オールドローズ~ダマスクローズ Damask Rose
このバラが現在言われているところのダマスクローズ Rosa damascena versicolor (Rosa damascena variegata)です。
上にあるRosa phoeniciaとRosa gallicaを交配して作ったバラです。
現在のダマスクローズは後年になって作られたバラです。それでは元のダマスクローズはどんな姿をしていたかというと、
Rosa rubiginosa da New Kreüterbuch di Leonhart Fuchs, pubblicato nel 1543
レオンハルト・フックス(Leonhart Fuchs または Leonhard Fuchs、1501年1月17日 – 1566年5月10日、ドイツの医師、植物学者)が1542年に『植物誌』の中で書き表したものです。
白と赤い花が描かれていますが、このバラの花は1500年頃に昨出された花です。Rosa eglanteria であり、「スイートブライヤー」とも呼ばれ、若葉にりんごのような爽やかな香りがありますが、ダマスクローズとは大きく異なります。スイートブライヤーはピンクの花をつけ、この絵のように赤と白の花をつけることはありません。バラの花は栽培方法と気候の変化により、花の色が年毎に大きく変わることはありますが、八重の花が一重になることはないでしょう。
ダマスクローズは香りがよく、一つの枝に白と赤の花を付けるという言い伝えがこのような絵を作ったのでしょう。
この絵をフックスが引用したのには訳があります。それは1350年代に大いに富裕層をはじめ貴族の間でもてはやされたTacuinum Sanitatis「健康全書」の中で盛んにダマスクローズが描かれたからです。その内のいくつかをご紹介しておきましょう。
これら二つの薔薇の絵(Roxe)はいずれもローマで作られたものです。それまではどのような形をしていたかというと、単なる「健康を維持するための書物」だったのです。( 絵の下に文字が 2-3 行 ありますが、そこには上から順に、Nature:バラの花の性質、Optimum:薔薇の花を取るべき最適条件、Usefulness : 適応症,Danger : 忌避用件、Neutralization : 中和条件、Effect : 効果が端的に書かれています。)当初はこのような説明だけだったのですが、この頃発達してきた細密画の技法が採用されて細かな絵がここにが入るようになります。この書物を持っていることが社会的ステイタスを意味するようになり、一気にヨーロッパ中に広まります。パリでも、ウイーンでも、ローマでも、ルーアンでも、ヴェニスでもそれぞれの地域の選りすぐりの技法で、同じ図柄のサニタティスが描かれています。そして後年、フックスのような植物書が現れたのです。
現在オールドローズといわれる中に1600年以前にオランダで作出された、一季咲きで豊かな香り(ダマスクの香り)がするロサ ケンティフォリア Rosa centifoliaがあります。別名キャベッジローズ、プロバンスローズ、ハンドレッド・ペタルド・ローズ ( Cabbage Rose, Hundred-Petalled Rose, Provence Rose ) などといわれています。ダマスクローズと呼ぶ人もいますが、このバラも又、Rosa damascene を親にもつ交雑種であろうと言われています。花はダマスクローズを思わせるものであり、その姿もそれに近いのですが。
絵を入れておきます。https://www.botanikfoto.com/en/details/image-photo-cabbage-rose-rosa-centifolia-fantin-latour-426205.phpから引用しました。
ダマスクローズのお話はこれまでにして、今年は先のブログでお話ししたローズペタルジャムとグルカンドを作ることに気をとられてしまいました。来年は、来年の5月の終わりには(5月のこの季節だけに花を付ける一期咲の花なので)両方の性質を持った、ダマスクローズの香りとローズペタルジャムのきれいな赤のジャムを作ろうと思っています。さてなんて名前をつけたものだろう。今からゆっくりと製法と名前を考えることにしましょう。
そのときには再びこのブログでご紹介しますね。
http://www.livinginseason.com/tag/damask-rose/に「薔薇のレシピ」がいくつか載っています。参考になさってください。
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