新・本と映像の森 250 芳賀繁『失敗のメカニズム ー 忘れ物から巨大事故まで ー』角川ソフィア文庫、2003年
211ページ、定価本体629円、原書2000年1月・日本出版サービス
ヒューマンエラー(人間が原因で起きる誤り)への関心が高まっている。その理由は4つあると著者は言う。
① 製造の品質管理の向上や半導体技術によって機械が故障しにくくなった。
② 1人の人間がコントロールするエネルギーの量が昔に比べて大きくなった
③ 大惨事の教訓
④ ヒューマンエラーへの誤解や無理解
やはり、この本で価値があるのは現実に起きたいろいろな事故やトラブルやミスである。
たとえばショッピングセンター屋上駐車場で28才の女性が2人の娘と車で買い物に来た。駐車場で止めようとしたオートマ車がバックで急発進、ちょうど後ろにいた子ども2人が死んでしまった(p16)。
あるいは1994年4月26日に名古屋空港で起きた中華航空エアバスA600-600Rの着陸失敗事故。
これは着陸体勢に入っているのに「ゴー・アラウンド(着陸やりなおし)モード」に入ってしまい、それが訂正できなくて着陸に失敗、271人中264人が死亡する大事故となった(p21~26)。
あるいは列車事故。1962年5月3日、午後9時30分に起きた東京・三河島駅事故。あるいは医学における手術ミス。家庭内事故。
あるいはアニメ「巨人の星」で主人公・星飛雄馬が重いローラーでグラウンドをならしているシーン。歌が「おもい こんだーら」と歌うと当時の青少年のなかには、あのローラーのことを「重いコンダーラ」と錯覚する子もいた。もちろん正解は「思いこんだーら」である(p62)。
このように失敗の具体例がたくさん上げられていて、この本は極めて有意義だと思います。ボクにも、すごくためになりました。
第1章 事故とヒューマンエラー
第2章 見間違い、聞き違い、勘違い
第3章 ドジ型とボケ型
第4章 注意と記憶の傷害
第5章 エラーを誘う設計と防止するデザイン
第6章 違反と不安全行動
第7章 人は考えずに行動する
第8章 安全の文化