいちゃんの
声を聞いた
記憶だったりする
◇
まあ
あまりに幼児だったもので
（職場の先輩玉居さんの思い出）
◇
◇
そして
変わらず
平静な目の
妻のいる人は
ネクタイを
渡し
上着などを渡し
それで
平静に一日が
過ぎて行ったり
する
◇
◇
アッと思って
階段を上がり直して
クマのひーちゃんの
ところへ戻ると
ひーちゃんは
まだ
見ていて
嬉しそうに
笑った
◇
ごめんな
ひーちゃん
沢山
沢山
なでる
◇
キャッきゃ
言っている
喜んでいる
今
やめる訳には
いかない
何年分？
１９７２-２０１６＝？
変な計算式だが
４４年だ
◇
耳すり減っちゃうね
ひーちゃん
◇
◇
お茶のんでけや
のおばあちゃんは
もういない
ずっと前に
◇
じいちゃんと
頬ずりして貰えなかった子と
妻は
もともと
いない
◇
◇
おばあちゃんとは
生前、約束をした
◇
しんだら
「夢の中で」出てきて
必ず夢の中で
出てきて
実際に出て来られたら
怖いから
◇
それで
しんだらどうなるか
どう言う世界か
教えてくれ
と
◇
分かった
と約束して
◇
◇
それで
おばあちゃん
約束通り
夢に出て
ちゃんと
話を聞いた
その前に
手を合わせて
ハイタッチして
私と
大喜びで
『出て来られて
よかったない（方言）』
『あい～』
と会話
満面の笑み
この世では
一回しか見た事のない
おばあちゃんの満面の笑み
◇
その一回とは
あるとき
風呂上りに
美人だ
いい顔だ
と褒めて褒めて
写真を３６枚
撮ってやった
その時
◇
◇
嬉しそうだったなあ
それ以来の顔だった
◇
話をちゃんと
聞いたはずの
あの世界の事は
全部忘れました
◇
惜しい
惜しかったね
◇
でも
いい笑顔だった
◇
◇
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