DVDを入手したので見てみましたー。(夫の人がちょうどポイントが溜まってるし誕生月でギフトもあるからそれで買ってあげようというので~)
これです↓
http://www.amazon.co.jp/レオ・ドリーブ「コッペリア」全2幕-DVD-キーロフ・バレエ/dp/B000FPX12O/ref=sr_1_16?ie=UTF8&s=dvd&qid=1257689056&sr=8-16
キーロフバレエの全二幕モノ。他にもいろんな振りや編み方があるのだろうけど、これもすっごい面白かったーー。セットも衣装も勿論ダンサーも素晴らしくて~。
下敷きになったというホフマンの「砂男」はもっとおどろおどろしい怪しさが漂っていそうですが、バレエは全般にコミカル。
妖術師&人形師のコッペリウスの館にスワニルダ達が忍び込む場面が特に面白い。館の中は暗く不気味で、人形の足や腕など部品が転がっていたりあちこちに自動人形が置かれていて、スワニルダ達はびっくり。
そこで人形達が踊るスペインの踊りや中国の踊りがあったり、おっと、スコットランドのキルトを着た人形の踊りもあります。こんなところにプログラムのつながりがw短刀二本両手に持って踊っているからこれは兵士なんだな。。。
それにしてもキルトは可愛い。。。チェックは今年流行もしてるしv
いろんな民族の踊りを披露する感じはチャイコの「くるみ割り人形」を思い出したりして。多彩な民族衣装での踊りは見る人を楽しませてくれる。ぎくしゃくとした人形らしい動きを表現するダンサーの強靭な身体には感服。
第一幕でも人形に恋するフランツ達と自動人形コッペリアの踊りもあったけど、これがもうコッペリアの動きがいかにも人形らしくて良い~。一流のダンサーってホントに凄い。
今回プログラムでやるマズルカは村娘達と青年達の踊りで明るく楽しそう。舞台がそもそもポーランドの農村ということでお祝いの集まりの中で踊られる。
チャールダーシュはフランツの友人4人の青年が(まあこれが皆さんイケメンでして)かっこよく切れよく踊る。バレエ版ではカラヤンの組曲で聴いたような重さでは始まらない(笑)
ワルツは何度も出てくるけどやはり華やかで軽やか~。
スワニルダはいわゆるおきゃんな性格で明るく強気で村娘達のリーダー的存在。フランツがコッペリアに一時気持ちを移したことでスワニルダだけでなく村娘全体から冷たくされる踊りなんかもあって、世の女性集団って古今東西こういう質ってあるよなあ、とちょっと感心してしまった。
(一人の女の子がクラスの男の子に浮気されたりフられたりしたら皆でその男子をシカトしたりってなんかあるじゃないですか、それですよ、それ。)
物語はコッペリアが人形であることを知って反省してスワニルダに気持ちを戻したフランツが許しを乞うた上で祝祭の場面で二人が仲直りし結婚を認められて大団円。
人形に恋するといえば、ギリシア神話のピュグマリオンの話が真っ先に浮かぶが、現代のある種の男子のフィギュアや三次元のキャラへの傾倒を引くまでもなくこれまた古今東西ある話なのだなー。ピュグマリオンの話は一般にもピュグマリオンコンプレックスの名で知られる話だけども、現実の女性に失望した男が自らが彫った彫像・ガラテアに恋し、それを哀れに思ったアフロディテが彫像に命を与えてピュグマリオンはそれを妻と迎えた…。
コッペリウスも村の中で変人扱いされ、世を拗ね自らの作る人形に命を与えたいと思っていた妖術師…。
機械仕掛けの人形に心を奪われる話といえば、中国の皇帝がナイチンゲールを愛でていたところに機械仕掛けのナイチンゲールを贈られて・・というのがアンデルセンの童話にあって、それを元にチャイコが「眠りの森の美女」の中でバレエに組み入れていると思う。
本物に対してのフェイクがあって、主人公達はいったんフェイクに心を奪われるが再度本物への愛を知る、という図式・・・・
愛の試練としては作りやすいパターンなのかもしれないなあ。
これって、例えば「白鳥の湖」でも「白鳥」に対しての「黒鳥」でもあるわけだ。
本物に対しての偽物、オリジナルに対してのコピー、生者に対しての死者、正に対しての悪、などなどビジュアルにある程度分かりやすくバレエやオペラには取り入れやすかったのだろう~。
キリスト教圏では聖に対しての邪、あるいは魔という図式もある。(白鳥に対しての黒鳥はその典型だけども)このコッペリアでも人形というのはある意味、実は魔の領域のものなのかもしれない。生きている美少女とみまごうまでによくできた人形。コッペリウスはその魔術によって生きている人間・フランツから魂を取って彼女に入れてみたいとさえ思っていたのだから。
そのたくらみを嫉妬と好奇心で忍び込んだスワニルダがコッペリアが人形にすぎないことを知ってフランツを助ける。そして一時心を移したフランツを赦す。
白鳥でも黒鳥に心を移したジーフリート王子を白鳥は赦す。
魔によってたぶらかされた男を赦すのが本物の愛という図式でもあるのだなー、とちょっと思った。不気味さをそぎ取ったコミカルなバレエなので、本来コッペリアに含まれていたであろう邪さ、魔力的な部分はあまり分からないけども。
生きているスワニルダが忍び込んだ館で急に戻ってきたコッペリウスに対して人形・コッペリアの振りをして踊るという反転も起きていて、いっそう面白い図式になっている。ドリーブはバレエ史で読むと、当時キレイな踊り子がふわふわ踊るだけに低迷していたフランスでロマンティックバレエとして芸術的要素を高めた人なわけだけど、確かにこの演目は今見ても面白い~と思った。昔、同じドリーブで「泉」の全幕版を聴いたことがあるが(バレエ見ないで音楽だけ聴いたせいもあるけど)こっちは退屈だったな;この人の「シルヴィア組曲」を昔やったことあるけどこれは凄く良かったー。(バレエはこれは見てないし筋も把握してないけどw)
こうしてバレエもたまに見ると面白いっ!