Mは動く
手足をばたつかせ
にぎりこぶしを 作ったり 開いたり
足の指を起用に動かす
あっちを向いたり こっちを向いたり
目をキョロキョロ回す
口の表情は大人よりよっぽど豊かで
数えきれないバリエーション
Mの力はものすごい
かじられると痛みを感じる
頭の向きを変えようとするときの
抵抗する力には毎度驚く
おむつを取ったときに
せいせいと伸びをして
ピーンと張った足の
筋肉の動きも
大人には大きな驚き
Mの顔は
小さな巨人の百面相
笑顔もいろいろ
べそもいろいろ
イライラの顔も
レムの表情も
いろいろ
特にあの目つき
大平さんになったり
座頭市になったり
こまわり君になったり
でもそれがとても可愛くて
「食べたいくらいだな」
というパパの気持ちよくわかる
Mのおならは大人以上
いろいろな音の組み合わせ
長さも
においもにぎやか
げっぷも あくびも
くしゃみも ためいきも
みんな大人顔負け
Mは息をしている
生きている
一日に何回もおっぱいを飲んで
そのおっぱいが栄養になり
成長し
いらないものはうんちやおしっこになって
あの小さな体から排出される
夜昼関係なく良く眠って
おなかがすいた時
おしりがぬれて気持ち悪い時
眠い時
ちゃんと泣いてわたしに知らせる
それが満たされればとてもおだやかな
やすらいだ
いい顔をして
やがて寝てしまう
Mという一個の人間を
人格を
命を
わたしが生んだということは今だに
信じられないような不思議な感覚だけど
そんなことにはおかまいなしに
Mは日増しに大きく育っていく
おっぱいやりながら見下ろす頭の大きさ
げっぷのために抱いた時に感じる
背中やおしり
もみじより小さい手も大きくなって
爪の面積も広がる一方
病院でまだ名前の無かったMとは
全然違う
あんな小さな体の中にも
ちゃんと心臓があって
Mのにぎりこぶしぐらいの
小さな可愛いい新品の
心臓があって
それが毎日毎瞬
動き続けている
Mを育てる
誰にも微笑みかける
やさしい心の持ち主に
ひとりで歩いてゆける
しっかりした人格に
いつかわたしの手のひらから
飛び立ってゆくその日まで
のびのびとおおらかに
そしてしたたかに
育って、M!
80,8,24 M一ヶ月と25日 母19才と4ヶ月